仕事やプライベートで気疲れしていませんか? なじめない環境で過ごしたりあまり親しくない人とやりとりしたりする際には、ひどく気を遣うので、自宅に帰ってひとりになった瞬間どっと力が抜けることがありますよね。
顧客対応として多くの人とコミュニケーションを取らなければならない接客業の方や、取引先の顔色をうかがわなければいけない営業の方などは、特に気疲れしやすいはず。接客業や営業でなくても、少し気が合わない同僚がいるとか、上司の様子をいつも気にしないといけないなど、仕事で何かと気疲れしてしまうシーンは多いことでしょう。
精神的な疲れは知らず知らず蓄積し、私たちの身体に悪い影響を及ぼしてしまうもの。今回は、精神的な消耗を抑える方法をご紹介します。
「気疲れしがちな人」の特徴
気疲れしがちな人には特徴があります。まずは、「完璧主義」な傾向。完璧主義な人は、他人と接する場面において「常に相手から気に入られなければいけない」「自分が多少嫌な思いをしてでも、円滑なコミュニケーションをとらなければ」というように、自分に我慢を強いてしまいがち。気が休まらないため、精神的疲労を常に抱え込んでしまうのです。
忙しい日々が続いて生活習慣が乱れたり身体的な疲労が積み重なったりすることも、精神的な疲れにつながります。みなさんも体が疲れているとき、なんとなくイライラしてしまうことがあるでしょう。きちんと休んで疲れを取れば、イライラが解消できるのですが、休む暇もないほど忙しいと、体に疲労が溜まってイライラも蓄積していきます。
イライラして怒りっぽくなったり、記憶違い・勘違いをしやすくなったりするだけでなく、さらに疲労が溜まるとノイローゼやうつ病になってしまう可能性も。心身の疲れのサインを見逃さないよう、普段の生活を見直すことが必要です。
気疲れしてしまう理由
気疲れしやすい人の特徴を挙げましたが、「完璧主義」「忙しい」などの特徴に当てはまらない人でも気疲れしてしまうことはあります。気疲れしてしまう理由のひとつは、「決断しなければならないことが多い」ことです。
決めなければならないことがたくさんあると、決断の大小にかかわらず精神的なエネルギーを消耗してしまいます。たとえば、Appleの創始者であるスティーブ・ジョブズ氏は、いつも同じ服を着ていました。「今日はどの服を着ようか」と悩み、決断する機会を減らして、製品開発にエネルギーを注ぎたいと考えていたからです。
「好きなことをあと回しにする」というのも気疲れする理由のひとつ。サンフランシスコ州立大学の研究によれば、仕事以外のクリエイティブで自由な活動(小説の執筆やゲームを楽しむことなど)を行うことで、ストレスを解消でき、「燃え尽き状態」を防げるのだそう。好きなことをする時間が持てないようなゆとりのない生活は、ストレスを増加させる一方。自分の好きな活動を我慢しないことは、精神的な健康を保つうえでとても重要なのです。
精神的な消耗を抑えるコツ
「気疲れ」を防ぐには、完璧主義にならない、体の疲労を溜めない、決断の機会を減らす、自分が楽しめる時間を確保する、などが効果的です。さらに、精神的に消耗せずに済む「気の持ち方」と、精神的疲労を回復する具体的な方法をご紹介します。
1. 自分に優しくなる
大切なのは、自分が気疲れしている状態を無視しないことです。気疲れを無視しつづけていると、やがて精神の限界が訪れます。 「気疲れしているな」と気づいたら、「自分はこうあるべき」という意識を思いきって捨ててみましょう。「いちいち嫌味を言ってくるような人の言葉をまじめに受け取る必要はない」「不誠実な人に対して必要以上に優しくしなくてもかまわない」など、自分に課している制限を外してみてください。
最初は抵抗があるかもしれませんが、気疲れに気づいたら必ず「こうあるべき」という意識を捨てましょう。何度も試すうちに気が楽になり、心の平穏につながります。自分に優しくなると、他人の言動に振り回されたりイライラしたりすることがなくなり、結果的に他人にも優しくなることができますよ。
2. 「トリプトファン」を摂取する
精神的な消耗を抑えるには、食事にも気を配ってください。精神的安定をもたらす神経伝達物質「セロトニン」の原料となる「トリプトファン」を積極的にとることがオススメです。
「トリプトファン」は自身の体内で合成できない「必須アミノ酸」なので、食事によって外部から取り込む必要があります。管理栄養士の道江美貴子氏によると、セロトニンが合成されるのは日中なので、大豆・牛乳・豚ロース・カツオ・バナナなど、トリプトファンが多い食材を朝食もしくは昼食時にとるるのがよいのだそう。食事制限のような厳しいものではないので、栄養をあまり気にしたことがないという方でも取り組みやすい方法です。
3. 質のよい睡眠をとる
質のよい睡眠をとることは、身体的・精神的疲労を取り除くのに大切です。睡眠時間が長ければよいというわけではなく、睡眠の「質」にも気をつけてください。
睡眠には「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」があります。ノンレム睡眠の主な目的は肉体的疲労であるのに対し、レム睡眠中には脳が記憶や起きている間に処理できなかった悩みなどを整理しています。レム睡眠が阻害されると、精神の回復がうまく行われず、疲れが取れなくなってしまいます。ノンレム睡眠もレム睡眠も充分にとるには、睡眠の質を上げる工夫が必要です。
医学博士の裴英洙氏は、眠気を誘う神経伝達物質「メラトニン」の分泌が乱れるため、就寝前にスマートフォンを使わないよう忠告しています。また、お酒をよく飲むという方は深酒に注意してください。寝る前に飲酒すると、夜中に脳が覚醒する「中途覚醒」が発生し、睡眠の質が下がってしまいます。
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「自分へのご褒美としてスイーツを買って帰る」など、ストレスは簡単な方法で解消できるのではと考えた方がいらっしゃるかもしれませんね。たしかに、一時的に満たされた気持ちにはなるでしょう。しかし、精神的疲労に対する根本的な解決とはなりません。
日々の生活でまったく気疲れしないというのは不可能なことです。無理をしすぎることなく、気疲れを予防したり解消したりできるよう、紹介した方法をぜひ試してみてください。
(参考)
NIKKEI STYLE|疲れて寛容力が下がったら… まず3日間休もう
NIPRO—ニプロ株式会社—|すこやかネット Vol.14 『疲労』を考える
ハフポスト|ストレスが溜まったら「生姜焼き」を食べる! 一年の疲れを取る食事セラピー
プレジデントオンライン|なぜ一流の人は短時間睡眠でも平気なのか
MakeUseOf|11 Quick Fixes for the Bad Habits That Kill Your Mental Energy