上司から新しい売上目標を要求されたとき、初めて後輩ができたとき、新しい部署に異動したとき、今やっている仕事が順調ではないと感じるとき……。あらゆるシチュエーションで、人は漠然とした「自信のなさ」から不安になります。
社会に出て初めて、「自分は思っていたよりも自信のない人間なのかもしれない」と感じた人も少なくないのではないでしょうか。
今回は、人が自信をなくしてしまう理由と、自信をつける方法についてご紹介します。
1. 自分に意識を向けすぎない
自信がないのは、自分に意識を向けすぎていることが原因かもしれません。
著名な舞台俳優やビジネスリーダー、アスリートに指導を行なっている、ボイスコーチ兼リーダーシップコーチのパッツィ・ローデンバーグ氏によると、一流の俳優やアスリート、ビジネスパーソンたちは、「自分」と「相手」がいる今この瞬間の状況を大切にしているそう。反対に、自信がない人は、どんな状況でも自分だけに意識が向いているのだとか。
たとえば、仕事でプレゼンテーションをするときにも、苦手意識のある人は「失敗したらどうしよう」「自分のプレゼンなんて本当は誰も興味を持っていないだろう」「どうせみんな退屈してるに決まってる」と、自分のネガティブな感情に集中してしまっていいます。そうすると、プレゼン相手に意識を向けることが難しくなってしまい、相手の反応を見逃してしまうのです。
実際は、熱心に話を聞いている人がいるかもしれないし、興味深いと思ってくれている人がたくさんいるかもしれません。でも、自信がなく、不安が大きくなっていると、相手の反応に気づくことができなくなってしまうでしょう。
自信のある人たちは、目の前にいる人たちに「何かを与える」という気持ちで、リラックスして挑んでいるのです。
他の人と一緒にいる間、話しているときも、聞いているときも、相手に存分にエネルギーを与えることだ。これを実践すれば、自分がもっと生き生きと感じられ、気づかない間に今より自信のある状態になれるだろう。
(引用元:中野眞由美(2019),『Real Confidence自信がつく本』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.)
人と接するときは「相手に何かを与えたいし、自分も相手から何かを受け取りたい」という気持ちを持ち、その空間を楽しみましょう。たとえ失敗したとしても、命を落とすわけではないですし、人生に大打撃を与えるものでもありません。
たとえば、会食で緊張してしまう人は、自分がどう見られているかばかりを気にしすぎているかもしれません。相手からの評価を気にしすぎると、意識は自分に向いてしまいます。
それよりも、会食相手の話をじっくりと聞いたり、質問をしたり、相手の表情を観察したりしてみましょう。先方が知りたそうな情報を事前にリサーチしておいて、話してみるのも良いでしょう。
自分と相手が対立するイメージより、「お互いにとってプラスな時間になればいいな」とチームワークで楽しむ気持ちを持ってみてはいかがでしょうか。
2. 入念に準備をする
何かをするときに怖いと思ったり、自信がないと感じたりするのは、単に準備不足が原因かもしれません。
ローデンバーグ氏は、舞台に立つパフォーマーが自信満々に見えるのは「しっかり準備しているから」だと説明しています。たとえば、歌手のマドンナは自信に満ちた女性に見えますが、パフォーマンス前に何度も繰り返しリハーサルをし、非常に入念な準備をすることでも有名です。
準備が入念な著名人といえば、メジャーリーグでも活躍していたイチロー選手も挙げられます。同氏は現役時代に以下の3つの準備を必ずやっていたそうです。ビジネスパーソンも参考にできるものなので、ご紹介しましょう。
- 道具の手入れ
イチロー選手は、「手入れを怠るとせっかく身につけた感覚が失われてしまう」という理由から、試合が終わるとすぐにグラブやスパイクの手入れをしていたそう。私たちも、ノートPCやスマートフォンを定期的に手入れしたり、身だしなみを整えるためにシャツにアイロンをかけたり、靴を磨いたりと、仕事で使うものを万全な状態にしておくことで、毎日の仕事を気持ち良く進められるでしょう。 - 自己管理
イチロー選手は、メジャーに渡ってから体重が1ポンド(約453.59グラム)しか変動しなかったそう。自己管理こそ、結果を出す秘訣だったのでしょう。心や体の状態が整っているからこそ、「今日も状態は万全だから、自分のベストを尽くせるぞ」という自信につながるのですね。私たちも、必須でない飲み会や不要な残業は避け、栄養価の高い食事をとって睡眠時間を十分に確保するなどの自己管理を心がけましょう。「誘惑に負けないぞ」という気持ちを持って、自分をコントロールすることが大切です。 - ルーティーン
イチロー選手は毎日欠かさず夕食前後にトレーニングをし、寝る前に2時間のマッサージを受けていたそう。ルーティンを欠かさず行なうことによって、常に安定したコンディションでプレーすることができていたのです。私たちも、「お風呂から上がったらストレッチをする」「寝る前に20分仕事の勉強をする」など、継続可能な習慣を生活の中に組み込み、体のコンディションを整えましょう。
イチロー選手は、「準備」は「結果を出す」ためではなく、「力を出し切るためにするもの」ととらえているそう。どんなときでも、結果が思うように出ない場合はありますが、できる限りの準備をすることが今後の糧になり、自信につながるのです。
3. 必要なスキルを洗い出す
自信がなくなって不安になったときには、心の乱れを受け入れたうえで、「今、自分に足りていないものは何だろう?」と考えましょう。ローデンバーグ氏によると、自信のある人たちは自己認識ができており、知識やスキルの欠けているところを把握しているそう。
しかし、「そもそも自分に何が足りていないのかがわからない」という人は、どうすればよいのでしょうか。
3,000人以上のカウンセリングを行なってきたキャリアアドバイザーの長谷川貴子氏によると、自分に足りないものを知るには「職務経歴書を書いてみる」のがおすすめなのだとか。
その際は、転職関連のサイトや書籍に掲載されている職種別のサンプルを見て、自分の経歴と比較してみましょう。サンプルには、企業が評価する要素が盛り込まれているため、比較することによって自分の能力や経験にどの程度の価値があるのか把握でき、足りていないスキルを把握するヒントになるそうです。
たとえば、営業職の職務経歴書サンプルに「アピールポイント:既存顧客からの売上を増やし、安定した業績基盤を培うとともに、信頼関係を深めることで、お付き合いのある企業をご紹介いただき、新規顧客獲得につなげました」と書かれていたとします。
そこから「飛び込み営業だけでなく、既存の顧客との関係性をしっかり築き、そこから新たなコネクションを広げる努力をしよう。改めてコミュニケーション力を伸ばすためのワークショップに参加するのもいいかもしれない」と、足りないスキルを得るためのヒントを得られるでしょう。
ただ漠然とした不安を抱えたままでは何も変わりません。今の自分に必要なものを洗い出し、できることから始めていきましょう。
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思うような結果が出なかったり、誰かに批判されたり、環境が変わったりと、さまざまな要因で自信を失くしてしまうことがあるはず。ただ、自信のなさから、身動きが取れなくなってしまうのはもったいないことです。できる対策や心がけを、日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょう?
(参考)
中野眞由美(2019),『Real Confidence自信がつく本』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
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【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。