勉強と運動。一見、相反するものだと思っていませんか?
勉強するなら運動の時間を削らないといけないし、思い切り運動をしたいなら勉強する時間は取れない。多くの方がそう感じていると思います。
受験や論文執筆などのために部活を引退した人であれば、「これまでずっと運動を続けてきたけど、今は勉強に没頭しなくては」という方もいるかもしれませんし、社会人の中にも「忙しい日が続くと体を動かす時間が無くて……」という方もいるでしょう。
このように、運動か勉強(仕事)かどちらかを選ばなければならないように考えられがちですが、普段の生活に運動を取り入れることは、実はとてもよいこと。むしろ運動をした方が、あなたの作業効率は上がるのです。
運動を取り入れることの驚くべき効果
脳に関する従来の研究では、脳の神経細胞数は生まれたときに決まっており、加齢とともに減る一方で増えることはないと考えられていました。しかし今では、その神経細胞の数は、運動によって増やすことが可能だということが分かっています。
ハーバード大学医学部のジョン・J・レイティ博士は、
「運動すると、脳由来神経栄養因子(BDNF)という物質が脳の中でさかんに分泌されます。このBDNFが、脳の神経細胞(ニューロン)や、脳に栄養を送る血管の形成を促すことが明らかになりました」
(引用元:PRESIDENT Online| 脳細胞が増える運動「3つの条件」)
と述べています。つまり、運動をすることにより脳の神経細胞が育ち、結果として頭が良くなることにつながるのです。
この理論を、実際に教育に生かしている小学校が栃木県にあります。その小学校の児童たちは、授業の合間の20分程度の休みに、グループゲームを中心に楽しみながら身体を動かしているのだそう。その運動とは、心拍数を上げる有酸素運動であること、しかし勝ち負けや競争にはしないことなどの工夫がこらされたもの。学校の教師たちは、運動後の授業において、児童たちの集中力が増していることを実感しているといいます。
この他にも、2001年にアメリカ・カルフォルニア州教育局が小中学生に行った大規模な調査によると、体力テストで高得点をとった生徒ほど、学力テストの平均点も高いことが分かりました。
このように運動と勉強の間には、脳科学的にも実践的にも、密接な関係があるのです。
勉強に効果的な運動とは?
脳を育てるのに効果的なのは、一定時間にわたって心拍数を上げるタイプの運動です。
本来は、心拍数を上げるような少し激しい運動を短時間行うことと、ゆっくりした運動を長めに行うことを組み合わせるのが理想的。ですが、運動が苦手な人や運動をする時間が十分に無い人にとっては、難しいかもしれませんよね。
大切なのは毎日身体を動かすこと。いくら脳に効果的な運動でも続けることができなければ意味がないので、ダンスでも体操でも、自分自身が楽しいと思うような身体の動かし方で運動しましょう。
また、ヨガのポーズや空手の形などをやりながら自分の動きを意識する運動は、身体にも頭にもよいといえますし、スクワットやストレッチ、逆立ちなども脳を活性化する運動なのだそう。
これらの運動をいくつか試してみて、これだったら自分でも続けられるというものを探してみましょう。
運動をするといいタイミングとは?
今回お伝えしている運動の目的は、脳を勉強に最適な状態に整えること。ですから運動するタイミングは勉強や仕事を始める前や朝がおすすめです。
運動をすると脳の血流が増え、思考力や集中力が飛躍的に高まります。自分が続けられると思う運動を見つけ、毎朝身体を動かしてから机に向かう、ということを習慣づけるといいでしょう。
もちろん、朝時間がない方でしたら、朝に限らず実際に机に向かう直前や、また長時間作業を続けて疲れや眠気を感じたときに運動してみてください。
*** このように、運動と勉強は意外な接点があったのです。勉強しなくちゃ! と運動をあきらめていた皆さんも、運動があまり得意でないみなさんも、是非この機会に一度、勉強や仕事の合間に体を動かしてみてはいかがですか?
(参考) Fuji Xerox|精神科医が教える「こころ」を活かす勉強術 PRESIDENT Online| 脳細胞が増える運動「3つの条件」 ベネッセ教育情報サイト|受験勉強のストレス解消には「逆立ち」が効果的! 脳が活性化し効率もアップ ベネッセ教育情報サイト|受験勉強の効果を上げる運動とは? ベネッセ教育情報サイト|真冬こそ、運動で脳の活性化を!