「プレゼンや商談が苦手。上手に話せるようになりたい……」
「話しているうちに、なぜかまとまりがなくなってしまう」
このように、伝え方に関する悩みをおもちではありませんか?
ビジネスシーンでは報連相やプレゼンなど、“伝える” 場面がたくさんあるもの。多くの場面でわかりやすくスマートな伝え方ができれば、周囲から一目置かれる存在になれることは間違いありませんよね。
そこで今回の記事では、わかりやすい説明で相手を動かすことに長けた、一流のコンサルタントたちが実践する伝え方に注目してみました。その3つのポイントをご紹介します。
【ライタープロフィール】
藤真唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。
1. 内容を「整理」して伝える
話をしている最中に「これも言っておいたほうがいいかも」などと、頭のなかでいろいろなことを考えてしまった経験はありませんか? 思考にとらわれて話がまとまらなくなり、「結局、伝えたいことが伝わらなかった……」と歯がゆい思いをした人もいるかもしれません。
マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、A.T. カーニーではヴァイスプレジデントを務めた籠屋邦夫氏は、「話の内容を整理」してから伝えるべきだと主張しています。なぜなら、「話す内容を整理して頭に入れておき、脳のメモリをフル活動させられれば、人は自分が思うより臨機応変な対応ができる」からだそう。(カギカッコ内引用元:THE21オンライン|マッキンゼー流「一瞬でつかむ」伝え方の極意)
たとえば、プレゼンテーションで頭が真っ白になってしまったり、会議で急な質問が出たりと、伝える場面では臨機応変な対応が求められることもしばしば。やむを得ず話が脱線することもよくありますよね。
そんなときでも、話すべき内容をあらかじめ整理さえしておけば、本筋に戻りやすいのです。説明が散らかって「結局、何を伝えたいの?」と言われてしまうことにもなりにくいはず。
では、どのように内容を整理するとよいのでしょうか。“相手が理解しやすいように” 整理するとよいのでは? と思った人もいるかもしれませんが、意外にもそれはよくないそう。
籠屋氏は「自分が理解できるように」内容を整理することが大切だと述べ、その意図を次のように説明します。
誰か特定の人に伝えることを考えながら整理すると、『こう言ったら、あの人はこう返してくる』などと余計な思考が入り、頭がこんがらがってくるからです。
相手のことを考えるのは、自分が話す内容をしっかり理解してからでも遅くはありません
籠屋氏自身は、プレゼンや講演の前に、「7・5センチ四方くらいの大きめの付箋」を使って思いついた内容を書いておき、ある程度たまったら「並べてみて整理する」というやり方をとっているそう。(カギカッコ内含む引用元:同上)
そのやり方にならって、筆者も伝える内容を整理してみました。「女性をターゲットにしたエナジードリンクの新商品企画を提案する」というテーマで話の流れをつくると、次のような紙面が完成しましたよ。
1枚の付箋につき、ひとつずつ伝えたい内容を書いて並べると、話の全体を俯瞰でき、流れを覚えやすいと感じました。
また、付箋を並べている途中で「この情報も伝えよう」と思ったことは、赤ペンで追記しました。大きめの付箋を使うことには、内容を追加しやすいという強みもあると言えるでしょう。
そして、付箋を並べながら話の流れと内容を可視化すると、自分自身だけでなく複数人でチェックしやすいというメリットもあります。伝え漏れも防げそうです。
プレゼンやスピーチなどでうまく伝えられない不安を感じている人は、ぜひ試してみてくださいね。
2. 言いたいことを「3つだけ」伝える
「『結局、何が言いたいの?』と言われたことがある」
「『もう少しまとめてから話して』と注意を受けてしまった……」
そんな人は、3つに絞って伝えるといいかもしれません。
マッキンゼー・アンド・カンパニー出身で『ゼロ秒思考』などの著書をもつ赤羽雄二氏によると、「自分でも何を伝えたいのかポイントが決まっていないとか、逆にあれもこれもと内容を詰め過ぎたり、自分に有利になるように演出しようとすると、どうしてもわかりにくく」なってしまうそうです。(カギカッコ内引用元:プレジデントオンライン|外資系コンサルタントが「今日は3点お伝えします」を口癖にしている本当の理由)
