「相手のために無理ばかり」はもう卒業! “健全な境界線” の引き方、教えます。

積田美也子さんインタビュー「人間関係に悩まないための健全な境界線の引き方」01

多くの他人と関わりながら仕事をするビジネスパーソンが成果を出すには、周囲とよりよい人間関係を築くことが欠かせません。しかし、だからこそ上役や取引先との人間関係について悩みを抱えることになります。

「いま、他人を優先しすぎるあまりに精神的に疲れてしまっている人が増加している」と語るのは、心理カウンセラーの積田美也子(つみた・みやこ)さん。では、どうすればよりよい人間関係を築いていけるのでしょうか

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

積田美也子さんインタビュー「人間関係に悩まないための健全な境界線の引き方」02

自分も相手も無理をしない「健全な境界線」

人には、他人と心地よい人間関係を結べる適度な距離感というものがあります。

その距離が近すぎても人間関係はうまくいきませんし、逆に遠すぎても今度は人とのつながりが感じられず、社会生活をきちんと営めなくなる。一方、適度な距離感を保てると、自分も相手も無理することなく幸せな人間関係を築けます。その適度な距離感を、私は「健全な境界線」と呼んでいます

そして、他人との間に健全な境界線を築けない人が、他人を優先するばかりに自分を後回しにしてしまう人たちです。他人がやってほしいことを受けすぎてしまっている状態というのは、他人にぐっと距離を詰められているようなイメージになるでしょうか。

他人を優先して心が苦しくなっている人は、まずは他人との間に健全な境界線を築くことが大切になります。そのためにできるのが「ノー」と言うこと。「ノーと言えない日本人」なんて言葉もありますが、協調性を必要以上に優先してしまいがちな日本人が苦手とすることかもしれませんね。

では、ノーと言えない人にはどんな心理が働いているのでしょうか? それは、「ノーと言ったら相手に嫌われるのではないか」というふうに、自分がノーと言ったあとのことを勝手にネガティブに想像するというものです。

でも、逆の立場で考えれば、ノーという言葉にそんなに重い意味がないというのはすぐにわかることです。誰かに頼み事をして断られたとして、すぐに相手を嫌いになりますか? そんなことはありませんよね。「都合が悪かったのかな、だったら別の人に頼んでみよう」と考えるだけのこと。都合が悪いとき、素直にノーと言い合える関係こそが、健全な人間関係なのです。

積田美也子さんインタビュー「人間関係に悩まないための健全な境界線の引き方」03

勝手な思い込みの真逆の可能性に着目する

先に、自分を後回しにする人には、自分がノーと言ったあとのことを勝手に想像すると述べました。別の表現で表すなら、「自己完結している」という言い方もできます。「自分がこう言ったら、相手はこう思うに違いない」――そういった自分の中の思い込みにとらわれているのです。

でも、それは本当に「違いない」ことでしょうか? そうではありませんよね。「相手がこう思う」可能性もあれば、「そう思わない」可能性もあるからです。

そこで、自分の勝手な思い込みの真逆の可能性に着目する癖をつけてほしい。そのように思考の方向性を変えていくことで、自己完結する癖から徐々に抜け出していくことができます。

また、他人を優先することに、喜びではなく逆に苦しさを感じてしまっている人は、自分が我慢していることや払っている犠牲を、「嫌なもの」だと感じるようになっています。たしかに、誰も好き好んで我慢をしたり犠牲を払ったりはしたくないでしょう。でも、その我慢や犠牲に向ける視点を変えるだけで、嫌なものと感じていた気持ちは大きく変わります。

では、その視点の変え方とはどんなものか。それは、「我慢や犠牲には自分の本当の気持ちが隠れているんだ」と考えることです。我慢をしたり犠牲を払ったりして嫌だと感じたとする。すると、「私は本当はこうしたかった」といった思いも見えてきますよね?

自分を後回しにしてしまう人は、自分の本当の気持ちが見えなくなっています。そう考えると、我慢をしたり犠牲を払ったりすることは、見えなくなっている自分の本当の気持ちに気づける大きなチャンスだととらえることができます。そうして、自分の本当の気持ちに気づけるようになれば、他人を優先しすぎるということも減っていきます。

積田美也子さんインタビュー「人間関係に悩まないための健全な境界線の引き方」04

「自分はこう思うけど、あなたは?」で自分の気持ちを伝える

自分の本当の気持ちに気づけるようになれば、今度は他人にその気持ちを伝えるようにしてみましょう。しかし、自分を後回しにする癖がついている人にとっては、簡単ではないかもしれない。そこで、「自分はこう思うけど、あなたはどう思う?」という2段階での言い方をしてみてください。

たとえば、友人と食事をするときに、友人から「何を食べたい?」と聞かれたとします。自分を後回しにする人は、つい「なんでもいいよ」といって友人に合わせてしまいがちです。でも、「自分はこう思うけど、あなたはどう思う?」という言い方ならば、ハードルが低いのではないでしょうか。「私はパスタを食べたいけど、あなたは?」というように。

都合が悪いときには素直にノーと言い合える関係こそが健全な人間関係だと伝えましたが、よりよい人間関係を築くには、何かを断るときに限らず、自分の希望をきちんと伝えられるようになることが大切なのです。

積田美也子さんインタビュー「人間関係に悩まないための健全な境界線の引き方」05

【積田美也子さん ほかのインタビュー記事はこちら】
いつも「自分は後回し」で苦しんでる人は○○に思考を支配されている。
他人を優先しすぎて「心が疲れているな」と感じたときにしてほしい、いくつかのこと

【プロフィール】
積田美也子(つみた・みやこ)
心理カウンセラー、クリスタルボウル奏者。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、金融機関、国内外の女性の起業支援、フェアトレード事業に携わる。仕事面は充実していたものの、幼少の頃より感じていた漠然とした孤独感、疎外感をどうしても拭い切れず、さまざまなスピリチュアルや心理の学びを重ねるうち、「奇跡のコース(A Course in Miracles)」に出会い、それまでの疑問が解決するのを体験すると同時に人生が劇的に好転。「よろこびで生きる体験」をわかち合いたいとの思いから、延べ3500人以上に「奇跡のコース」をもとにしたカウセリングセッション、講座等を行う。現在、「想像を超える自分を生き、よろこびに満ちた人生を歩む」ためのサポートをすることをミッションとしている。訳書に、『今まででいちばんやさしい「奇跡のコース」』、『続今まででいちばんやさしい「奇跡のコース」』(ともにフォレスト出版)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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