未達成の項目が並んだ「やることリスト」は、少しプレッシャーを感じてしまうリストかもしれません。しかし、「できたこと・やったことリスト」の場合は、どんなに些細でも自分の “手柄” を並べたようなもの。自信がついて、仕事の生産性まで上げてくれるそうですよ。
そこで、最近すっかり自信をなくしていた筆者が、「できたこと・やったことリスト」をつくり昨年を振り返って、自己肯定感を高めた状態で【新年】を迎えてみました。
まずは、その多大な効果から説明します。
変化と自信を生む「できたこと・やったこと」の記録
ITを使った人材教育を手がけてきた永谷研一氏が、行動科学や認知心理学をベースに、延べ1万2,000人以上の行動実践データを検証・分析したところ、ほんの小さな「できたこと」が、とても「大きな変化」につながっていくとわかったそうです。
「できないこと」ばかりを気にしても、「自分はダメだなぁ」と落ち込んでしまうだけ。自分の「できたこと」に注目してこそ、人は変われるのだとか。
また、メンタルトレーナーの森川陽太郎さんは、「やったことリスト」でOKポイントを貯めるようアドバイスしています。 森川陽太郎氏いわく、「成功体験や “できた” という感覚の積み重ねが自信につながる」とのこと。
やることリストの場合、「今年こそは3か国語以上を話せるようになる」「今年こそ年間100冊は本を読む」となりますが、そこまでハードルを上げず自分のOKラインを決め、たとえば
- 「去年は英語を勉強し始めた(からOK)」
- 「去年は月に1冊は本を読んだ(からOK)」
などと、自分のOKラインをクリアしたものを、「やったことリスト」に記録していくわけです。すると、無意識の領域にある感情の “できた感” や自己肯定感に気づけるのだそう。これが、同氏のいう “OKポイントを貯める” ことです。
自分の手柄を認めれば生産性も上がる?
「I Done This(私はこれをやった)」は、毎日の進捗を追跡、共有できるアプリ。このアプリをつくったジャネット・チョイ氏とウォルター・チェン氏は、「できたこと・やったことリスト」をつくることで、
- 自分のやったことを手柄として認めることができる
- ほとんど注意を向けていなかった成果も把握できる
と説明しています。
そんなチョイ氏らのコメントを紹介したGristの編集者(元Slateの編集者)、 L・V・アンダーソン氏には、ひどく自信が持てない時期があったそう。責任ある編集の仕事に就く資格など、自分にはないと思い込んでいたのだとか。
しかし、やったこと(自身が担当した記事)をすべて記録するようになり、自己評価の低さを克服できたといいます。自分がつくった記事がずらーっと並んだリストを見て、自分に資格がないなどと思う余地がなくなったからです。おかげで自信が生まれ、生産性も向上したとのこと。
それに、プレッシャーを感じる「やることリスト」とは違い、「やったことリスト」をつくる行為にプレッシャーや不快感は無縁です。むしろリストを更新するたびに満足感を味わえるとのことなので、非常に継続しやすい習慣だといえますね。
「できたことノート」のやり方
永谷研一氏が提唱する、「できたことノート」の手順は、次のとおりとてもシンプル。
- その日の「できたことをメモ」
- 週に一度、そのなかからひとつ選び「できたことを振り返る」
2番目で選ぶのは何でもOK。直感で選んでもいいとのことです。また、書くのは白い紙でも、パソコンでも、スマートフォンでもいいそうです。
ちなみに、振り返りは週に一度、次の質問4つに答えるかたちで行ないます。
- 【詳しい事実】――具体的に何があったの?
- 【原因の分析】――なぜそれができたの?
- 【本音の感情】――今、素直にどう感じる?
- 【次なる行動】――明日からどんな工夫をする?
「できたことをメモ」するのはもちろんのこと、「できたことを振り返る」のも大切なのだとか。なぜならば、振り返りは「内省」になるからです。
自分が考えたことや言動を振り返り、次につなげていく「内省」は、ビジネスにおいて非常に重要なことだといわれています。自分に問いかけ、自分が目指すもの、望むものを明らかにして、正しく進んでいるか振り返ってこそ、確実にキャリアを築いていけるからです。
これは、永谷氏がいう「できたことノート」の “すごいところ” に通じます。ノートを書き続けることで、自然と新しい目標が見つかっていくのだとか。
では、筆者もやってみましょう!
