みなさんは、普段の生活において、語彙力が乏しいがゆえにいつも無難な表現に落ち着いてしまうといった経験はありませんか。自分の考えていることが的確に伝わらないと感じたり、はたから見ると崩れた言葉遣いだと思われてしまっていたりすることもあるかもしれませんね。
その原因の1つとして、「自分の扱える語彙幅が狭い」ことが挙げられます。そこで今回は、語彙を増やす習慣とその身につけ方についてお伝えします。
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ビジネスにおける、語彙を増やすメリット
語彙力のないビジネスパーソンは、仕事をする際に様々な場面で困ることがあるかもしれません。例えば、会議で発言をする場合を考えてみましょう。同僚の意見に対して「なるほど、納得しました」と言うことはできても、このセリフをより職位の高い人物に対して使うにはやや稚拙に感じられますよね。言葉の引き出しが豊富であれば、「確かに、〇〇さんのおっしゃる通りです」、「ごもっともです」など、その場に適切な表現を選択することが可能です。
また、明治大学文学部教授である齋藤孝氏によれば、語彙力があるかどうかはその人の得る生涯年収にも影響を与える可能性があるのだそう。生涯年収はどこに所属するかである程度決まることを考えると、就職の際にまず問われる言葉やコミュニケーションの力はかなり重要であると位置づけられるのです。
語彙を増やす習慣って?
あらゆる語彙は一朝一夕で身につくものではなく、日々の習慣の中で習得していくことが必要です。国語講師である吉田裕子氏は、言葉の知識には「認知語彙」と「使用語彙」の2つの段階があり、この2種類の語彙をバランス良く増やすことが知的な大人への近道であると伝えています。
「認知語彙」とは文章で見たときに何となく意味がわかるという程度の言葉の範囲のことであり、「使用語彙」は自分の発言や文章内で使いこなすことができる言葉の範囲を指します。
認知語彙は使用語彙の約3〜5倍ほどであると言われていますが、日常で運用できる言葉を増やすには、まず認知語彙の幅を広げなければなりません。とは言っても、心配することは全くありません。語彙力を伸ばすためのコツがちゃんとあるのです。
語彙を増やす習慣の身につけ方
では、どうすれば私たちは自身の語彙量を増加させていくことができるのでしょうか。具体的な方法をご紹介します。
1. 読書 認知語彙を増やすには、読書をすることがもっとも効率の良い方法だと言えるのではないでしょうか。あくまで新たな言葉を知り身につけることを優先するので、読むペースは気にしなくても問題ありません。
取り組みやすくするため、最初は自分の価値観と合った著者の本を読んでみましょう。ジャンルは問わず、小説や新書、ビジネス書など何でも構いません。今まで知らなかった言い回しを見つけたり、これまで間違って理解していた言葉の正しい使い方などを確認したりすることで、語彙量は格段に増加していきますよ。
2. 言葉の言い換え 言い換えができそうな言葉をwebサイトや辞典で調べるというやり方でも語彙を増やすことができます。例えば、相手にあるものについて「面白い」と伝えた時、それが「自分が見てワクワクできる」を意味する「面白い」なのか、「対象が興味深い」を意味する「面白い」なのかというニュアンスまでは分かりません。
細かいニュアンスを理解してもらう、また誤解を防ぐためには「ワクワクできる」、「興味深い」といったように別の言葉に置き換えられないかどうかを考えてみましょう。その際、類語辞典を用いると便利ではありますが、それぞれの言葉にどんな違いがあるのかということまで精査して、認知語彙から使用語彙への移行をスムーズにしてください。
3. 好きな文章の筆写 たくさんの言葉を知っているのと使いこなせるのとでは意味が違います。その点で、最近読んだ本や興味を持った新聞記事、斬新な広告コピーなど、自分の気に入った文章をノートに書き写すというのは使用語彙を増やすのにもってこいです。
漢字を覚える際、学習帳に何度も書いて練習したという方はきっと多いのではないでしょうか。作家の藤原智美氏は、それと同様にして、言葉を定着させるためには手で書くという身体的な運動を通して記憶に残すと良い、と言います。
たしかに、頭ではすっかり忘れていてもどういうわけか身体が覚えていたということはよく見受けられますよね。わざわざ思い出そうとせずとも自然と言葉を書ける段階になれば、きっと自分でも違和感なしにその表現を用いることができるようになるでしょう。
*** 語彙力を高めれば知性が磨かれます。その知性は使う言葉の端々に現れるもの。ぜひ意識的に語彙を増やしてみてくださいね。
(参考) 吉田裕子著(2017),『大人の語彙力が使える順で身につく本』,かんき出版 東洋経済ONLINE|「大人の語彙力」はなぜ急速に失われたのか NHK 解説委員室|「語彙力の強化」(視点・論点) PRESIDENT Online|表現力に乏しい、ボキャブラリーが貧困だ mamatenna|齋藤孝教授が語る【語彙力と生涯年収】の意外な関係