「文章力や発信力があって、かつ仕事もできる人に憧れる。でも自分は文章を書くのが苦手……」と悩んでいませんか?
ビジネスにおいて “書くスキル” は重要。わかりやすい文章を書ければ、コミュニケーションが円滑になり、「この人とは仕事がしやすい」といういい評価を得られます。“仕事ができる人” になりたいのなら、ぜひ “文章を書ける人” も目指したいものです。
この記事では、文章力を上げて仕事の成果につなげるふたつのポイントを紹介します。さっそく今日から、実践してみてくださいね。
【ライタープロフィール】
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格を取得。現在は国際中医師合格を目指し毎日勉強している。勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。
日本実業出版社|上手な文章には「ゴール」と「ニーズ」の準備が不可欠だ
EL BORDE|「伝わる文章」を書ける人が有利な時代――敏腕編集者から学ぶ文章術【実践例あり】
リクナビNEXT|“仕事の精度”がグッと上がる!文を書くための「9マス文章術」とは?
1.「ゴールとニーズ」を把握する
「上司は、仕事ができるAさんのメールにはすぐ対応するのに、私のメールはいつも後回し」
「メールで多くのアポをとっている同僚と違い、自分は返信すらもらえない」
そんな悩みのある人は、文章を書く前にゴールとニーズを明確にするといいかもしれません。
「文章を書くことで仕事の成果をあげている人は、往々にして書く前の準備に力を入れてい」ると話すのは、伝える力【話す・書く】研究所所長の山口拓朗氏。その準備とは、「理想的なゴール」の設定と「読む人のニーズ」の把握だと言います。(カギカッコ内引用元:日本実業出版社|上手な文章には「ゴール」と「ニーズ」の準備が不可欠だ)
筆者が実際に受信した営業メールを例に、ゴールとニーズについて詳しく見ていきましょう。
【例1】
○○様
いつも大変お世話になっております。株式会社××の△△です。
○○様が展開しているEC事業関連について、弊社でもサービスを開始しました。弊社ホームページのブログ欄をぜひご覧ください。
ご興味がございましたら、販売のご協力お願いしたいと考えています。
いかがでしょうか。
△△
【例1】のメールでは、書き手が「相手(=筆者)からの販売協力を得る」ことがゴールとなっていますね。一方、相手のニーズについてはまったく触れられていません。筆者はこのメールを読んだとき、なぜ筆者が販売協力をしなければいけないのか、どのようなメリットがあるかが不明で、正直、ブログを読む気にはなれませんでした。
もうひとつの例です。
【例2】
○○様
いつも大変お世話になっております。株式会社××の△△です。
このたび、弊社ではEC事業における集客やSNS運用のサポートサービス(https:~)を開始しました。
集客やSNS運用でお困り事がございましたら、ぜひお話をお聞かせください。
ECサイトのほか、〜や〜を活用した集客や運用のサポート・代行で売上□□%UPを実現しております。
少しでもご興味があれば、ご検討用の資料をお送りいたします。
お忙しいなかお手数をおかけしますが、○○様からのご返信をお待ちしております。
△△
【例2】のメールでは、書き手が「新サービスについて説明の機会を獲得する」ことがゴールとなっています。そして、「集客やSNS運用のノウハウを知りたい」という読み手のニーズが想定されていますね。筆者は当時、「集客やSNS運用を頑張りたい」というニーズを抱えていました。このメールではそのことが見事に把握されていたので、悩みを解決できるかもしれないと感じました。
前出の山口氏は、「重要なのは、その人(会社)のニーズを把握したうえで、それを満たす形の提案ができるかどうか」だと語ります。(カギカッコ内引用元:同上)
例1のように、いくらゴール設定が明確でも読み手のニーズを満たしていなければ、読み手は行動に移す必要性やメリットを感じませんよね。このことは文章に限らないもの。
“自己のゴールの設定” と “相手のニーズの把握” がそろって初めて、人を動かす力が生まれるのです。仕事ができる人を目指すなら、必ず押さえておきましょう。
2.「相手への配慮」をする
働き方が多様化し、何年か前と比べ、メールやチャットを使ったコミュニケーションが増えた人は多いでしょう。なかには、テキストコミュニケーションの難しさに直面している人もいるかもしれません。
せっかく効率重視でチャットやメールを使っていても、正しく伝わらなければ、さらなる説明ややり直しが必要になり、余計な時間がかかってしまいます。やりとりに誤解が生まれ、仕事がやりにくくなる可能性も。
このようなテキストコミュニケーション不全の裏には、読み手側の理解力の問題だけでなく、書き手側の伝え方の問題もあるかもしれません。あなたは文章を書く際、以下の3点に注意できているでしょうか。
