気持ちで解決? 行動で解決? 問題解決のふたつのパターン。

「問題解決」と聞いた時に思い浮かべるのは、どんな状況でしょうか。

ビジネスの場面で、プロジェクトの進行や、売り上げ改善のための方策を打ち出すこと。クリティカルシンキングの手法を用いて具体的な打開策を考えること……。

こんな風に考えている人が多いはずです。もちろん、全くの間違いではありません。ですが、これは非常に狭い意味での問題解決でしかないのです。今日は問題解決の本質に光を当て、私たちが何をするべきなのか一緒に考えてみましょう。

 

2種類の「問題対処=コーピング」とは

 

心理学の世界では、問題は人間にストレスを与えるものとして捉えられます。解決策の見つからない問題に対してはストレスを感じますし、もし手強い問題を解決できれば、解放されたような気分になれますよね。問題解決の方法とは、そのままストレス対処の方法と言えるのです。

そんな心理学の考え方に従えば、私たちがとるストレスへの対処の方法は大きく分けて二つあるんだとか。ひとつめが「問題焦点型コーピング」、ふたつめが「情動焦点型コーピング」です。

コーピングとは「coping」、日本語で「対処する」という意味の単語。私たちが問題に直面した時にどんな対処をするか、ということを指しています。

「問題焦点型」は、読んで字のごとく、現在起こっている問題そのものに目を向けること。問題が何かを考え、それに対する方策を打ち出していくもの。私たちが普段「問題解決」と聞いて考えるのは、こちらかもしれません。

もし、あなたが大学院進学のために必要な単位を落としそうだという警告をもらったら、一体どうするだろうか。教授のところへ行って相談し、必要単位を満たすための学習計画を工夫して、それを実行するだろうか。それとも、残りの期間で必要単位をとることはできないと判断し、卒業後に夏期講座で補習を受けるための申し込みをするだろうか。いずれにせよ、こうした行動は問題焦点型コーピングといえる。

(引用元:スーザン・ノーレン・ホークセマ,バーバラ・フレデリックソン,ジェフ・ロフタス,クリステル・ルッツ著,内田一成訳(2015),『ヒルガードの心理学 第16版』,金剛出版.)

一方で、「情動焦点型」というのは、問題やストレスに直面したときの情動、気持ちや精神状態に目を向けたもの。親しい人の死や、取り返しのつかない失敗に直面した時は、「問題焦点型」の行動を起こすことはできません。そんな時、毎回ネガティブな感情に支配されて何もできなくなっては生活が成り立ちません。そんな時のために人類が獲得したのが「情動焦点型コーピング」です。

例えば、他の人に相談して慰めてもらったり、馬鹿騒ぎして忘れようとしたり。はたまた、一時的に問題から目をそらしてみたり「あんな問題大したことないさ」と切り替えたりすることも含まれます。

この「情動焦点型」、一見すると「なんだ、現実逃避じゃないか」とか、「意思の弱い人がすることだろ?」と考える人がいるかもしれません。ですが、考えてみてください。「具体的な行動を起こしても解決できないこと」なんて、たくさんありますよね。先ほどあげたのが、いい例です。一見現実逃避のように見えても「情動焦点型コーピング」は非常に合理的なのです。

 

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基本的には「問題焦点型」が吉

 

しかし、「問題焦点型」の行動を起こせるにも関わらず、「情動焦点型」の対処法をとっている人が多いのも事実です。どうしようもない出来事、手の打ちようのない大事件、それは仕方ありません。しかし、分析すれば原因を特定できそうな問題、冷静になれば具体的な行動を起こせそうな問題だって、多いはずです。

そんな時に「あんなの、重要じゃないんだ」と目を背けてみたり、他人に頼ってばかりではいけません。このような「情動焦点型」の行動は、問題解決ではなく、ただの現実逃避にすぎないからです。なんと、

ストレス状況下で問題焦点型コーピングを用いる傾向がある人は、ストレスを体験しても抑うつ感や不安を経験しにくい。

(引用元:同上)

ということがわかっています。積極的な行動をとれるのにとろうとしない人は、こうした新たな問題を抱えることにもつながるのです。

 

私たちがすべきこと:まずは一人でやってみる

 

それでは、ストレスに直面した時、問題解決を迫られた時。私たちは一体何をすれば良いのでしょうか。自分の直面する問題が、「問題焦点型」の行動を起こすべきものなのか「情動焦点型」で対処すべきものなのか。どうしたらわかるのでしょう。

しかし、そう簡単にそのような分類ができるとは、私には思えません。やってみなければ中身がわからないものなんて、世の中にはたくさんあります。ですから、私たちにできることは「まずは自分一人で努力してみる」ことではないでしょうか。

他人に手伝ってもらえる環境にあるとき、私たちはそれにすがりがちです。道に迷った時、もし一人ならば、あらゆる手段を使って自分の現在位置を知ろうとすることでしょう。地図を広げ、辺りを見回し、GPSツールを活用するはずです。その時、周辺を彷徨ううちに、雰囲気のいいカフェを見つけるかもしれませんし、リラックスできる公園を発見できるかもしれません。一人で懸命に努力するからこそ、得られるもの、発見できることはたくさんあると思うのです。

そこに他人がいれば、すぐにその人に道を尋ねてしまうでしょう。別に、それが悪いことだとは言いません。しかし、他人を頼ることによって、失ってしまう発見も多いのです。初めから何も行動せずにウジウジする姿勢は、褒められたものではありませんね。

とにもかくにも、まずは一人で考えてみる。問題の原因を探し、方策を立て、行動してみる。問題解決の鍵は、ファーストステップなのです。

 

(参考) スーザン・ノーレン・ホークセマ,バーバラ・フレデリックソン,ジェフ・ロフタス,クリステル・ルッツ著,内田一成訳(2015),『ヒルガードの心理学 第16版』,金剛出版.

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