脳のパフォーマンスを最速で引き出す覚醒時間術。休憩時間は「5分」と「15分」を使い分けなさい。

「真面目に仕事をしているが、どうもいつも進みが悪い」「必死にやっているのに、ミスしてしまう」という方は、集中のサイクルを意識して、仕事の時間を区切るといいですよ。その際には、ぜひ「15<30<90分サイクル」を取り入れてみてください。さっそく説明しましょう。

時間を区切ったほうがいいのはなぜ?

精神科医の樺沢紫苑氏によれば、高い集中力を要する同時通訳は15分が限界なのだそう。たとえば国際会議では3人が1組となり、15分ごとのローテーションで行うそうです。

また、大阪大学・人間科学部の臼井伸之介教授は、どれほど集中力を維持できるか調べる「クロックテスト」という実験を紹介しています。その実験方法は、2時間ずっと時計のような装置を見つめ、ある特定の動きを見つけると手元のスイッチを押すというもの。30分くらい経つと見落としが急に増えるそうです。これを注意の“30分効果”というのだとか。

長く同じことをしていると「心理的飽和状態に陥る=飽きてくる」ので、注意を持続させるためには気分転換が大切だと臼井教授はいいます。

また、逆に、ハーバード・メディカル・スクールの精神医学臨床准教授、Srini Pillay 氏は、あまりにも集中しすぎて過集中の状態に陥ると、脳が疲れて硬直化し、本当に大切なものが見えなくなると著書『ハーバード×脳科学でわかった究極の思考法』のなかで伝えています。だからこそ、非集中(アンフォーカス)が必要なのだとか。

つまり、作業内容を変えたり、気分転換したり、休憩したりしない限り、どんなに真面目に仕事をしていても、人間は集中力を低下させ、あるいは集中しすぎて脳を疲れさせ、仕事の効率を下げてしまうということ。

したがって、仕事の時間は区切ったほうがいい最大の理由は、人間の集中力が長く続かないからです。

人間の集中サイクルとは?

人間の集中にはサイクルがあります。イスラエル工科大学の教授 Peretz Lavie 氏は、睡眠中にレム睡眠とノンレム睡眠のサイクルが交互にやってくるのと同様に、日中の活動時にも集中(覚醒度の強い90分)と非集中(眠気の強い20分)のサイクルが交互に出現すると突き止めたそうです。これを、ウルトラディアンリズムといいます。

樺沢紫苑氏はこのリズムを挙げ、適度に休憩を挟むことで、脳は再び集中しやすい状態になると説明しています。

ウルトラディアンリズムに従えば、90分働いて20分間休憩するのがベストですが、仕事のサイクルとして考えるなら、区切りがよく認知しやすいほうがいいはず。ちなみに、ハーバード・メディカル・スクールの Srini Pillay 氏は、45分間集中するたびに15分間の休憩をとるのが効果的だと述べています。そこで、まとめると――

・人間の覚醒サイクルは90分 ・同じ作業は30分が限度 ・もっとも高い集中時間は15分 ・15分の休憩が効果的

――となります。それらを踏まえ、活用事例へと移ります。

1日の仕事は90分×15分のサイクルで

たとえば、8時間勤務、正午から1時間休憩で、会議や外出がない場合。人間の覚醒度が高い90分と、非集中時間の15分というサイクルで、以下のように区切ります。 (Peretz Lavie 教授が提唱した非集中時間は20分ですが、前項のとおり Srini Pillay 氏のアドバイスがあり、区切りもいいので15分とします)

【9:00~10:30】90分仕事 15分インターバル 【10:45~12:00】75分仕事(昼食のため切り上げ) (お昼の休憩) 【13:00~14:30】90分仕事 15分インターバル 【14:45~16:15】90分仕事 15分インターバル 【16:30~18:00】90分仕事 (終業)

なお、15分のインターバルは、休憩というより“何も入れない余白”とします。上記の例なら1日の余白はトータル45分。「ちょっとこれを先にお願い」といった突発事項にも対応しやすくなります。以降は、細かい説明です。

「90分」はもっとも大きなサイクル

90分の区切りまで仕事を頑張ったら、15分間は仕事から離れられると考えます。その意識がより集中力を高めてくれるでしょう。とはいえ、90分のあいだ、仕事に“がんじがらめ”になるわけではありません。

「30分」でひとつのタスク

大きなサイクル(90分)のなかの30分は、ひとつのタスクの区切りと考えます。30分経ったら違う作業に切り替えることで、注意の“30分効果”を維持できるはずです。逆に、そうしなければ、心理的飽和状態に陥ってミスを犯しかねません。

その際、起業家で作家のフランチェスコ・シリロ氏(イタリア)が考案した、「25分間×5分間の休憩」というポモドーロ・テクニックを取り入れるのがおすすめです。「30分サイクルの最後に、短い休憩を入れる」というイメージでOK。脳の疲れを緩和するほか、頭を切り替えられ、タイムプレッシャー効果による集中力アップも期待できます。たとえば次のとおり。

(★ここから) ・30分間:データ入力(25分間)×同僚とコミュニケーション(5分間) ・30分間:資料ラフ作成(25分間)×トイレ休憩(5分間) ・30分間:資料仕上げ(25分間)×メールやチャット(5分間) (★ここまでが90分)→15分のインターバルへ

大きなタスクは細かく分割し、30分ごとに達成する目標を決めてかかります。

もっとも集中する「15分」

同時通訳がローテンションを組むという15分は、もっとも高い集中力を保つための区切りと考えます。仕事の手を止めず一気に行い、15分経ったら一度立ち止まる、といった具合です。たとえば次のとおり。

・15分間はどんどん情報収集→(立ち止まる)→集めたものを確認 ・15分間は一気に文章を書く→(立ち止まる)→読み返す

時間どおりキッチリと行う必要はありません。30分をおおよそ前半と後半に分け、その区切りに一回立ち止まるとしておけばいいのではないでしょうか。頭を切り替える助けになるはずです。

余白の「15分」

大きな区切り90分のあとに設ける、15分のインターバルは以下のように捉えます。

・ウルトラディアンリズムの非集中サイクル ・仕事から離れられる時間(休憩、会話、机まわりの整理など) ・何も入れない余白の時間(突発的な出来事に対応可)

この15分は、フレキシブルな「余白」の時間と考えましょう。仕事の効率を高めるひとつの要因にもなるはずです。

*** 「15<30<90分サイクル」について説明しました。なお、こちらの記事『勉強は30分サイクルで回せ! あなたを『勉強中毒』にする最短ルート』には、勉強のサイクルについて紹介しています。ぜひあわせてご覧ください!

(参考) スリニ・ピレイ著,千葉敏生訳(2018),『ハーバード×脳科学でわかった究極の思考法』,ダイヤモンド社. ダイヤモンド・オンライン|ハーバード×脳科学でついに判明!頭がよくなる「○○スイッチ」とは? | ハーバード×脳科学でわかった究極の思考法 大阪大学 人間科学部の教員によるミニ講義|うっかりミスはなぜ起こる? Study Hacker|勉強が捗る休憩のとりかた。休憩時間を制する者が勉強を制す!

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