学習したことが覚えられない、集中できない、仕事に活かせない。勉強の悩みは尽きないものですよね。今回は、学ぶ人にとって超重要な「7つの能力」を高める方法をご紹介します。あなたの勉強の悩み、ぜひ解決しましょう。
1. 集中力を鍛えるなら「感情を言語化する」
机に向かっても勉強に集中できない。そんな人は、感情に飲み込まれてしまっている可能性があります。
ベストセラー『ヤバイ集中力』著者の鈴木祐氏は、集中力を鍛えるには、感情をコントロールするスキルを鍛えるべきだと言います。なぜなら、なんとなくモヤモヤしていたり、嫌な気持ちを抱えたりしたまま勉強に取りかかっても、その感情に支配され、勉強に集中できないからです。欲求や感情をつかさどる脳の大脳辺縁系は、瞬時に身体を乗っ取るほど強い力をもつため、その働きをコントロールすることが極めて重要なのだとか。
そこで鈴木氏が提案するのが「感情の言語化」です。たとえば「机に向かったけど勉強が面倒になった」という場合。鈴木氏いわく、言語化のポイントは「引っかかり」の所在を探し出すこと。「どの点が面倒なのか?」を考え、「今日取り組む範囲の内容が難しそう」という具合に、自分の気持ちを言葉で表すのです。このように感情を客観的に観察すると、しだいに気持ちが収まって集中できるようになるとのことですよ。
2. インプット力を鍛えるなら「3つに絞る」
「今日のセミナーはひとことも聞き逃さないぞ!」と意気込んだのに、時間が経つと全然内容を覚えていない……。そんなときは、意気込みが逆にマイナス作用を及ぼしているかもしれません。
精神科医の樺沢紫苑氏によると、脳が一度に記憶して処理できる情報は3つまで。それ以上になると、脳の機能がパンクして逆に情報を忘れてしまうのだそう。「一言一句をものにするぞ」と意気込むほど、脳は学べない状態になってしまうのです。
そこで樺沢氏は、インプットの量を脳の機能に即して「3つ」に絞り込むことをすすめています。常に3つにフォーカスして情報を得ようとする姿勢を続けると、「3+3+3……」というように結果的に多くのインプットが可能になるのだとか。たとえばセミナーでも、「まずは3つ何かをもち帰れば十分」という姿勢で聞くほうがよさそうですね。
3. 習慣化力を鍛えるなら「3種類の目標を立てる」
勉強が3日坊主で終わりがちな人は、目標の立て方を見直してみましょう。
習慣化コンサルタントの古川武士氏によると、勉強の習慣化には、以下の3つの目標設定が効果的だそう。
- 結果目標:得たい結果の目標。何を、いつまでに遂行するか。
(例:2020年中に○○の資格をとる) - 状態目標:得続けたい心の状態。数値も期限もなし。
(例:毎日楽しく過ごしたい) - 行動目標:上記を達成するための行動。
(例:結果目標に対して→毎朝6時から1時間勉強する。
状態目標に対して→家に帰ったら30分以上遊ぶために毎日18時に退社する)
古川氏によると、習慣化に失敗するのは結果目標しか決めないから。結果目標だけでは、結果にとらわれすぎて過程の楽しさを見失うため、行動が続きません。ですが、状態目標を設定すれば、結果にとらわれすぎるのを防げます。上記の例で言うなら、「楽しく過ごしたい」からこそ、勉強も「楽しむ」という姿勢を崩さずにいられる、つまり「勉強を継続できる」ということ。勉強を習慣化したいときは、目標の立て方をよく意識してくださいね。
4. 地頭力を鍛えるなら「WHY型の好奇心をもつ」
勉強した内容から得られる気づきを増やしたい、と思う人は地頭力を鍛えましょう。
ビジネスコンサルタントの細谷功氏によると、地頭力とは「情報を活かして、自分で答えを導き出す力」のこと。地頭力を鍛えるには「WHY型の好奇心をもつこと」がよいトレーニングになるのだそう。あらゆるものに「なぜ?」と理由や背景を問いかけ、思考を深めていくのです。たとえば、
集中力を鍛えるには感情コントロールのスキルを磨けばいい
→なぜ?
→脳内の大脳辺縁系が集中を邪魔するから
→なぜ?
