社会人になり、何度も会議に参加してきたビジネスパーソンであれば、一度は心の中でつぶやいたことがあるのではないでしょうか。
「この会議って意味あるのかな?」 「何の進展もないどころか、結局時間を浪費しただけだった」 「もっと有意義な会議ができれば生産性も上がるのに」
しかし、いざ自分が会議やミーティングを主催する立場になったとき、思い描いていた「有意義な会議」を実行することがいかに難しいか痛感するはずです。
今回は「現状の会議のやり方を変えたい」という使命感を持っているすべてのビジネスパーソンに向けて、有名企業が試行錯誤の末にたどり着いたとっておきの会議術をご紹介します。
実施する必要のない “ムダすぎる会議”
みなさんは次のような会議を経験したことはありませんか?
・丸々1時間、数字や進捗状況を報告し合うだけの会議 ・いつの間にか話が脱線して具体的な解決法が何も決まらない会議 ・参加者の一部しか把握できていない内容を延々と議論する会議 ・メンバーの中で最も権威がある人物に対してみんなが萎縮してしまい、自由な発言ができない会議
「え? 会議ってこういうものじゃないの?」と思ったのなら、それは“ダメな会議”しか経験したことがない証です。『コクヨの3ステップ会議術』(中経出版)を手がけたコクヨ株式会社の下地寛也氏は、さまざまな企業で研修を重ねるうちに、“ダメな会議”は大きく分けて3つのパターンに集約されることに気づいたといいます。
ひとつは、アイデア・意見が出ない『シーン会議』。これは業績があまり良くない企業に多く、各自のモチベーションの低さや「きっと誰かが発言するだろう」という当事者意識のなさが原因といえるでしょう。
次は、時間までに結論が出ない『ダラダラ会議』。業績の良い大企業や銀行などに多く、メンバーの馴れ合いによる雑談や脱線、また参加者の人数の多さゆえにまとまりがなくなってしまうことが原因だと考えられます。
最後は、会議の空気が重苦しい『ギスギス会議』。社内に派閥があるような企業に多く、人間関係がダイレクトに影響している“公私混同”が原因です。
本来会議とは、課題をみんなで確認して解決するための方向性を決めたり、複数でアイデアを出し合うことでより良い仕事をしたりするために行われるものです。だからこそ、ただ時間を浪費するだけの会議を惰性で続けるべきではないのです。
そうはいっても、いざ会議を取り仕切る立場になったとき、これまで「無駄だな」と思っていたような進め方しかできずに悩んでいる人も多いはず。具体的にどこをどう変えていけばいいのか、みんなのモチベーションを上げて生産性を高める会議をするにはどうしたらいいのか、有名企業の会議術をヒントに考えていきましょう。
コクヨの会議は目的によって手法を変える
文房具やオフィス用品の販売を手がけるコクヨでは、会議の目的に応じてさまざまな工夫を凝らしています。
たとえば創造的なディスカッションを目的とした会議では、進行役となるファシリテーターはホワイトボードの前に立ちます。すると参加者の顔が自然と上がるので内職ができず、誰もが集中して会議に参加するようになったそうです。また、人数は7人以下が理想だといいます。なぜなら、人間は人数が増えると手を抜く人が出てくるから。それぞれが「自分はこの会議に欠かせないメンバーである」という意識を高めることが大切です。
一方「報連相」を目的とした会議では、プロジェクタなどを使って情報を共有して効率的に早く進行させることが重要といいます。余計な発言をしても時間の無駄だと割り切ることで、徹底的な効率化を実現しているのです。
また、メンバー全員で資料を確認する場合、PCの画面で1枚1枚めくっていくのと机に並べた資料を俯瞰するのとでは、スピード感が圧倒的に違います。そのため、資料を全部広げて並べられる大きな机で会議を行うのが理想であるといいます。
Googleの会議では最後に“宿題”を出す
Googleは“会議をする意味”に徹底的にこだわっています。それは、最も効率的にデータや意見を発表し、問題を議論し、判断を下すことができる場こそが会議、という理念に基づいて進行していることでも明らかです。
『図解 モチベーション大百科』(サンクチュアリ出版)の著者で、リーダーシップ・行動心理の研究者である池田貴将氏によると「Googleでは会議の際に次の行動につながる宿題事項(アクションアイテム=AI)を重要視している」とのこと。具体的には、ミーティングの最後に必ず『じゃあ、AI!』と呼びかけ、「誰が何をいつまでにどうするか?」を確認する」という手法をとっているそうです。
