なぜか部下がついてこない残念なリーダーは「フォロワーシップ」の重要性に気づいてない。

組織の8割はフォロワーシップで決まる01

チームを率いる立場にあるみなさん。リーダーシップを持ってぐいぐい引っ張ったつもりなのに、部下やメンバーが思うようについてきてくれず、チームとして成果が出せなかった……という経験をしたことはありませんか? それは、あなたが部下やメンバーの「フォロワーシップ」をうまく引き出せなかったことに原因があるかもしれません。

フォロワーシップとは、部下が自主的な判断や行動により上司を支援すること。「組織の8割はフォロワーシップで決まる」とまで言われるくらい、じつは非常に重要なものなのです。

どうすればフォロワーシップを引き出せるのか? リーダーがやるべきことを探ります

フォロワーは5つに分類される

「フォロワーシップ」という言葉は、カーネギーメロン大学(アメリカ)教授のロバート・ケリー氏が、著書『The Power of Followership』内で、上司の「リーダーシップ」を補完する概念として初めて用いました。

ケリー教授によれば、フォロワーシップを構成する要素は2つ。自分で考えて建設的な批判を行なう「批判的思考」と、積極的に仕事に取り組む「積極的関与」です。そして、それぞれの度合いによって、フォロワーは5つのタイプに分類できるとしています。

フォロワーシップ5つの分類

  1. 模範的フォロワー(批判的思考・高/積極的関与・高)
    理想的な状態です。常に自ら考えながら行動し、たとえ壁にぶつかっても才能をいかんなく発揮して積極的に物事に取り組みます。
  2. 孤立型フォロワー(批判的思考・高/積極的関与・低)
    エネルギーが、仕事そのものではなくチームを嫌悪する方向へ向かっているタイプです。批判的・建設的な思考はするものの、チームのために積極的に動こうとはしてくれません。
  3. 順応型フォロワー(批判的思考・低/積極的関与・高)
    「リーダーには服従することが義務である」と考えています。リーダーから与えられた仕事はそのとおりこなしてくれるので、リーダーにとっては扱いやすい反面、指示待ち人間というデメリットも。
  4. 消極的フォロワー(批判的思考・低/積極的関与・低)
    リーダーに頼りきりで仕事に対する熱意もありません。
  5. 実務型フォロワー(すべてが平均的)
    いい仕事はしたがるものの、自らすすんでチャレンジしようところまでは行きません。失敗を恐れる現実主義者タイプです。

言えばそれなりに仕事をしてくれる「順応型」や「実務型」は、上司にとっては比較的扱いやすそうな部下に見えますよね。しかし、 フォロワーシップに詳しい神戸大学大学院経営学研究科教授の金井壽宏氏は、このような「単に喜んでリーダーについていくだけのフォロワー」を問題視しています。なぜならば、リーダーの指示が誤っていたとしても、誰も正してくれないから。また、万が一リーダーが不在になった場合、チームが崩壊する可能性もあります。

同様に、「孤立型」が増えてしまっては、そもそも仕事が進んでいきません(※「消極的フォロワー」が増えるとどうなるかは言うまでもありませんが……)。

どうすれば、部下を「模範的フォロワー」へと引き上げていけるのでしょうか?

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部下のフォロワーシップを引き出す上司の行動とは?

たとえば、指示待ちが当たり前の部下に、いきなり「自発的に動いて、時には建設的な批判を行なってほしい」と言ったところで、おそらく実行は難しいでしょう。部下のフォロワーシップを引き出すためには、リーダーである上司が「ナラティブ」で部下の自主的行動を促すべきだと、滋賀大学経済学部教授の小野善生氏は述べます。

フォロワーシップとは、簡単に説明すると「フォロワー自身が能動的に行動して、リーダーをフォローする」ということですが、よほど目的達成への意味や意義がフォロワーに浸透していないと、そういう行動はできません。(中略)ナラティブとは聞く人が参加している気持ちになる(聞く人を物語に巻き込む)話法ですよね。つまりリーダー一人ひとりが主体となって語るイメージを共有する能力が求められるのです。