→大脳辺縁系は感情をつかさどっていて、簡単に理性を押し流すから
というように、自分で調べながら考えるプロセスを経ることで、情報をうのみにして終わらせない習慣が身につきます。本を読んだときやセミナーを受けたときにも、「なぜ?」と思ったことを突きつめて調べていけば、得られる気づきを増やすことができそうです。
5. 記憶力を鍛えるなら「覚えたことを人に話す」
勉強して覚えたつもりでも、すぐに忘れてしまう。そう悩んでいる人は、覚えたことを人に話して記憶を強固にしましょう。
脳研究者の池谷裕二氏によると、記憶は、自分の経験が絡んだ「経験記憶」と知識や情報に関する「知識記憶」の2種類に分けられるそう。このうち、自由に思い出せるのは経験記憶のほう。知識記憶は、十分なきっかけがないと思い出せません。池谷氏いわく、勉強した内容が思い出せないのは、知識記憶のままになっているから。それを経験記憶に変えてしまえば、長く覚えていられると言います。
そこで池谷氏がすすめるのが、覚えたことを人に話すという方法。勉強した内容が「○○さんに話した」「図に書いて説明した」という経験と結びつき、知識記憶から経験記憶への移行が図れるのです。たとえば、自分の仕事と直結する分野の勉強をしたあとなら、職場で話題にしやすいはず。話すことで相手から新しい情報を得られるなどの、二次的な効果も期待できそうですよね。
6. 読解力を鍛えるなら「音読」
本や資料を読んですばやく要点をつかみ取ったり、情報の真偽を判断したりするのに欠かせない「読解力」。明治大学教授の齋藤孝氏によれば、読解力を磨くには「音読」が効果的なのだそう。
齋藤氏は、読解力の低い人は、一部の単語だけを拾いながら読んでいく「飛ばし読み」が癖になっていると述べます。重要な単語だけ拾えれば効率よく読めますが、重要な部分を見落としたり、自分で勝手にストーリーを展開したりしてしまう「悪い飛ばし読み」が癖になっていると、文章を正しく読解できません。
そんな悪い飛ばし読みを矯正するのに効果的なのが音読。なぜなら、声に出して読む際には、必然的に一言一句を意識することになるからです。たとえば、本のなかでうまく理解できない部分に行き当たったら、その部分だけでも音読してみてください。正しい読解の助けとなることでしょう。
7. 新しい知識を学ぶ力を鍛えるには「知っていることを書き出す」
まったく知識のないジャンルの勉強をするときは、理解が難しく時間もかかるものですよね。
メンタリストDaiGo氏によれば、ハーバード大学の研究で、これから勉強することについて自分がすでにもっている知識を事前に書き出すと、新しい情報への理解が早くなることが確認されたそうです。その理由は、人間の脳には、新しい知識を古い知識に結びつけて覚える仕組みがあるからだとか。
たとえば「グラフィックレコーディング」という技法を学ぶために本を読むとします。先にお伝えしておくと、グラフィックレコーディングとは、リアルタイムで対話や議論の内容を絵や図に落とし込んで記録していく技法のこと。このとき、まず以下のように知っていることを書き出します。
- グラフィックの訳は「絵や図」
- レコーディングの訳は「記録」
そのあとで本を読むと、「なるほど、ホワイトボードに絵や図で記録をとりながら、議論が進行していくイメージか」などと、先にもっていた知識と新たな知識が結びつき、理解しやすくなるのです。
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今回ご紹介したことをまとめます。
このなかから、何かひとつでも日々の学びに役立てていただければ幸いです!
【ライタープロフィール】
月島修平
大学では芸術分野での表現研究を専攻。演劇・映画・身体表現関連の読書経験が豊富。幅広い分野における数多くのリサーチ・執筆実績をもち、なかでも勉強・仕事に役立つノート術や、紙1枚を利用した記録術、アイデア発想法などを自ら実践して報告する記事を得意としている。
(参考)
THE21オンライン|ノーベル賞研究を応用した「集中力」を一瞬で高める秘訣
樺沢紫苑(2019),『学び効率が最大化するインプット大全』, サンクチュアリ出版.
PRESIDENT Online|「今年こそ」“数値”目標を立てた人ほど、グダグダになる理由
細谷功(2007),『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』, 東洋経済新報社.
池谷裕二(2011),『受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法』, 新潮社.
齋藤孝(2002),『読書力』, 岩波書店.
メンタリストDaiGo(2019),『最短の時間で最大の成果を手に入れる 超効率勉強法』, 学研プラス.
清水淳子(2017),『Graphic Recorder ―議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書』, ビー・エヌ・エヌ新社.