その手法を活用して、会議の終わりに各自のタスクリストをチェックし、それぞれに期限を設定しましょう。すると参加者は「ミーティング中に出た課題をまとめて、次のアクションにつなげなければいけない」と緊張感をもつはずです。会議に対する個々のモチベーションを上げるためにも、この方法はおすすめです。
さらにGoogleは、参加者すべてに時間の経過を意識させるため、全員が見える場所に大きなタイマー設置しているといいます。こうすることで、集中して議論に参加して時間内に会議の目的を達成しようとする意識が高まる効果が期待できるでしょう。
Appleの会議では業務の“責任者”を指名する
Appleでは『会議=イノベーションの場』という考えが根付いています。そのため、参加者には議論を戦わせて全員で力を合わせてブレイクスルーを達成することが求められるそうです。
まず、会議は常に最小限の参加者で開催します。それはApple創業者のスティーブ・ジョブズ氏が「会議の参加人数が多くなると様々な意見が交錯し、議論が錯綜するため、良い結論が生まれない」と考えていたためです。
そして会議で決まった個々の決定事項には必ず「責任者」を指名します。Googleの例とよく似ていますが、アウトプットとしてアクションプランが作られる際に、それぞれのアクションの横に必ず「DRI(Directly Responsible Individual)」と呼ばれる責任者の氏名を記載する決まりになっているのです。責任者を指名することで、アクションプランの進捗に各自が責任をもって取り組み、せっかく会議で議論したことが放置されるのを防ぐ効果が期待できます。
たとえば、マーケティング戦略について会議した結果、「市場リサーチ」「世代別アンケートの集計」「SNSのアクセス解析」といったアクションプランが出たとします。会議の進行役がそれぞれのアクションプランに対して責任者を1名ずつ任命して期限を設定、そのうえで業務の進捗確認まですることができれば、毎回の会議はぐんと有意義なものになるでしょう。
博報堂の会議は絶対に人のアイデアを否定しない
集団でアイデアを出し合うことで既存の枠にとらわれずに革新的な発想を生み出す会議を「ブレインストーミング」といいます。クリエイティブ関連の会社では毎日のように行われているのではないでしょうか。
大手広告代理店の博報堂は、そのような会議のとき「発言する人が毎回同じ」という問題を回避するためにも、みんなの前で発言することが苦手な人には、事前にある準備をしてもらうそうです。
それは「A4の紙1枚につき1アイデアを書いて持ってくる」こと。会議ではそれをみんなの前に出し、その束を全部説明し終わるまではどんなに偉い人もその話を最後まで聞くようにするそうです。新しいものを生み出す仕事をしている博報堂では、「アイデアを考えてきた人のことはリスペクトする」という気持ちが根底にあります。結果を求めるのではなく、自分のアイデアや意見を自由に発信できる下地を作ることが大事なのですね。
また、会議術に関する著書を多数出している人材コンサルタントの齋藤正明氏によると、会議で絶対に言ってはいけない言葉があるそうです。
「君たち、何か良いアイデアはないかな?」という発言は、上司としては何の気なしに発言をしていても、部下からすると、「良いアイデア以外は言っちゃいけないんだ。でも、合格点に達するほどのいいアイデアかは自信がないなぁ」と恐れられている、非常にハードルが高い問いかけになってしまっているために、会議が進まないのです。
(引用元:ITmediaエグゼクティブ|だから会議は意見が出てこない! 上司が言ってはいけない最大のNGワード)
もしあなたが会議やミーティングをまとめる立場になって「全然意見が出てこない……」「みんな下を向いていて消極的だな……」と感じているのなら、自分の言葉がみんなにプレッシャーを与えていないか、漠然とした質問をして困らせていないか、という点に注意しながら進行してみましょう。
*** 参加者全員が積極的に議論を交わし、スムーズな進行で確実に結果を出すような会議は非常にまれです。完璧な理想を思い描くのではなく、会社の規模やメンバーのキャラクターなどをしっかりと把握し、会議がより有意義なものとなるように意識してみましょう。
(参考) 会議HACK!|「3ステップ会議術」から紐解くダメな会議の解決法【スマート会議術 第3回】 PRESIDENT Online|三流企業の“会議”が何も生み出さない理由 Lightworks BLOG|AppleやGoogleは会議も違う! 超有名企業の効率化対策5選 会議HACK!|博報堂は会議が多く、しかも雑談だらけ…。その理由は?【スマート会議術 第11回】 ITmediaエグゼクティブ|だから会議は意見が出てこない! 上司が言ってはいけない最大のNGワード