相対性理論とは、簡単に言うと、一般相対性理論および特殊相対性理論のこと。どちらも、ドイツの物理学者アルベルト・アインシュタイン(1879~1955)によって提唱されたものです。多くの場合、「相対性理論」と言うと特殊相対性理論のほうを指します。
特殊相対性理論を構成するのは、光の速さは絶対的だという「光速度不変の原理」や、時間は相対的なものだという主張。時間と空間は独立的なものではなく、相互に関係しているという認識に基づくものです。
今回は、この相対性理論について、誰にでもわかるよう楽しくやさしくお話ししましょう。物理が専門でない方でも大丈夫なよう、できるだけ簡単に解説してみます。【最終更新日:2021年2月17日】
相対性理論における「光速度不変の原理」
相対性理論を簡単に理解するため、まずは概要を把握しておきましょう。相対性理論とは、アインシュタインにより1990年代初頭に発表された理論で、相対論とも呼ばれます。特殊相対性理論と一般相対性理論の総称です。
光の速さへの疑問
その昔、光(電磁波)の研究をしていた人たちは、光の速さを理論的に求めることに成功しました。なんと、1秒間に地球を7週半できるほどの速さだったのです。しかし、「この光の速さとは、何に対する速さなのだろうか?」という疑問が浮上しました。
たとえば、道を走っている【自動車A】の速さを測ろうとします。地面に立っている人が測ってみると、時速50kmでした。しかし、【自動車A】と同じ方向に走る時速20kmの【自動車B】から測ると、【自動車A】の時速は「50km-20km」で30kmとなります。つまり、どこから測るかによって速さが変わるのです。
さて、「光の速さ」とは、どこから測るべきなのでしょう? 科学者たちは、宇宙には「完全に止まっている場所(絶対静止系)」があり、そこから計測すべきではと考えたのです。それなら、つじつまが合いそうですね。
疑問への答え
しかし、20世紀で最も偉大な科学者と呼ばれるアインシュタインの考えは違いました。どこから測っても光の速さは一定だとする「光速度不変の原理」を採用したのです。
絶対静止系に関する実験がうまくいかなかったことを考慮すれば、自然な発想だとも言えるでしょう。しかし、アインシュタインは、絶対静止系の実験とは関係なく、「光速度不変の原理」を構築したのだそうです。アインシュタインの発想が、いかに柔軟で天才的だったか、わかりますね。
相対性理論を簡単に理解するには、「光速度不変の原理」を覚えておいてください。
相対性理論における「時間の相対性」
相対性理論を簡単に理解するには、「時間の相対性」という概念も非常に重要です。
タイムトラベルは理論的に可能!
時間は、誰にとっても同じように流れる絶対的なものだと信じられてきました。しかし、「光速度不変の原理」を前提にすると、時間は人によって流れ方が違う、つまり相対的なものだと判明したのです。
具体的には、あなた自身が速く動けば動くほど、周囲に対する時間の流れが遅くなります。そして、あなたの動きが加速し、光の速さにかぎりなく近づくと、あなたはほかの人たちから見てほとんど止まっているのです。
つまり、あなたにとっての1秒は、まわりにとっての1,000年にもなりうるというわけ。こう考えると、理論的には未来へのタイムトラベルすら可能となるのです。
タイムトラベルは現実的に不可能……
しかし、光の速さに近づけるほど膨大なエネルギーは見つかっておらず、また、このタイムトラベルは現在から未来への一方通行なので、タイムトラベルが実現する可能性は低いと言われています。過去へのタイムトラベルを可能とする理論もあるのですが、宇宙のどこかにあるとされる謎の物質や、いまの人類ではどうしようもないほど莫大なエネルギーが必要となるので、まったく現実的ではありません。
物理学者のスティーヴン・ホーキング氏も、「時間順序保護仮説」を提唱して、過去へのタイムトラベルを否定していました。ただ、タイムトラベルが可能になるかどうかは「非常に慎重に扱うべき問題だ」と書き残したこともあり、過去へのタイムトラベルも可能にする理論が生まれないとも限りません。
このように、簡単に言うと、相対性理論はタイムトラベルにも関わるものなのです。
相対性理論における時間と質量
相対性理論を簡単に理解するのに大事なのは、時間と質量の関係です。
速いほど重い
時間の相対性は、不思議な現象を生み出します。たとえば、「ローレンツ収縮」という現象があるのですが、これは物体が速く動けば動くほど一定方向に収縮していくというものです。
一方で、物体が速く動けば動くほど、質量は大きくなります。光の速さだととんでもなく重いので、動かすには膨大なエネルギーが必要。これが、光の速さに近づくのに膨大なエネルギーが必要な理由です。
日常レベルでは影響なし
速く動くと、時間が遅れたり縮んだり重くなったり。奇妙に聞こえるかもしれませんが、日常レベルではほとんど影響しないので、ご安心ください。
米国の物理学者ジョゼフ・ハーフェル氏と天文学者リチャード・キーティング氏が1971年に行なった有名な実験では、原子時計を乗せた飛行機で地球を1周し、地上に置いていた時計と比較したところ、約59ナノ秒しか差がなかったそう。1ナノ秒は10億分の1秒です。
つまり、速度によって時間の流れが変わるといっても、ほんのわずか。ロケットで宇宙旅行に行くわけでもなければ、気にする必要はないのです。
相対性理論を簡単にまとめると、以上のようになります。
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簡単に相対性理論を説明してきたつもりですが、いかがだったでしょう? この世界は、不思議なことであふれています。その一端を感じていただけたなら、うれしいかぎりです。
(参考)
コトバンク|相対性理論
コトバンク|光速度不変の原理
コトバンク|特殊相対性理論
コトバンク|ローレンツ収縮
琉球大学理学部物理系 Wiki|第8講 相対性理論---新しい時間と空間の概念(その2)
The Conversation|Stephen Hawking’s final book suggests time travel may one day be possible – here’s what to make of it
福江純(2001),「隣のブラックホール(4)時空とエネルギー物質の統一」, 天文教育, 13巻, 6号, pp.37-41.
Physics LibreTexts|1.2: Experimental Tests of the Nature of Time
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