- 「難しい言葉や言い回し」になっていないか
- 「長い一文」になっていないか
- 「伝えたいことは先頭に」になっているか
(カギカッコ内引用元:EL BORDE|「伝わる文章」を書ける人が有利な時代――敏腕編集者から学ぶ文章術【実践例あり】)
これらの点への注意を促すのは、数々のベストセラーに携わる編集者でブックライターの竹村俊助氏。同氏は、伝わるのは「読む速度と理解する速度が一致する文章」だと語ります。
筆者は新入社員時代、その真逆の文章にたくさん遭遇しました。“次回ミーティングのアジェンダは〜” “ボトルネックを解消してキャッチアップ” など、いわゆる “カタカナ語” が頻出。意味を調べながら読まなくてはならず、理解するのに時間がかかった思い出があります。
難しい専門用語やカタカナ語を使って文章を書くと、読み手に理解するのに時間をかけさせてしまいます。誰が読んでもわかる言葉で書くほうが親切です。
また、文章をあまりに長くすると、読み手が前半の内容を忘れてしまったり、誤解が生まれたりする可能性もあります。竹村氏いわく、簡潔に「ひとつの文でひとつのことが伝わればいい」のです。
そして、あれこれ事情を述べてから最後に用件を伝えるような、“最後まで読まないと用件のわからない文章” は、相手の時間を奪いかねません。竹村氏の言うように、「『要するになにが言いたいのか』を2、3行にまとめたら、いちばん伝えたいことを先頭にもってくる」ことが大切。
これら3つのポイントに共通するのは、「文章を受け取った相手が、どう思うかを想像して書く」という“配慮” の意識です。
(カギカッコ内引用元:同上)
読み手に配慮した文章は読みやすく、読みやすい文章は伝わりやすいもの。無駄なやりとりを防いで円滑に業務を進められるような “仕事ができる人” になるために、相手への気遣いを忘れないようにしたいですね。
「文章を書けて、仕事もできる人」になるためにやってみるといいこと
先に説明したように、伝わりやすいいい文章を書くには、ゴールとニーズを把握することが大切。ただ、そう聞いても「ゴール設定はできそうだけど、ニーズの把握は難しそう……」と感じるかもしれません。
たとえば、会議の出席依頼なら “会議に出席してもらう” こと、営業メールなら “商品を買ってもらう” こと――といった具合に、ゴール設定は比較的しやすいですよね。では、ニーズについてはどうでしょう。相手の悩みのなかにニーズがありそうだと気づいても、それがどのような悩みかを具体的に想像し、さらに文章に書き出すとなるとなかなか難しそうだ……と感じませんか?
でも大丈夫。ニーズの把握に必要な情報を洗い出すことさえできれば、よりよい文章を書くことは可能です。前出の山口氏いわく、文章は「材料(情報)がないと作れない」。ならば、文章を書く前に材料集めをすればいいのです。
そこで同氏がすすめるのが「9マス文章術」。「9マスの中央に洗い出すテーマを書き込み、その周囲の8マスに、そのテーマについての情報を書き出してい」く情報整理術です。(カギカッコ内引用元:リクナビNEXT|“仕事の精度”がグッと上がる!文を書くための「9マス文章術」とは?)
筆者も、いまお読みいただいている本記事を書くにあたり、記事テーマである「文章力をつけたい人の悩み」について、9マス文章術を実践してみました。この記事のゴールは、「文章力をつけたい人に読んでもらう」こと。
9マスを埋めていくうち、文章力のことで悩む人は具体的にどんなニーズをもっているのか、イメージが膨らみました。自然と、何をどのように書くべきかを考えやすくなったのです。
そして「すぐ実践できる内容にしたいから、(5)と(7)は省こう」「ほかの悩みを解消できれば、(8)は克服できそうだ」など、内容の整理もスムーズにできました。山口氏も以下のように、すべてのマスの内容を使う必要はないと述べていたので――
洗い出しの作業は、あくまでも情報を漏れなく手元にそろえるためのものです。そろえ終えたら、その文章の目的や文量などに応じて情報を取捨選択していきます。
(引用元:同上 ※太字は編集部が施した)
筆者は今回、(5)と(7)を省いて記事をまとめることに。さらに、文章をいったん書き終えたあと見直し、「相手への配慮」という内容を追加しました。
9マスのフォーマットを使った “事前準備” のひと手間が、ゴール設定とニーズの把握に有効だと実感できました。あとは、難しい言い回しを使わない簡潔な文章を書いていくだけ。今後、実践を重ねてみようと思います。
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今回筆者が挑戦した「9マス文章術」は、「何を書けばいいかわからない」「どう書けばいいかわからない」といった苦手意識の克服にも役立ちそうだと感じましたよ。
あなたが文章力を上げて仕事の成果も挙げられるよう、この記事がお役に立てれば幸いです。