夏季休暇。ビーチでの日光浴、家族との団欒、旅行…リラックスのイメージが強いこの期間。しかし、キャリアに熱心なビジネスパーソンにとって、この貴重な時間は自己成長の絶好のチャンスでもあります。
「せっかくの休みだから、思いっきり楽しみたい」 「でも、このまま過ごしていいのだろうか…」
こんな葛藤を抱える方も多いのではないでしょうか。
じつは、夏季休暇の過ごし方ひとつで、9月以降の成長曲線が大きく変わってくるのです。
本記事では、「夏季休暇に伸びる人」と「そのまま9月を迎える人」の決定的な違いを探ります。目的意識、時間管理、学習姿勢…。その違いを知ることで、あなたの夏季休暇を、リラックスと自己投資が両立する充実した時間に変えるヒントが見つかるはずです。
さあ、学び続けるビジネスパーソンの最適な夏休みの過ごし方、その秘訣に迫っていきましょう。
【ライタープロフィール】
Shinya
大学では経済学を専攻。集中力があり、長時間、長期間にわたって勉強し続けることが得意。現在は、資格試験に向けて効率的な勉強法の情報を収集中。心理学にも関心があり、コミュニケーション力の向上を目指してさまざまなメソッドを学び、実践している。
目的意識の違い
「夏季休暇に伸びる人」の特徴は、休暇前から明確な目標を設定していることです。彼らは休暇を自己投資の絶好の機会と捉え、時間を最大限に活用しようとします。事前に計画を立てることで、限られた時間を効果的に使えるのです。この目的意識が、休暇後の成長につながります。
対照的に、「そのまま9月を迎える人」は、夏季休暇をただリラックスするための時間としか見ていません。リラックスすること自体は悪くありませんが、具体的な目標がないことが問題です。この目標設定の有無が、休み明けの成果に大きな差をもたらすのです。
では、前者のようにチャンスをムダにしないためには、どのように目標を立てればよいのでしょう?
そこで活用したいのがSMARTの法則とよばれるもの。
・Specific(具体性)
・Measurable(測定可能)
・Achievable(達成可能)
・Related(関連性)
・Time-bound(期限つき)
といった5つの要素からなり、達成可能な目標を具体化し、行動を起こしやすくしてくれる目標設定のポイントです。
(参考およびカギカッコ内元:GLOBIS学び放題×知見録|成功する目標設定5つのポイント「SMARTの法則」とは?【フレームワーク解説/意味・具体的な使い方/ゴール設定】)
わかりやすい例を挙げましょう。たとえば最大9連休となる夏季休暇中に、新しいプログラミング言語を習得するとします。その際にSMARTの法則を活用した場合――
- 具体性:Pythonの基礎を学ぶ
- 測定可能:9時間のオンラインコースを完了する
- 達成可能:1日1時間、9日間で完了
- 関連性:データ分析部門の目標達成に活かせる
- 期限つき:夏季休暇内9日間で完了する
となるわけです。
上記の短期目標は、たとえば「Pythonの基礎を “習得” する」「機械学習の理論と実践」といった中期目標、「AI開発の実現」といった長期目標とのバランスをとることで、より現実的になるはずです。
このように決めてしまえば、「勉強しなきゃなぁ」などと常に気にかけるイヤな休日を過ごすことなく、学習時間以外の空いた時間を思いっきり楽しめるのではないでしょうか。自己成長できるうえリフレッシュもでき、一石二鳥ですね。
時間管理の違い
また、「夏季休暇に伸びる人」は、意図的な休憩などを含む、ムダのない時間管理を心がけている可能性があります。たとえば、こんな感じです。
- 朝7時に起きて軽い朝食
- そのあと3時間は資格の勉強に集中
- 終わったら1時間ほど運動
- そのあと好きなことをする
集中する時間と、心身を開放する時間、どちらに偏ってもいいことはありません。両者をしっかりと確保することが、休暇中における学びの生産性を高めるはずです。
一方で、「そのまま9月を迎える人」は、時間管理もせずダラダラと時間を過ごしてしまうことが多いかもしれません。そうならないためにも、タイムブロッキングを取り入れてみることをおすすめします。
タイムブロッキングとは、勉強や仕事に集中する時間以外に、休憩や運動、個人の時間などをしっかりと確保し、心身を良好にして生産性を上げようとする時間管理術のこと。先に挙げたスケジュールの例ならこうなります。
こうやって時間をブロックしておけば、勉強に集中する時間にほかの物事が入り込んで中断されることも、逆に予定をオーバーしてしまうことも少なくなるわけです。
(参考元:STUDY HACKER|仕事と勉強の両立を目指す人におすすめ! タイムブロッキングを取り入れた勉強法とは?)
そして、これと同時にお伝えしたいのが、 休んで気力や体力を回復させながら、水面下で脳を働かせる方法です。博士号をもつコンサルタントの Alex Soojung-Kim Pang 氏によれば、多くの著名な作家は以下のアドバイスに従ってきたのだとか。
“always stop when you know what is going to happen next.”
(次に何が起こるかがわかったら、常に作業を止めなさい)
じつはこれ、20世紀を代表するアメリカの小説家アーネスト・ヘミングウェイによるアドバイス。これには以下の理由があるそうです。
Stopping when you have a little energy left makes it easier to get started the next day. It also seems to prompt your subconscious mind to tackle work problems in the meantime
(エネルギーが少し残っているときにやめると、翌日取りかかるのが楽になる。またそうすることで、休んでいるあいだに潜在意識が、その仕事の問題に取り組むように促される)
(参考および英文引用元:Greater Good Science Center|How Resting More Can Boost Your Productivity ※和訳は筆者が補った)
たとえば、段落最後の一文を書き残すなど、意識的に作業をやり残すことで、休息をとりながらも思考を継続させることができるわけです。
これは、達成したことより、達成できなかったことをよく覚えている現象、ツァイガルニク効果にも当てはまるかもしれません(参考元:『日本の人事部』|ツァイガルニク効果)
学びに集中する時間を設け、それでいて時間がきたらあっさりと手を止めて、そのあとの時間を楽しく過ごすといいのではないでしょうか。
学習姿勢の違い
そして、「夏季休暇に伸びる人」は、休暇中に自分が関わる・関わろうとする業界の最新トレンドをキャッチアップするため、積極的に情報収集を行なうはずです。たとえば、業界誌やニュースサイトのチェック、オンラインセミナーへの参加などが挙げられます。
さらに、成長する人は学んだ内容を実践し、フィードバックを求めることにも熱心です。夏季休暇中に専門家のアドバイスを得るために、普段とは異なる環境にも積極的に足を運ぶでしょう。
対照的に「そのまま9月を迎える人」は、現状の知識に満足し、新しい情報やスキルの習得に消極的です。この姿勢の違いは、長期的なキャリアの成功に大きな影響を与えるに違いありません。
2018年(平成30年)の内閣府による報告「人生100年時代の人材と働き方」には、自ら学習する人の年収がアップしているとの報告があります。
2年後では約10万円、3年後では約16万円でそれぞれ有意な差がみられている。自己啓発の効果はすぐには年収には現れないが、ある程度のラグを伴いつつ効果が現れると考えられる。
(引用元:内閣府|第2章 第2節 人生100年時代の人材育成 ※自己啓発は学習を指す)
学習する姿勢が違うと、夏季休暇の過ごし方が大きく違ってきますが、未来も大きく変わってしまうようです……。
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積極的に学び、実践して、夏休みと未来の充実を目指しましょう!
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