ただし、今回は永谷氏の「できたことノート」を参考にしつつも、1日ぶんではなく「昨年中にできたこと」を書き、振り返ってみます。それに加え、 L・V・アンダーソン氏にならい、自分が昨年中に書いた記事のリスト=「昨年中にやったことリスト」をつくってみます。
エクセルで「昨年中にやったことリスト」をつくってみた
まずは、昨年中に筆者が書いた記事を、ずらーっとエクセルに記録してみました。ただ書き出すだけで何か効果があるのかしら? と半信半疑でやってみたところ――どこかで聞いたことがあるセリフですが、思わず自分で自分を褒めたくなりましたよ。
このリストが多いか・少ないか、身が詰まっているか・いないかは別として、紛れもなくこれらすべて、自分がやったことなのだと実感できたからかもしれません。
「昨年中にできたこと」を手書きしてみた
次に普通のA4ノートを使い、手で書いていきます。
永谷氏が提唱する1日の「できたことノート」のフォーマットを参考にしつつ、昨年1年間ぶんなので線を引いて12分割し、こんな感じに書いてみました。
ひととおり書けたら、次は振り返り(内省文)です。
筆者が選んだのはこちら。
先述した永谷氏の方法にならい、この内容について以下4つの問いかけに答えていきます。
- 「具体的に何があったの?」
- 「なぜそれができたの?」
- 「今、素直にどう感じる?」
- 「今年からどんな工夫をする?」
すると……、なるほど最後の問いかけで、新たな目的や目標が見つかります……!
「できたこと・やったことリスト」をやってみた感想
今回やってみて、ただひたすら昨年中にやったことをリスト化するだけでも、自らの価値や存在意義を肯定できると実感しました。
やったのは、淡々とエクセルに記録するだけのこと。それで自己肯定感が高まったうえ、物理的にも記録でき、今年も頑張ろう(記録を増やそう)と意欲がわくのですから、時間がかかってもやる価値は大いにあります。
また「昨年中にできたこと」を書き、自分に問いかけて内省することは、次の行動を強く後押ししてくれます。
評判の良かった商品・サービスをよく分析し、次のアクションにつなげていく行為に似ているかもしれません。分析して納得し、満足感を得て終わるのではなく、「次はどうする?」と自分に問いかけ、自ら書き出してみると、本当にそれが次の行動につながるのです。
つまり、これは「アファメーション」ともいえます。
タイムマネジメント・コーチングコーチの滝井いづみさんによれば、アファメーションとは、潜在意識を利用した自己暗示のことで、目標達成に役立つそうです。
永谷氏が示した、内省の最後の問いかけ――「明日・今日・来年・今年からどんな工夫をする?」に答えようとすると、必然的に「〇〇できたから、今度は〇〇をやってみる」「〇〇に挑戦してみたい」などといった建設的かつ肯定的な文章になります。
滝井いづみさんいわく「脳は否定形の言葉を認識できない」とのこと。だからこそ肯定的で、ワクワクするような感情をともなう言葉のほうが、潜在意識により伝わるのだとか。
こうしてまんまと自己暗示され、生産性が高まっていくわけですね……!
***
自己評価の低い私が、昨年の「できたこと・やったことリスト」をつくってみました。感じた効果は、
- 自己肯定感が高まる
- 意欲がわく
- 次の目的・目標ができる
- 行動力が生まれる
でした。ぜひお試しください!
(参考)
森川陽太郎(2014),『絶対的な自信をつくる方法: 「OKライン」で、弱い自分のまま強くなる』, ダイヤモンド社.
永谷研一(2016),『1日5分 「よい習慣」を無理なく身につける できたことノート』, クロスメディア・パブリッシング(インプレス) .
滝井いづみ(2014),『「時間がない! 」から抜け出すちょっとした方法 ――“1日1習慣"であなたの仕事が変わる!』, 大和出版.
ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト|やることリストよりすごいやったことリストの効用
カオナビ人事用語集|内省とは?(意味) 反省との違い、ビジネスが成功する内省力トレーニング方法
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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