20代からの生活習慣で「脳」は変わります。若いからまだ大丈夫という考えは大間違いですよ。あとで「しまったー!」と青ざめないよう、今すぐ「健康な脳をつくる生活習慣」を始めましょう。最新の研究をもとに説明します。
20代からの食事が認知機能に影響
米国神経科学アカデミーの医学雑誌『Neurology』で、2019年3月6日に公開された研究によると、若いころから次に示すような食事をとることは、中年期の認知能力(思考力・記憶力を含む)の向上と関連するそうです。
- 豊富な「果物と野菜」
- 適度な「ナッツ類、魚、アルコール」
- 少なめの「肉、全脂肪乳製品」
この研究の参加者は2,621人。研究の開始時は平均年齢25歳で、その後、30年のあいだ追跡調査を行ったとのこと。
結果、地中海式ダイエット食(地中海沿岸諸国の料理)と、APDQSダイエット食(心臓の健康を考えた食事)は、認知機能の低下が少なかったそうです。一方で、高血圧予防のための食事療法アプローチ(DASH)は、認知能力の変化とは関連しなかったとのこと。
食事療法の種類
各食事療法と結果は以下のとおり。
【地中海式ダイエット(MedDiet)】→認知能力の向上と関連
〇:全粒穀物、果物、野菜、健康的な不飽和脂肪、ナッツ、マメ類、魚、を重視
△:赤身肉や鶏肉、全脂肪乳製品を制限
【APDQSダイエット(APDQS)】→認知能力の向上と関連
〇:果物、野菜、豆類、低脂肪乳製品、魚、適度なアルコール、を重視
△:揚げ物、塩味のスナック、甘いお菓子、高脂肪乳製品、甘い飲みものを制限
【高血圧予防のためのDASHダイエット(DASH)】→認知能力の向上と関連“なし”
〇:穀物、野菜、果物、低脂肪乳製品、豆類、ナッツ類、を重視
△:肉、魚、鶏肉、総脂肪量、飽和脂肪、お菓子、塩分を制限
アイルランド北部にあるクイーンズ大学ベルファスト校の研究開発者である Claire T. McEvoy 博士は、さらなる研究が必要だとしつつ、この研究結果から考えられる以下の可能性について述べています。
- 「適度なアルコール摂取」が中年の脳の健康にとって重要である可能性
- 「心臓にとって良い食事」に変えることが、思考力や記憶力を維持する方法になる可能性
研究結果と食事療法の内容を示し合わせてみると、魚を食べることも大切だといえます。
「座りっぱなし」と「朝食抜き」は脳をダメにする?
テレビを観るなら時どき動いてみる
また、アメリカのニューオーリンズで2019年3月16日〜18日に開催される第68回米国心臓学会議に向け、発表された研究では、テレビの視聴時間が短く、エネルギー豊富な朝食を食べている人々は、動脈のプラークと硬直が有意に少なく、心臓病や脳卒中になる可能性が低いことが示されたそうです。
ギリシャのコリンシアに住む、40歳から99歳までの幅広い一般市民2,000人を測定した結果、週にもっともテレビを見ている人は、もっとも視聴時間が少ない人と比較して、動脈にプラークの蓄積がある可能性がほぼ「2倍」だったのだとか。
アテネ大学の心臓病専門医である Sotirios Tsalamandris 博士は、この結果が「長期間の座りがちな行動を回避することの重要性を強調している」と述べています。たとえテレビの視聴時間が多少長くても、座りっぱなしでなければ、動脈の健康を維持できる、とも考えられるわけです。もちろんバランスボールに座りながらもおすすめです。
高エネルギーの朝食で健康な動脈に
さらに、Sotirios Tsalamandris 博士らの研究は、高エネルギーの朝食(毎日のカロリーの20%以上を占める)を食べた人は、ほとんど食べない(1日のカロリーの5〜20%)か、全く朝食を食べなかった(1日のカロリーの5%以下)人よりも、著しく健康的な動脈を持つ傾向があることを発見しました。
<動脈硬化の異常が見られた割合>
朝食を全く食べない人の15%
低エネルギーの朝食を食べている人の9.5%
高エネルギーの朝食を食べている人の8.7%
<より多くのプラークが頸動脈に見られた割合>
朝食を全く食べない人の28%
低エネルギーの朝食を摂取する人々の26%
高エネルギーの朝食を摂取する人々18%
参加者のほとんどが地中海式の食事をとっていたため、その他の食事パターンで、どう変換されるかは不明とのことですが、「1日の総カロリー摂取量の20%以上を占める高エネルギーの朝食をとることは重要」だと、Tsalamandris 博士は述べています。
ちなみに、高エネルギーグループで消費されている朝食用の乳製品(牛乳やチーズなど)は、心臓の健康に役立つ可能性があるとのこと。これは、 Claire T. McEvoy 博士が示唆した「心臓にとって良い食事に変えることが、思考力や記憶力を維持する方法になる」ということにも通じますね。
それに、健康な動脈で十分な血液を脳に送ることは、脳の進化にも大きく貢献するようです。
300万年前から脳への血流量は600%も増加
オーストラリア・アデレード大学による、2016年8月31日のプレスリリースによれば、「知性の進化は、脳への血液の供給に、より密接に関連している」とのことです。
アデレード大学とウィットウォーターズランド大学の研究者らが、300万年前の猿人類の化石にある、頭蓋底の2つの穴サイズから、人間の脳に流れる血液がどう変化したか計算した結果、脳の大きさは約350%増加し、脳への血流量は600%も増加していたとわかったそうです。
アデレード大学のプロジェクトリーダー Roger S. Seymour 名誉教授は、「わたしたちの脳が非常に知的になるためには、血液から酸素と栄養素を絶えずとらなければならない」と伝えています。
健康的な動脈は、脳の健康と進化を後押ししてくれるのです。
健康な脳をつくる生活習慣
これまでを踏まえ、20代から以下の習慣を心がけることが、進化する健康な脳をつくりあげていくと期待できます。
- 食事は豊富な果物・野菜、適度なナッツ類・魚・アルコールを。肉・全脂肪乳製品は控えめに。
- 朝食は、1日の総カロリー摂取量の20%以上を意識して、乳製品なども含めしっかりと食べる。
- テレビの視聴は、バランスボールに座るか、時おり立ち上がって足踏みしたり、筋トレしたり、体操したりしながら。
- パソコン作業は小まめに休憩を挟み、度々立ち上がり、動く機会を設ける。
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最新の研究とともに、健康な脳をつくる生活習慣のアイデアを紹介しました。ぜひ、今日から「脳活」を始めてくださいね!
(参考)
Medical News|Turning off the TV and eating energy-rich breakfast could lead to a healthy heart
Medical News|Good dietary practices in early adulthood can help preserve brain health in midlife
ACC.19 Scientific Session Home Page|Future Meetings
American Academy of Neurology|HEART-HEALTHY DIETS IN EARLY ADULTHOOD LINKED TO BETTER BRAIN FUNCTION IN MIDDLE AGE
Neurology|Dietary patterns during adulthood and cognitive performance in midlife
The University of Adelaide|Smarter brains are blood-thirsty brains