(引用元:Adecco Group|「リーダーシップ」の成否のカギは「フォロワーシップ」にあり

つまり、自身が関わる仕事やプロジェクトについて「自分は重要な登場人物のひとりなんだ!」と部下に思ってもらうようにするということです。主体性もそこから生まれてきます。

たとえば、新商品のマーケティング策を考案するような場合は「君ならばどう思う? いちユーザーのつもりで『これなら買いたくなる!』という意見があると嬉しい」など、「君が必要だ」「君の意見が欲しい」というメッセージを送れるとよさそうですね。このように、部下が自らすすんで行動を起こしたくなる土壌をつくるのが大切なのです。

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部下との「信頼関係」も忘れてはいけない

もうひとつ大切なのが「信頼関係」です。心理カウンセラーで経営コンサルタントの小倉広氏は「信頼なくしてフォロワーシップなし」と述べています。たとえリーダーが正論を一生懸命言っていたとしても、部下に信頼されていなければその言葉には説得力がなく、部下もついてこないからです。そんな小倉氏は、部下との信頼関係を高める “3つの法則” を紹介してくれています。

1つめは「相手を大切にする」こと。価値観に上下や正誤は存在しないと自覚し、相手の価値観も尊重する――これだけでも、相手を大切にすることにつながります。たとえば、20代をターゲットにした商品のロゴを決めるとき、20代の若手部下が「類似品で似たデザインのものを見たことがあるから、このロゴ案は避けたほうがいいのでは?」と言ったら、それは貴重な意見となるでしょう。そこをばっさり切り捨てるのはNGです。

2つめは「自分を指さす」こと。問題が起こっても部下のせいにせず、原因はリーダーである自分にあると考え、自分を変えることで解決するという姿勢を貫くことを意味します。たとえば、チームの目標がなかなか達成できないときは、部下に原因を探すのではなく、「そもそも目標が高すぎた? これでは部下のモチベーションも上げてあげられないよな……」「中間報告の段階でもっとヒアリングして打開策を検討しておくべきだった」などと、自分がどうすればよかったかを考えましょう。

そして最後は「誠実である」ことです。嘘をつかない、口で言うことと行動を矛盾させない、利己ではなく利他の心を持つ――こうした道徳的な行ないを常に心がけましょう。

信頼関係ができあがることで初めて、部下は安心して上司との間に建設的な摩擦を起こすことができると、小倉氏は言います。部下から良い意見を引き出せれば、より良い筋道を見つけ、いま以上に大きな成果が出せるかもしれませんね。

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組織の8割はフォロワーシップで決まる

リーダーシップとフォロワーシップの関係は、車の前輪と後輪によく例えられます。前輪(=リーダー)が前に進もうとしても、「あなたのようなリーダーにはついていきたくない」と後輪(=フォロワー)がブレーキを踏んだら、前には進めませんよね。この後輪の存在はとても大きく、ケリー氏は「組織の8割はフォロワーシップで決まる」とまで述べています。

しかし、それを理解しているリーダーはそう多くはありません。そのため、リーダーはどんどんアクセルを踏み、一方のフォロワーはブレーキを踏み続ける……そうなると、車が壊れてしまうのは時間の問題でしょう。

小倉氏によれば、こうした問題は数多くの組織で起こっているとのこと。リーダーとフォロワーで仕事に対する情熱やビジョンが違う――そんな組織のゆがみを経験したことのある人も多いのではないでしょうか。

組織づくりにおいて、フォロワーひとりひとりの存在はとても大きなものであるということも、リーダーは決して忘れないようにしましょう

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チームマネジメントに悩んでいるリーダーのみなさん。これまでの部下との接し方を振り返り、部下の「フォロワーシップ」をぐんぐん引き出していきましょう!

(参考)
株式会社日立総合計画研究所|フォロワーシップ
Adecco Group|「リーダーシップ」の成否のカギは「フォロワーシップ」にあり
日経XTECH|フォロワーシップ
小倉広(2011),『なぜ、部下はリーダーの足を引っ張るのか?―「フォロワーシップ」で本当に強いチームを作る』, すばる舎.

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

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