皆さんは「相対性理論」とは何か、ご存知ですか?
有名な理論なので、名前くらいは聞いたことがあるでしょう。しかし、具体的にどのようなことか、と聞かれると、説明はおろか想像さえつかない人も多いのではないでしょうか。
今回は、この相対性理論について、誰にでもわかるよう楽しくやさしくお話します。物理を知らない方でも大丈夫! では、解説を始めます。
相対性理論における原理とは
相対性理論とは、アインシュタインにより1990年代初頭に発表された理論で、相対論とも呼ばれます。特殊相対性理論と一般相対性理論の総称です。
その昔、光(電磁波)の研究をしていた人たちは、光の速さを理論的に求めることに成功しました。なんと、1秒間に地球を7週半できるほどの速さだったのです。しかし、「この光の速さとは、何に対する速さなのだろうか?」という疑問が浮上しました。
分かりやすく説明しましょう。たとえば、道を走っている赤い車の速さを測ろうとします。地面に立っている人が測ってみると、時速50kmでした。しかし、その赤い車と同じ方向に走る時速20kmの青い車から測ると、赤い車の時速は【50km-20km=30km】となります。速さを測るには、誰がどこで測ったのかも重要なのです。
光の話に戻ります。光の速さとは、誰から見た速さなのでしょうか。道を走る車から見た速さ? 地面に立っている人から見た速さ? しかし、地球だって動いているわけだし……。
「光の速さとは、どこから観測した速さか」という問いに対し、宇宙には完全に止まっている場所(絶対静止系)があり、そこで計測した速さではないか、と科学者たちは考えました。それなら、つじつまが合いそうですね。
しかし、20世紀で最も偉大な科学者といわれるアインシュタインの考えは違いました。彼は、「走る車から測っても地面に立って測っても、つまり、どんな場所で測っても、光の速さは常に一定である」と考えたのです。これを、光速度不変の原理と呼びます。
突飛な考えのように思われますが、絶対静止系を探る実験がうまくいかなかったことを考慮すれば、自然な発想だともいえます。しかし、アインシュタインは、絶対静止系を探る実験とは無関係に、光速度不変の原理を仮定して理論を構築したのだそう。アインシュタインの発想が、いかに柔軟で天才的だったか、わかりますね。
そして、光速度不変の原理をもとに計算していくと、普通では考えられないことが起こると明らかになったのです。
人によって時間の流れ方が変わる
時間は、誰にとっても同じように流れるものだと信じられてきました。時間は絶対的なものだと考えられてきたわけです。
しかし、光速度不変の原理をもとに考えると、驚くことに、時間は人によって流れ方が違うと明らかになりました。つまり、時間は相対的なものだというわけです。
具体的に説明しましょう。あなた自身が速く動けば動くほど、周囲に対する時間の流れが遅くなります。そして、あなたの動きが加速し、光の速さに限りなく近づくと、あなた自身の時間は、地上で普通に生活している人たちからは、ほとんど止まっているように見えるのです。
つまり、あなたにとっての1秒が、周りにとっての1000年にもなりうるというわけ。このように考えると、理論的には未来へのタイムスリップは可能なのです! しかし、光の速さに近づけるほどの膨大なエネルギーが見つかっていない点と、あくまでこのタイムスリップは一方向(現在→未来)で、現在に戻ってこられないという点から、今のところ、タイムスリップの実現可能性は低いといわれています。
過去へのタイムスリップについて、今のところ手立ては見つかっていません。過去へのタイムスリップができる理論もあるのですが、そのほとんどが、宇宙のどこかにあるだろうといわれていまだに見つかっていない謎の物質を使う方法だったり、今の人類ではどうしようもないほどのばく大なエネルギーを使う方法だったりして、全く現実的ではありません。また、著名な科学者であるホーキング博士も、時間順序保護仮説というものを提唱し、過去へのタイムトラベルを否定しています。ただし、ホーキング博士は
タイムマシンが将来的にできるかどうかに関しては「私は誰とも賭けをしないだろう」とした。
(出典:Wikipedia|スティーヴン・ホーキング)
もし将来、新しい理論が生まれれば、過去へのタイムトラベルも可能になる……かもしれませんね。
相対的なのは時間だけではない
時間の相対性のせいで、ほかにも色々と不思議なことが起こります。物体が速く動けば動くほど、その物体は相対的に縮みます。これを、ローレンツ収縮といいます。
また、物体は速く動けば動くほど、質量が大きくなっていきます。人でいえば、体重が増えるのです。
日常的にも、重い物を動かすのは大変ですよね。光の速さに近づくと、物体はとんでもない重さになります。これを動かすには、膨大なエネルギーが必要です。これが、先ほど述べた、光の速さに限りなく近づけるには膨大なエネルギーが必要になる理由なのです。
***
速く動くと、時間が遅れたり、縮んだり、重くなったりすると聞いて、なんだか奇妙に思えるかもしれませんが、日常レベルではほとんど影響しません。次のような実験データがあります。
「地上に置いた時計」と「世界一周している飛行機の中に置いた時計」を比べたところ、世界一周から帰ってきた飛行機の中の時計の方が59ナノ秒(0.000000059秒、ナノ=10億分の1)遅れていたのだ。
(引用元:世界一周ブログ!On The Road|世界一周すると59ナノ秒タイムスリップする!相対性理論を理解しよう!)
飛行機で世界一周しても、地上で止まっている人とは59ナノ秒しか変わらないということ。ロケットで宇宙旅行に行くわけでもなければ、相対論的な効果を恐れる必要はありません。
この世界は、不思議なことであふれています。その一端を感じていただけたなら、うれしい限りです。
(参考)
世界一周ブログ!On The Road|世界一周すると59ナノ秒タイムスリップする!相対性理論を理解しよう!
Wikipedia|スティーヴン・ホーキング