仕事などで常に忙しく、なかなかスキルアップのための勉強や、細かな雑務に時間が割けないという方は多いでしょう。いざスキマ時間を活用しようと思っても、準備が整っておらず手間取ってしまったり、スキマ時間にやり始めたことがキリよく終わらなかったりして、結局は非効率になってしまうことも……。
そんな状況に悩む方のために、スキマ時間を効率的に使う工夫をご紹介します。
スキマ時間を使えるようになるメリット
『10年後に生き残る最強の勉強術』の著者で、資格研究・取得家の鈴木秀明氏は、スキマ時間活用のメリットとして以下を伝えています。
・ムダな時間を有効活用できる ・短い時間なので集中力やスピード感をもって勉強に臨める ・短い時間なのでモチベーションを高く維持できる ・時間単位あたりの勉強密度が濃くなる
また、株式会社プラスドライブCEOで、『トヨタで学んだ自分を変えるすごい時短術』を著した原マサヒコ氏は、トヨタのメカニック時代に「極限までムダを省く」ことを徹底的に教え込まれたといいます。その原氏が1秒さえもムダにしないトヨタの教えをもとに、あらゆる人が応用できると確信しているのはスキマ時間を効率的に使うこと。
つまり、スキマ時間の活用は、作業のムダを極限までなくし生産性を高める、効率的な時短術でもあるということです。
さまざまな仕事術を数多く紹介している“仕事の教科書編集部”も、『仕事が速い人になるコツ: 残業もミスもなくなる!』のなかで、スキマ時間をコツコツ利用して仕事を分散させれば、いざまとまった時間で仕事をする際には準備が整っているため、間違いなく時短に結びつくと述べています。
したがって、スキマ時間を活用する最大のメリットは「時短」と「生産性の向上」です。
スキマ時間を使わないとどうなる?
スキマ時間を使わなければ、もちろん前項のメリットが損なわれてしまいます。
習慣化コンサルタントの古川武士氏は「時間の使い方がうまい人は、スキマ時間を上手に利用している」といい、その対極にいる人を「完璧主義」といいます。“仕事の教科書編集部”も同様に、スキマ時間を上手に有効活用している人は「最善主義」で、スキマ時間を活用しないがため非効率で生産性が低い人は「完璧主義」だとしています。
“仕事の教科書編集部”いわく、完璧主義な人はスキマ時間に何かしら準備をせず、時間をキッチリ確保してからやっと仕事に着手するので、常にゼロからのスタートになりがちなのだとか。また、古川氏は完璧主義だと非効率なので残業が多く、納期ギリギリまで仕事を抱え込んでしまうことがあるといいます。
もちろん、完璧主義な仕事が素晴らしい成果をもたらすこともあります。そうでなくてはならない仕事もあるでしょう。しかし、効率的で生産性が高い仕事の進め方に完璧主義は合いません。中国春秋時代の兵法書『孫子』にも「巧遅は拙速に如かず」と説かれているように、たとえ完璧な出来でも時間をかけ過ぎたことは、完璧ではないが迅速に進められたことに及ばない場合があるのです。
そして、迅速に物事を進めるにはスキマ時間の活用が大いに役立ちます。
なぜスキマ時間をうまく使えないのか?
スキマ時間を活用するメリットと、活用しないデメリットは分かりましたが、そもそもスキマ時間を上手に使うのは難しいですよね。なぜうまくいかないのでしょうか?
その理由は、準備が不十分だからです。スキマ時間を使う態勢になっていないということ。
原マサヒコ氏は、スキマ時間を使って何をやるか事前に決めていないと、結局時間をムダにしてしまうと述べています。例えば「5分以内」「10分程度」「20分程度」といった時間ごとに、あらかじめやることを具体的に決めておくことが有効なのだとか。また、鈴木秀明氏は、スキマ時間を有効利用できる人と、できない人がいるのはモチベーションの問題だとし、それを解決するには物理的な妨げをなくすことが必要だといいます。
つまり、スキマができたら「すぐできる、いまできる」状況を作っておくことが大切なのです。
スキマ時間を効率的に使うための工夫
ではここから、スキマ時間を効率的に使うための工夫をご紹介しましょう。
1.ストレスフリーにする 鈴木秀明氏は、スキマ時間用の教材として、ハンディサイズの要点集的な参考書やモバイル用教材をすすめています。なぜならば、スキマ時間に使う教材が、あまりに重かったり大きかったりすると、カバンから取り出すのも持っているのも一苦労になり、やる気が失せてしまうから。ストレスフリーになるよう態勢を整えておけば、スキマ時間が生じるたびに「すぐできるから、サッと始めよう!」とモチベーションが上がるはずです。
2.やることを決めてしまう 株式会社ベレフェクト代表取締役の太田彩子さんは、「私にとってスキマ時間は“ToDo仕分け”の時間」といいます。特に外回りや出張の多い人におすすめだという活用法はこのとおり。まずToDoが発生したら、タブレットやスマートフォンに入っているタスク管理アプリにとりあえず入力。そして、スキマ時間ができたら入力したものを仕分けます。方法はToDoにマークをつけるだけ。例えば「電話」の場合は移動しながら行えるので「移動中」マーク、朝のうちに終わらせるなら「朝」マーク、時間場所を問わず1分以内で片付けるものなら「easy」マークといった具合です。
このスキマ時間活用法自体も注目すべきですが、ここで大切なのは「スキマ時間になったらこれをやる」と決まっていることです。スキマ時間が生じてから「さて、何やろう?」なんて迷っていると時間はどんどん過ぎ去ってしまうのです。
3.頭のなかでスキマ時間活用 たまたまスキマ時間が発生したとき、両手がふさがっている、あるいは教材や本、ツールがない場合もあるでしょう。そんなときは、勉強したことや仕事の内容を頭のなかで反芻することも大いに役立つと鈴木秀明氏はいいます。
その少し前に読んだテキストや、英単語を復習してみるのも有効です。企画書の内容を記憶でたどって検証することもできます。記憶の定着にも役立ち、想起力の訓練にもなると同氏は伝えています。これこそ「すぐできる、いまできる」ですね。
*** スキマ時間を効率的に使う工夫をご紹介しました。筆者もメモ帳機能やGoogleドライブで、いつでもどこでもスキマ時間を活用しています。ぜひご活用ください。
(参考) 東洋経済オンライン|デキる人は5分の「スキマ時間」をこう使う リーダーシップ・教養・資格・スキル PRESIDENT Online|細切れ時間をどう活用しているか? PRESIDENT Online|ムダな時間を使わない! 仕事の効率を上げる思考法3 仕事の教科書編集部編集(2015),『仕事が速い人になるコツ: 残業もミスもなくなる! 』,学研パブリッシング. 鈴木秀明著(2016),『10年後に生き残る最強の勉強術』,クロスメディア・パブリッシング. 原マサヒコ著(2016),『トヨタで学んだ自分を変えるすごい時短術』,かんき出版. 故事ことわざ辞典|巧遅は拙速に如かず