「新しい勉強法を試しても、すぐにやめてしまう」
「集中力を維持できず、スマートフォンにすぐ手を伸ばしてしまう」
このように、どうも勉強に飽きっぽい人はいませんか。
今回は、こうした状態に陥ってしまう原因とその対策をお教えします。じつはあなたも気づいていなかった、意外な理由がわかるかもしれません。
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【方法1】「勉強が楽しい」と脳に記憶させる
飽きっぽさの原因のひとつは、変化を嫌がる脳の働きによるもの。脳が以前までの状態を保とうとして、新しく始めたことをやめるように自然と反応してしまうのです。脳科学者の茂木健一郎氏は、この脳の働きを安定化志向と呼んでいます。
新しいことを定着させようと普段よりも多くのエネルギーを消費し、残念ながら定着する前に飽きてしまう安定化志向の人は、脳に「勉強は楽しいものだ」と記憶させるとよいでしょう。
東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之氏は、感情と記憶の相関性について次のように述べています。
嫌だという気持ちがあるとストレスホルモンが分泌され、記憶を司(つかさど)る海馬や前頭前野の脳細胞が萎縮。反対に、好きだと思うとストレスが減り、脳は本来の機能を伸び伸びと発揮する。また、海馬の近くに位置して感情を司る扁桃体(へんとうたい)が、海馬の脳細胞に影響を与え、記憶の定着を強めます。
(引用元:NIKKEI STYLE|脳のパフォーマンス最大に 脳医学者お薦めの勉強法)
たとえば、2時間しっかり勉強したあと、1時間の休憩が待っていると考えるのはどうでしょうか。休憩中は、趣味の読書やゲームなど自分の好きなことをしてかまいません。無理に詰め込むよりは、メリハリをつけたほうが勉強を楽しいと思えるはずですよね。
あるいは、実験的にあらゆるノート術を試してみるのはどうでしょう。飽きっぽさを逆手にとり、自分にとって最も効果がある方法を自主的に探すのは、あるひとつを継続させなければと単に自分を追い込むよりおもしろいと思えるのではないでしょうか。勉強にもきっと身が入るはず。
【方法2】目標を細分化する
もしあなたが何も計画を立てずに日々勉強しているなら、そのやり方を見直す余地があります。たとえば、これから数学の参考書を読みながら勉強すると仮定しましょう。とはいえ、覚えるべきポイントは山のようにあり、たった数日ですべてを網羅しようとするのは決して現実的とは言えませんよね。「こんなに勉強しないといけないの?」ときっとすぐ嫌になってしまうでしょう。
精神科専門医の伊藤直氏によれば、情報がたくさんある状態は取捨選択がうまくできないことへの「無力感」や捨てた選択肢への後悔からくる「満足度の低下」をもたらすとし、いずれにしても私たちにストレスを与えるそう。
そんなとき、精神科医の名越康文氏がすすめるように、自分でコントロールできる範囲で明確な目標設定をしてみましょう。先に挙げた例でいえば、1日目に直角三角形の三角関数、2日目には単位円での三角関数など、ひとつのテーマをより細分化して単元を勉強するのです。記憶したい情報が多すぎてオーバーヒートしない程度を目安に実践してみてください。
【方法3】スキマ時間を活用する
飽きっぽい人は、たとえ自分の好きな勉強内容だったとしても、机に向かい続けるのはなかなか大変だと感じるかもしれません。そんなときには、スキマ時間を利用した勉強方法をおすすめします。
たとえば、通勤・通学中の20〜30分程度で勉強をするとしましょう。往復で1日に約1時間、それを週5日1ヶ月続けるとおよそ20時間になります。さらに年単位だと約240時間もの時間を勉強に費やすことができるでしょう。
『30代で人生を逆転させる1日30分勉強法』の著者である石川和夫氏によると、30〜50代の1日平均の勉強時間はなんとたったの5分程度だそう。この数字はアンケート回答者のみの結果であり、実際はより短いことが予測されています。つまり、通勤・通学中のスキマ時間を使い1日1時間勉強をするだけで、単純計算でもまわりの人の12倍勉強できていることになるのです。この差は、学生やビジネスパーソンにとってはきっと大きいはず。長時間机に向かうのは苦痛な飽きっぽい人でも、この方法なら勉強できるに違いありません。
【方法4】「飽きっぽい自分」ではなく「マルチポテンシャライト」だと考える
みなさんは「マルチポテンシャライト(Multipotentialite)」と呼ばれるタイプの人をご存じでしょうか? マルチポテンシャライトという言葉を3つに分解すると、以下のようになります。
Multi/マルチ:複数の
Potential/ポテンシャル:潜在能力を持つ
(-l)ite/ライト:人
この言葉はもともと、作家やミュージシャン、ウェブデザイナーなど多くの分野にまたがったキャリアを形成するエミリー・ワプニック氏のTEDトークで生まれた造語。同氏によれば、このタイプの人はある1つのものを専門的に深く学ぶことが苦手で、多くの興味・関心を広く浅く知ることが好きなのだそう。それゆえ、飽きっぽく見られてしまうことも。
しかしワプニック氏は、マルチポテンシャライトは決して悪いことではないと強調しています。むしろ、まわりが考えたこともなかったような新たな気づきをしたり、広い視点で物事を考えられたりする性格なのです。
だから、「自分は飽きっぽいから……」と否定的になるぐらいだったら、「自分はマルチポテンシャライトでは?」とポジティブにとらえてみましょう。「自分はさまざまなことに興味をもつ才能があるんだ」と言い聞かせれば、過度なストレスを感じることなく、自分に合ったやり方で勉強を進めることができるはずです。
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飽きっぽさによる弊害は少しの工夫で改善することができます。今回ご紹介した方法を実践することは、その大きな第一歩。みなさんの勉強が長続きすることを願っています。
(参考)
茂木健一郎(2018), 『脳リミットのはずし方』, 河出書房新社.
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NIKKEI STYLE|脳のパフォーマンス最大に 脳医学者お薦めの勉強法
石川和夫(2012), 『30代で人生を逆転させる1日30分勉強法』, CCCメディアハウス.
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【ライタープロフィール】
YG
大学では日韓比較文学を専攻し、自身の研究分野に関する論文収集に没頭している。言語学にも関心があり、文法を中心に日々勉強中。これまでに実践報告型の記事を多数執筆。効果的で再現性の高い勉強法や読書術を伝えるべく、自らノート術や多読の実践を深めている。