1度の説明で、難しいこともたやすく理解させてしまう人がいます。その一方で、そこまでややこしくないことでもなかなか理解してもらえないという人もいます。
この両者の違いは、頭の中で話の論理を整理できているかが大きく関わっています。論理のきちんと整理された話であれば、聞いている人にとっても論理が整理しやすく、理解が簡単です。しかし、行き当たりばったりの話となると、何が伝えたいのかも、どこに注意して聞いたらいいのかもわからなくなってしまいます。
わかりやすく伝える能力は、日頃からの読書や論理的に考え伝える習慣によって養われるもので、テクニックが通用しにくいものなのです。
論理的に考えられる人は、論理の通ったわかりやすい話をすることができます。つまり、論理の整理されたわかりやすい話をすることで、論理的に考えることができるようになるということになります。なぜなら、人は話をする際に必ず頭の中でその話を組み立ててから話すからです。
今回は、日常のコミュニケーションの中で使うだけで、頭が整理されて論理的に考える力が身に付くキーワードをいくつか紹介していきます。
「全体的にいえば」で全体を俯瞰する
よく頭が整理されているという印象を受ける人の特徴の1つに、俯瞰的に物事を考えることができるということがあげられます。
GPSによって位置情報が表示される地図アプリを使うときのことをイメージしてみてください。位置情報が地図に表示されており、目的にまでの道のりが明らかにされていれば、よほど不慣れな土地でない限り、目的地にたどり着くことができますよね。
このことは、人が物事を考えるということについても同じことがいえます。行き当たりばったりの話をされると、聞き手は迷宮に迷い込んだような気分になります。しかし、全体像を把握し、整理している人の話は、すんなりと理解することができるのです。
そこで、「全体的にいえば」と一言付け加えることで、話の全体的なイメージを持ちやすくなります。
「部分的には」「もう少し詳しく言うと」で細部を取捨選択する
「全体的にいえば」で全体像を示した後は、「部分的には」を使って部分を説明しましょう。
この言葉を使っていくことで、情報の取捨選択を行う能力が身につきます。論理的な説明が求められる多くの場面では、時間が限られているからです。
仮に、要素が10個あったとしたら話せるのはそのうち2、3個程度でしょう。その中で最大限伝えたいことが伝わるように努めると、その話の中で大事なことは何なのかを考えることになります。
そこで「もう少し詳しく言うと」を付け加えて話すことで、伝えたいことを強調することができ、聞き手も意識して聞いてくれるようになります。
「メリットは」「デメリットは」で複眼的に考える
何事にも両面性があるという前提に立ち、それぞれを具体的に列挙する際の言葉が「メリット」と「デメリット」です。
これは、視点を一点に絞らずに、複数の方向から見る力を養うために非常に有効で、セールストークや人に何かを紹介する際にも良いでしょう。
人に何かを売り込みたいとき、ついついメリットばかりを強調してしまいがちになります。しかし、デメリットも具体的に説明したうえで、やはりメリットがそれを上回るという説明の方がより効果的です。
こうした思考パターンを養うことで、実際の生活でもメリット、デメリットを天秤にかける思考が可能になります。
言葉を変えるだけで思考力は磨かれる
上記の3つのキーフレーズを用いることで、頭の中に思考のチェックリストが出来上がってくることでしょう。
何か問題に対して決断をしないといけない、という場面を想像してみてください。 まず、問題の全体像を把握し、そこから細かい事項を取捨選択します。そのうえで、いくつかの解決方法をリストアップし、それぞれをのメリット、デメリットを比較するのです。そこから、いろいろな視点で問題を見ることで最も有益と考えられる決断がしやすくなります。
このような流れを、人に物事を説明したいことにそれぞれ当てはめてチェックリストを完成させましょう。
ちょっとした一言を付け加えるだけで、聞き手に話の内容がしっかりと届きやすくなるはずです。また、自身が聞き手の場合も、そういった意識をすることで理解しやすくなるでしょう。
*** 私が実際にこれらの言葉を使って話をしてみたところ、自分は思っていたほど考えて話をしてはいないのだ、ということに気付かされました。倫理的に考えようとすると難しく聞こえがちですが、積極的にトライしていくことで頭が整理されていくのではないでしょうか。
(参考) 斎藤孝著(2014),「すぐに使える! 頭がいい人の話し方」,PHP新書 5セカンズ|賢い人の話し方6つの基本 人生の教科書HappyLifeStyle知的な話し方をする30の方法その9 要約をして、話がようやくまとまる