何かトラブルが起きたとき、まわりに自然と人が集まってきて、「大丈夫?」「手伝おうか?」と手を差し伸べてもらえる――そんな、愛される人っていますよね。孤立無援で奮闘することが多い人から見れば、うらやましいものでしょう。
ではなぜ彼らは、いつも周囲に助けてもらえるのでしょうか? 天性の魅力や才能? そればかりとは限りません。彼らが日頃なにげなくやっている、ちょっとした振る舞いや発言を学べば、あなたも自然と協力を集められる可能性があるのです。
- 仕事が片づかず同僚に助けを求めても、それとなく断られてしまう……。
- 上司にアドバイスを求めても、「自分で考えて」と一蹴されてしまう……。
そんなお悩みを抱えているなら、以下にご紹介する「自然と協力を集められる人」の3つの特徴を参考にしてみてください。
特徴1. まず「自分から」周囲の人を助ける
まず重要なのは、「自分から」周囲の人を助けてあげること。
「情けは人のためならず」ということわざが教えるように、「人に親切にすれば、その相手のためになるだけでなく、やがてはよい報いとなって自分にもどってくる」のが世の常です。(引用元:コトバンク|情けは人の為ならず)
きれい事に聞こえるかもしれませんが、この教えは心理学的にも裏づけられています。有名な「返報性の法則」です。アメリカの心理学者ロバート・B・チャルディーニ氏は、返報性の法則について以下のように解説しています。
これは「他人がこちらに何らかの恩恵を施したら、自分は似たような形でそのお返しをしなくてはならない」というルールです。(中略)この返報性のルールがあるために、親切や贈り物、招待などを受けると、そうした恩恵を与えてくれた人に対して将来お返しをせずにはいられない気持ちになるのです。
(引用元:ロバート・B・チャルディーニ著, 社会行動研究会訳(2014), 『影響力の武器[第三版] なぜ、人は動かされるのか』, 誠信書房.)
人は自分に何かを与えてくれた人に「恩返しをしたい」という心理を抱くもの。つまり周囲の人からの協力を集めたいなら、常日頃、まずは「自分から」人を助けてあげることを心がけるべきなのです。
たとえば、
- 山積みの仕事に追われて大変そうな上司に「何かできることがあれば、手伝わせてください」と声をかけてみる。
- 失敗して落ち込んでいる様子の同僚に、励ましの言葉をかけてみる。
——こういった小さな親切を日頃から積み重ねておくことで、いざというときに周囲から助けてもらいやすくなるはずです。
特徴2.「教えてあげたくなる人」になる
物事を教わる際の「教わり方」にも気をつけましょう。
初めての仕事のことで上司に助けてもらう。仕事の仕方を先輩に教えてもらう。そんな場面で、「この人になら教えてあげたいな」と思ってもらえるような態度を心がけるのです。
教育コンサルタントの塚本亮氏は、人から相談を受けることが多いという立場から、「『教えてあげたくなる人、サポートしてあげたくなる人』と『何だか教えたいと思えない人』の2つのタイプがいる」と言います。(引用元:PRESIDENT WOMAN Online|なぜか「いつも誰かに助けてもらえる人」に共通する3つの行動)
塚本氏によると、「教わり上手」の特徴は以下。
- わからないことをわからないと言えて、素直に質問ができる
- アドバイスをもらったら、つべこべ言わず、まずやってみる
- 試してみてどうだったかの報告をする
(引用元:同上)
また、『なぜあの人はいつも助けてもらえるのか』著者で実業家の故 藤巻幸大氏は、「可愛がられるエリートの3要素」として、イギリスのあるエリート校の教育方針を紹介しています。
(1)勇敢であれ
(2)楽天的であれ
(3)ムキになるな
(引用元:PHPオンライン衆知|藤巻幸大・職場で「可愛がられる」ひとが心がけていること)
このうち、特に「勇敢であれ」「ムキになるな」は、塚本氏の挙げる「教わり上手」の特徴と通じるものがあるのではないでしょうか。
