仕事の日はクタクタに疲れて、休みの日は家でグダグダと寝るばかり。そんな休日を繰り返す、忙しいビジネスパーソンの方は決して少なくないでしょう。しかし、そんな過ごし方をしていると疲れは一向に取れません。とはいえ、いきなりアクティブに過ごすのも、なおさら遠出も億劫ですよね。
そんな方には、身近で気軽にリフレッシュできる「ステイケーション」がオススメです。
良い休日の過ごし方とは?
メンタルとフィジカルの両面を指導するトレーナー中野ジェームズ修一氏は、「休日に家でじっとしていても疲れはとれない」といいます。また、もれなく渋滞や混雑、押せ押せのスケジュールがついてくる「週末の遠方旅行」についても「ストレスで余計に疲労を感じる」と指摘しています。
同氏は、静養するためにタイトなスケジュールで遠出するくらいなら、自宅の近くで過ごすほうが効果的な疲労回復になると述べ、「休日は映画鑑賞や読書などで静かに過ごす『パッシブリカバリー』と、積極的に動いて疲労回復を図る『アクティブリカバリー』を組み合わせると、疲労感が早く抜ける」としています。
また、働くひとのオンライン保健室を運営する株式会社iCARE代表の山田洋太氏は、リフレッシュで大切なのは「夢中になること」「意識すること」で、いつもの行動に少し変化のある意識を向けて夢中になれば、日常のなかでも意外と多くのいいリフレッシュ法があるといいます。
だからこそ、いま、新しい休暇スタイル「ステイケーション」が注目されているのです。
ステイケーションのすすめ
「ステイ=Stay」と「バケーション=Vacation」を組み合わせた造語「ステイケーション」は、遠出せず、近場で余暇を過ごすことを意味しています。根底にあるのは“休日にお金はかけたくないが、楽しみたい”という考え。サブプライム住宅ローン危機などで景気が冷え込んだアメリカから広がったといわれています。
具体的には、近場の名所や体験施設を楽しんだり、ちょっと高級なホテルに宿泊してワンランク上のサービスを受けたり、自宅でホームパーティーをしたりすること。また、自宅で意識的にゆっくり過ごすこともステイケーションのひとつ。
つまり、「身近で非日常を楽しむこと」全てがステイケーションなのです。
以前からあったステイケーション
筆者はずいぶん前、よく友人たちと、ちょっと贅沢なホテルに週末1泊してホテルパーティーを楽しみ、仕事のストレスを解消していました。電車でわずかな時間しかかからない場所でも、その中に入れば別世界。シワのないきれいなシーツに、上質なバスアメニティ、肌触りの良いバスローブやウットリするような夜景と……、非日常を味わいリフレッシュするには十分過ぎるほどです。ガールズトークにも花が咲くというもの。
それに、高級ホテルのロビーやラウンジ、BARなどでは、よくピアノの音が聞こえてきますよね。実はこれも疲れを癒すポイント。なぜならば、ピアノには、弾き手の指や手の動きによって生じる「1/f ゆらぎ (エフぶんのいちゆらぎ)」があるからです。この微妙に不規則な音が大脳の働きを抑え、心地良い気分にしてくれます。
いずれにせよ、そういった過ごし方は、いまでいうステイケーションだったわけです。なお、ステイケーションは不況が発端ですが、筆者が上記のように週末を過ごしたのはバブル時代のころ。しかし、そんな時代でも豪華なホテルディナーにせず、外に出て評判の店に行き、美味しくてリーズナブルな食事を楽しみました。楽しむことに貪欲だったのです。
つまり、ステイケーションは決して「近場で妥協する休暇」ではなく、「何にも縛られず心を豊かにして、とことん楽しむ休暇」でもあるということです。
気軽に楽しめるオススメのステイケーション
では、ここ最近、筆者が楽しんでいるステイケーションをご紹介します。
美術館のカフェでのんびり
もしも自宅近くに美術館があれば、ぜひカフェやレストランの有無をお確かめください。美術館内にあるカフェは、美しく整えられた建物のなかでアートを身近に感じながら、だいたいは混雑と無縁にリラックスできる場所。展示品と関連した限定メニューが用意されていることもあるので、いわゆるSNS映えも完璧でしょう。連れがいれば、肩の力を抜いたアートトークも盛り上がります。
とにかく朝食を豊かにゆっくり
休日の朝だけは、起きたらゆっくりブランチに出かける、ウォーキングがてら朝早く焼き立てのパンを買ってくる、あるいは休日だからこそ、平日の朝にはできない野菜たっぷりのスープをつくるなどして、とにかく朝食を豊かにゆっくり過ごすステイケーションもお気に入りです。昨年から配車アプリUberのフード宅配「UberEATS」も始まっていますが、その他数多くあるデリバリーを楽しむのもいいかもしれませんね。
音楽を聴きながら洗濯もの干し
え? 洗濯もの干しのどこがステイケーションなの? と思うかもしれませんが、これが意外にもいいリフレッシュ法です。ただし、トップスのみ、ボトムスのみ、あるいはタオルのみといった具合に、1回の洗濯では「同じカタチのもの限定」にすることがコツ。なぜならば、単純作業化することで脳を使わずに済むから。
お天気がいい日、好きな音楽をイヤホンで聴き非日常を演出しながら、脳に負荷をかけず同じカタチのものを干していくと、億劫だったはずの洗濯ものに夢中になっていきます。この「夢中になる」ということこそ、山田洋太氏が伝えていたリフレッシュ法に大切なこと。同氏は、洗濯や掃除・片づけ、料理、買いものといった行動も、効果の高い身近なリフレッシュ法だといいます。
ステイケーションのコツ
良いステイケーションを過ごすためのコツは、
・範囲はストレスなく出向ける場所まで ・金銭面やスケジュールに無理がないもの ・興味が湧いていること
「休日は、こうあるべき」という支配から逃れて、肩の力を抜き、自分の気持ちに沿うことが何よりも大切です。
*** 建築・インテリアデザインのコミュニティサイトHouzzでは、インテリアジャーナリストのJo Simmons氏が、自宅庭(あるいはベランダ)で日光を浴びたり、地元を旅行気分で散策したりといったステイケーションのアイデアをいくつも提案しています。ほかにも色んな過ごし方があるはず。自由に発想して、充実したステイケーションをお過ごしくださいね。
(参考) 日経ビジネスオンライン|休日に家でじっとしていても疲れはとれない! All About|休日がヒマ…趣味がない人が試すべきリフレッシュ法 @DIME|いま注目の旅のスタイル「ステイケーション」とは? オトナンサー|休日はお金かけずに楽しみたい! 2017年注目の「ステイケーション」とは Houzz|長期休暇は自宅で! 「ステイケーション」を楽しむ20のアイデア 店舗BGMを作れるiPadアプリ OTORAKU|コラム「音楽特集」|カフェや書店を癒やしの空間に。音色が心地よいピアノBGM