文字で伝えるビジネスコミュニケーションといえば、メール。あなたはビジネスメールのうまさに自信はありますか? メールがうまいと「デキる人だ」と思われやすくなるもの。でも、自分のメールのどこをどう直せばいいメールになるのか、なかなか判断がつきませんよね。
じつは、スマートなビジネスメールを書くために、ぜひ守るべき3つの黄金比があります。それは、「5:2」「20:1」「2:1」。この3つを使った、最高のメールの書き方をお伝えします。
1.「定型通りに書く部分:考えて書く部分=5:2」
黄金比の1つめは「定型部分:オリジナル部分=5:2」。メールを1通書くのに、どう書き出せばいいか、これで失礼がないか……などといちいち悩んでいませんか? じつは、ビジネスメールを構成する7つの要素のうち、5つは定型文の使い回しでよく、1通ごとにゼロから考える要素はたった2つだけなのです。
このように言うのは、一般社団法人日本ビジネスメール協会代表理事の平野友朗氏。平野氏いわく、ビジネスメールの7つの要素とは次のとおり。
- 宛名
- あいさつ
- 名乗り
- 要旨
- 詳細
- 結び
- 署名
このうち、「4. 要旨」と「5. 詳細」を除いた5つの要素は、定型文をアレンジするだけで事足ります。たとえば、このような感じです。
- 1. 宛名
「名字+様」が基本。平野氏によれば、フルネームでも間違いではないが、仰々しい印象を与えるため名字のみでよいそう。 - 2. あいさつ
「お世話になっております」が基本。場合によって「お疲れ様です」や、初めて送る相手には「初めてメールを送らせていただきます」など。 - 3. 名乗り
「社名+名字」が基本で、社内メールならば「部署名+名字」。 - 6. 結び
「よろしくお願いいたします」が定番。内容によって「ご検討」や「ご確認」をつけてアレンジ。 - 7. 署名
名刺に書かれている情報が入っていれば十分。過不足のない署名を設定しておくとよい。
そして、1通ごとにオリジナルで考えるのは「4. 要旨」と「5. 詳細」だけ。以下のような具合になります。
ここでの書き方も、無駄は省きましょう。「4. 要旨」で単刀直入にメールの目的を伝え、「5. 詳細」で伝達したい詳細を添えるだけでいいのです。上の例のように、文章よりも箇条書きのほうが見やすい場合もあります。
「ゼロから考えなければならない要素は2つだけ」とわかっていれば、1通を書くスピードが上がり、文面もスマートになりますよ。
2. 改行は「20字:1回」
続いて2つめは「改行のタイミング=20字:1回」。必ずしも20字ぴったりというわけではなく、平野氏は「20〜30字程度で改行」をすすめています。
筆者が使っているiPhone8で確認したところ、既存のメールアプリでは1行20字、Gmailアプリでは1行22字でした。機種や設定などで若干の違いはありますが、スマートフォンのメールはだいたい1行20数文字で表示されます。ですから、20字前後で改行するのが最も見やすいのです。また、パソコンでメールを見る場合、改行なしだと横に長く続いてしまって読みづらいので、いっそう改行が必要です。
字数はひとつの目安となりますが、実際には見やすさを重視して改行することも大切です。これは、NPO法人日本サービスマナー協会認定マナー講師、中村裕美子氏のアドバイス。次のふたつの例を比較してみてください。
【A】20字で改行する場合
初めてメールを送らせていただきます。××
コンサルティングの田中です。
【B】文ごとに改行する場合
初めてメールを送らせていただきます。
××コンサルティングの田中です。
【A】のように20字ぴったりで改行するより、20字より少ない字数でも1文ごとに改行した【B】のほうが、1行の字数差が縮まって断然見やすいですよね。
また、平野氏は空白行を使って文章のブロックをつくることもすすめています。縦に切れ目なくぎっしりと書くより、内容ごとに区切るほうが見た目がすっきりしますね。なお、1つのブロックは5行以内が理想的とのこと。とにかく「相手にとって見やすく」。これがうまいメールの鉄則なのです。
3. 「自分:相手=2回:1回」でやりとりを終わらせる
最後、3つめの比は「自分が送るメールの回数:相手が送るメールの回数=2:1」です。自分発信のメールのやり取りは、「1往復半」で終わるようにしてみてください。だらだらと続くやりとりは、スマートではありません。
人材育成コンサルティングを手がける株式会社AND CREATE代表取締役、清水久三子氏は、次の3通からなる1往復半が、メールのやり取りとしては最も効率的だと言います。
- 自分がメールを出す
- 相手がYes/Noまたは、選択肢に回答をする
- 自分が最終確認をする
これは、日程調整などの簡単なメールだけでなく、意思決定などの重要なメールでも同じです。ポイントは、「どうしましょうか」と相手任せにするのではなく、具体的な選択肢や自分の意見を盛り込むこと。これにより、相手は承諾や選択など簡単な回答ですますことができ、メールのやりとりが簡潔になります。
もちろん、内容によってはちょうど1往復半で終わらない場合もありますよね。終わらせるタイミングが難しいときに便利なフレーズを、いくつかご紹介しましょう。『迷わず書けるメール術』などビジネスメールについての著書がある、ライターの神垣あゆみ氏がすすめるものです。
「ありがとうございます」で結ぶフレーズ
- 承りました。ご確認いただき、ありがとうございます。
- お忙しいところ、ご回答いただき、ありがとうございます。
「返信不要」を伝えるフレーズ
- もし、上記の内容でご了承いただければ、返信はご無用です。
- 上記の内容で不都合がありましたら、お知らせください。
特に問題がなければ、返信は不要です。
また、自分からのメールは1往復半が理想ですが、相手からのメールは1往復で終わらせるのがよいと神垣氏は言います。できるだけ相手に手間をかけさせないのがスマート。相手からのメールを1往復で終わらせる場合のフレーズはこちらです。
- △△の件、承知しました。
- ファイルを受領(拝受)しました。
「確認した」という旨を簡潔に伝えるのがコツですよ。
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3つの比を軸に、うまいメールのコツをお伝えしました。ビジネスメールのコツは、見やすく簡潔に。「5:2」「20:1」「2:1」を意識して、スマートでデキるメールを書きましょう。
(参考)
新R25|7つの構成要素のうち、5つを定型化せよ。優れたメールを速く書くためのポイント
メールワイズ式|メールの改行を読みやすく整える方法
東洋経済オンライン|事実!一流のメールは驚くほど「感じがいい」
jin-jour|エンドレスなメールのやり取りを終わらせるには?:ビジネスパーソン メール術(18)
【ライタープロフィール】
梁木 みのり
大学では小説創作を学び、第55回文藝賞で最終候補となった経験もある。創作の分野のみでは学べない「わかりやすい」「読みやすい」文章の書き方を、STUDY HACKERでの執筆を通じて習得。文章術に関する記事を得意とし、多く手がけている。