藤本氏いわく、「可愛がられる人こそが、いろんな人を味方につけ、力を貸してもらうことができる人」(引用元:同上)。上司をはじめ周囲から、「この人に教えてよかった」「また教えてあげたい」と思われ、さらにいろいろな面でサポートしてもらえるのは、塚本氏や藤本氏が説く上記のポイントを実行できる人なのです。
反対に、もしも以下のような言動をとってしまうと、その先協力を得にくくなってしまう可能性が。たとえばプレゼンの準備をしているときに……
- 「能力が低い」と思われるのが恥ずかしくて、不明点があっても質問することができない。
- 上司からプレゼン資料について助言をもらっても、「でも、私のつくった資料だって見やすいはず……」と内心ムキになる。
- せっかくアドバイスをもらっても、その後連絡をしない。
――こんな人は、「もう教えたくないな」と思われて、いざというときにサポートしてもらえなくなってしまうのです。ぜひ、「教わり上手」な振る舞いを身につけましょう。
特徴3. あえて「弱み」を見せる
職場でいい協力関係を築くには、できるだけいい仕事をして、自分を認めてもらうことが大切なはずだ――そう信じて、完璧に仕事をこなそう、少しでも自分を優秀に見せようと頑張る人は多いかもしれません。
ですが、時にはあえて「弱み」を見せることも大切です。
ビジネスコンサルタントの山﨑武也氏は、「自分が強者であることを喧伝するのは、自分にとっては不利益になる」と説明します。「強者には助けが必要でないと思」われるからです。場合によっては「人々の妬みを買う」おそれもあるとのこと。(引用元:山﨑武也(2016),『なぜあの人には「味方が多い」のか 一流の気くばり仕事術』, PHP研究所.)
これでは、何かあったときに助けてもらえるどころか、「優秀なんだから自分で対処できるでしょ」と思われてしまいますよね。
そこで山﨑氏は、こう述べています。
(一般的に)弱者に対しては(中略)自分に余裕があれば、助けの手を差し伸べようとする。世の中をつつがなく渡っていこうと思ったら、強がるよりも弱いふりをしていたほうが、人とのつながりは増える。
(引用元:同上 カッコ内は編集部が補った)
加えて、特徴1でご紹介した「返報性の法則」には、「人は弱みを見せられると、相手にも弱みを開示しやすくなり、関係性が強まっていく」という面もあるそう(心理学者・晴香葉子氏の解説。引用元:PRESIDENT Online|自分の弱みを見せると相手も弱み開示する)
まとめると、自分の弱みや欠点を正直に見せることで、困ったときに助けてもらえるような関係性を築きやすくなるということなのです。
たまには、自分がしでかした失敗談や、過去のカッコ悪いエピソードなどを、笑い話として打ち明けてみてはいかがでしょう。相手は「この人にもダメなところがあるんだな」と安心し、困ったときに手を貸してくれやすくなるでしょう。より仲が深まって、人間関係が円滑になり、仕事がうまくいく可能性が高まるはずです。
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以上の3つが「自然と協力を集められる人」の特徴。「周囲の人になぜか助けてもらえない」と感じている人は、ぜひ上記の振る舞い方を心がけてみてください。
(参考)
コトバンク|情けは人の為ならず
ロバート・B・チャルディーニ著, 社会行動研究会訳(2014), 『影響力の武器[第三版] なぜ、人は動かされるのか』, 誠信書房.
PRESIDENT WOMAN Online|なぜか「いつも誰かに助けてもらえる人」に共通する3つの行動
PHPオンライン衆知|藤巻幸大・職場で「可愛がられる」ひとが心がけていること
山﨑武也(2016),『なぜあの人には「味方が多い」のか 一流の気くばり仕事術』, PHP研究所.
PRESIDENT Online|自分の弱みを見せると相手も弱み開示する
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。