あなた自身は、ミスなく仕事が進められるタイプですか? それとも、ミスをしやすいほうですか? あなたの周囲はどうでしょうか? 仕事では、ミスが多いか少ないかでその人に対する評価が変わってきます。仕事にミスが無い人は、自然と周囲からの尊敬も集めているもの。逆にミスが多いと悪いイメージがつきまとってしまい、一緒に仕事をしたくないと思われてしまうこともあります。
ミスなく仕事を遂行する能力は、一部の人にしか許されない天賦の才ではありません。ちょっとしたコツをつかめば、ミスを減らすことができるのですよ。仕事のミスがなくならないという方や、部下のミスが減らずに困っているという方。そんな方々に読んでいただきたい、ミスを回避するためのコツをご紹介します。
環境次第でミスは回避できる
もしミスが起きてしまったら、まず最初に確認してほしいことがあります。それは周りの環境です。
安全工学という学問をご存知でしょうか。工業、医療、社会生活上の事故や災害の軽減を目的とする研究を行う学問です。安全工学では、人間の資質を高めることでミスを減らすのではなく、システムや環境作りに工夫を施すことでミスを「回避する」ことが目標とされています。
ここで「回避する」と言っているのは何故かと言うと、人間はミスを100%避けることはできないから。安全工学では、慣れや慢心、疲労によって起こるミス(=ヒューマンエラー)を0にすることは難しい、と結論づけられているのです。大阪大学人間科学部教授の臼井伸之介氏は、その例として次のような実験を挙げています。
例えば人はどのくらい長く注意を集中できるのかを調べた「クロックテスト」という実験があります。2時間、時計のような実験装置を見つめ、針が2秒分ジャンプするのを見つけると手元のスイッチを押す、というものです。30分くらい経つと見落としが急に増えます。これを注意の“30分効果”と言います。この理由は疲れではなく、同じことをしていると飽きてくる「心理的飽和状態」に陥るからです。
(Yumenavi|うっかりミスはなぜ起こる? )
ミスが減らないと思ったら、すぐさま能力を疑うのではなく、まずは環境を見直すことから始めてみてください。休憩は十分にとれていますか? 同じ作業ばかりを延々続けているのではありませんか? 時折第三者のチェックが入るなど、適度にプレッシャーのかかる環境にいますか? パフォーマンスは、環境次第で変わり得るということを知っておきましょう。
仕事への集中力に緩急をつける
ミスを回避できる環境が整ったら、仕事に目を向けましょう。ミスをなくす手順として、まずは致命的なミスをなくすところから始めましょう。そのコツのひとつが、仕事に緩急をつけるということ。カヤック代表取締役CEOの柳澤大輔氏は、仕事のミスをなくす方法について次のように語っています。
仕事をする上で緩急をつけることです。 ミスが絶対にあってはいけないシーンと、多少あってもいいシーンをみきわめて自分の集中に強弱をつけるということなのです。 (中略) そもそも、集中力を長時間持続させることができる人は少ないはずです。であればどこが勝負どころなのか。全体像をふまえた上で集中すべきところを見極めるのです。 仕事ができる人は、その見極めができています。だからこそ、多少性格が緻密じゃなくても、処理能力が極端に高くなくても抑えるところは抑えるので、ミスが少ない印象をもたれます。
(日経ビジネスONLINE|仕事のミスをビックリするほど無くす方法を考えた)
自分の不得意な場面や、ミスが後々の工程に影響を与える場面、ミスになかなか気づきにくい場面。こうした局面では、意識的に作業スピードを落とし、集中力をもって、丁寧に仕事を進めてみてください。逆に、ミスが起きてもすぐに挽回しやすい場面であれば、そこまで神経質になる必要はないかもしれません。
ミスをしないように集中力を維持しなければ、と気を張ったままでいると、かえってミスを招いてしまう可能性があるのです。先ほど例に挙げたクロックテストからもわかる通り、人間の集中力は長続きしないのですから。
自分の仕事を客観視する
ミスをなくすには、第三者にチェックしてもらうのが効果的ですよね。思ってもみなかった視点からアドバイスをくれたり、見落としていた点を指摘してくれたりするオブザーバーの存在は、大変貴重です。しかし、いつもオブザーバーがいてくれるとは限りません。第三者の目が届かない状況で仕事をすることもあるでしょう。
オブザーバーがいない時に持っておきたいのが、自分を客観視する姿勢です。つまり、自分で自分のオブザーバーを務めてしまうということ。そのために、検査やチェックとも呼ばれる「見直し」という作業に対する意識を変えてみてください。
例えば、ある仕事に工程が3つあると仮定し、次のような手順で仕事を進めているとしましょう。
工程1(作業&見直し)→工程2(作業&見直し)→工程3(作業&見直し)→完了
この手順だと、見直しが流れ作業のうちの1つになってしまい、チェックに見落としが生じてしまう可能性があります。そこで、以下のような手順に変えてみます。
作業(工程1、2、3の順)→見直し(工程1、2、3の順)→完了
この手順にすると、作業をする自分と、見直しをする自分を切り替えることができるため、オブザーバーのような視点を手に入れることができ、チェック機能がうまく働きやすくなるのです。
*** ほんの少しの心がけで、ミスを避けたり減らしたりすることができるのです。これほど嬉しいことは無いですよね。ミスが減らないからといって落ち込むのはやめて、仕事の仕方を変えるところから始めてみてください。
(参考) Yumenavi|うっかりミスはなぜ起こる? 日経ビジネスONLINE|仕事のミスをビックリするほど無くす方法を考えた ヒューマンエラー 理論と対策 産業技術総合 研究所 中田 亨