つまり、考えすぎやテクニックの詰め込みすぎには注意が必要だということですね。
そこで、赤羽氏は「『言いたいことを3つ言う』ことに徹する」ようすすめています。やり方は、あらかじめ「今日は3点お伝えしたいと思います」と言い、「第一に~」「第二に~」「第三に~」と順に伝えるだけ。(カギカッコ内引用元:同上)
今回は、「業務効率化について上司に提案する」という想定で考えてみましょう。
【NG例】
「本日は、業務効率化に向けた案を提案します。業務効率化のためには、デジタルツールの活用や、重複作業の見直しと削減などが必要です。業務効率化には、業務の進行状況を把握しやすくしつつ、不要な作業をカットすることが不可欠。一方で、こまめに従業員からのフィードバックを聞くことも重要で……」
この伝え方だと、話し手の案がなんなのかわかりづらいですよね。これを3つに絞って話すと、次のようになります。
【OK例】
「本日は、業務効率化に向けた案を3点お話しします。第一に、デジタルツールの活用です。第二に、重複作業の削減です。第三に、従業員からのフィードバックを聞くことです」
3つに絞ることで、話の要点がわかりやすくなります。また、冒頭に「3点伝える」と前置きをしてから1つずつ伝えていくことで、聞き手に「結局、何が言いたいんだろう?」「いつ終わるんだろう?」と疑問を抱かせずにすむはず。
つい話が長くなってしまうという人は、3つだけ伝えることを念頭に置いてみてくださいね。
3.「数字」で根拠を示す
上司から仕事の進捗を聞かれたとき、あなたはどのように答えていますか?
「ちょっと遅れています。でも、頑張って納期に間に合わせます!」と、数字を使わずに返してしまう人は要注意。相手が必要としている情報を、正確に伝えられていない可能性があります。
ボストン コンサルティング グループ、ローランド・ベルガーで経験を積んだ経営コンサルタントの斎藤広達氏は、「数字で話す」ことをすすめるひとり。「会話の中に数字を効果的に用いることで、伝わり方は大きく違ってくる」と語ります。(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|「ネガティブな数字」には妙な説得力がある理由)
たとえば、先の例のように上司に進捗を聞かれた場合。数字を使うと、次のように答えられます。
「進捗は60%で、予定していたタスクが2件間に合っていません。納期が4日後なので、スケジュールを調整して優先的に進めていこうと思っています」
このように「達成率60%」「納期が4日後」などと具体的な数字を使うと、主観による認識のズレが起きにくくなるでしょう。さらに、報告を聞いた上司が、必要に応じてサポートする人を加えたり納期を再検討したりと、次の行動を起こしやすくなるはず。
また、意外な効能として「数字をスラスラ使って話すと、すごい人(=ちゃんと考えている人)と思われる」とも述べる斎藤氏。(カギカッコ内引用元:THE21オンライン|指示が常にあいまい…「数字で話せない」会社のお偉いさんたちの大問題)
たしかに、上記のように数字を使った説明を受けると、その人に対し「自分の業務をきちんと考えて進めている人」や「進捗状況をちゃんと把握している人」といったポジティブな印象を抱きますよね。
ビジネスシーンでの会話では、数字で示すことのできる内容があればぜひ使ってみましょう。
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伝え方がうまくなれば、仕事のやりやすさも周囲からの評価もアップするはず。ぜひ、コンサルタントたちがやっている伝え方を意識してみてください。
THE21オンライン|マッキンゼー流「一瞬でつかむ」伝え方の極意
プレジデントオンライン|外資系コンサルタントが「今日は3点お伝えします」を口癖にしている本当の理由
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