人といい関係を築けなければ、幸せも成功も得られない。心をひとつにできる最高の人間関係の築き方

岩崎一郎さんインタビュー「幸せになるための最高の人間関係の築き方」01

組織に属するビジネスパーソンであれば、多かれ少なかれ他人と関わりながら仕事を進めることが求められます。そして、他人との関わりのなかで実際にいい人間関係を築くことが幸せなビジネスパーソンになることにもつながると語るのは、著書『科学的に幸せになれる脳磨き』(サンマーク出版)で注目を集める、脳科学者の岩崎一郎(いわさき・いちろう)さんです。その言葉の真意を、科学的根拠とあわせて教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

幸せな人は「心が温まる、心をひとつにできる人間関係」を築ける

みなさんが幸せなビジネスパーソンになるため、まずはビジネスパーソンに限らず幸せな人とはどういう人かを知ってもらいましょう。

そのためのヒントを示してくれるのが、ハーバード大学の研究です。その研究とは、1938年から75年間にわたって当時18歳、19歳だった人たち724人を対象に行なった追跡調査です。その調査は、勉強している内容や職種、年収、家族構成からアルコール摂取習慣など、いわゆるライフスタイルについてアンケートするものでした。

調査対象の724人のなかには、裕福な家庭に生まれ育ってそのまま裕福な人生を歩んだ人もいれば、裕福な家庭に生まれたにもかかわらず財産を失ってしまった人、生まれた貧困地域から抜け出せなかった人、あるいは貧困層から昇り詰めて裕福になった人もいます。

そして、その調査を続けるなかで、生まれが裕福だったか貧しかったかを問わず幸せで豊かな人生を歩むことができた人たちの、ただひとつの共通点が見つかりました。それは、「心が温まる、心をひとつにできる人間関係」をもち続けられるということでした。

岩崎一郎さんインタビュー「幸せになるための最高の人間関係の築き方」02

心をひとつにできるチームが、成果を挙げて幸せを引き寄せる

このことは、集団スポーツにおいては経験則から広く知られていたことです。心をひとつにできるチームは、たとえ個々の能力は高くとも心がバラバラのチームより力を発揮しやすいものです。その理由はわからずとも、誰もが納得する事実でしょう。そしてこのことは仕事にもあてはまるのです。

近年の研究で、人間には「集合知性」というものを発揮する能力があるとわかってきました。集合知性とは、組織のメンバーそれぞれの知性がシンクロし、ひとつの知性のように働くこと。メンバーの脳が集まった、ひとつの脳といったイメージです。この集合知性がうまく働けば、たとえメンバーひとりひとりは平凡な人間でも、ひとりの天才と呼ばれるような人を超えるパフォーマンスを発揮できることが科学的にわかってきたのです。

そして重要となるのが、その集合知性を発揮できているときの脳の状態です。脳には自動車のアクセルとブレーキに相当する部分がありますが、集合知性を発揮できているときの脳はアクセルにあたる部分の活性がとても高まっている状態でした。そして、その状態こそ人間が幸せを感じているときの脳の状態だということが、アメリカのウィスコンシン大学の研究でわかっているのです(『幸せな人は脳全体が活性化している。仕事がはかどる最高の脳状態は「あの行動」で手に入れよ』参照)。

もちろん、集合知性を発揮するには、「心が温まる、心をひとつにできる人間関係」が必要です。心がバラバラでは、先のスポーツの例のように力を発揮できません。そういった心をひとつにできる組織をつくることができれば、集合知性の力によってみんなで高いパフォーマンスを発揮でき、成果も挙げられる。そして、そういうときには脳科学的に見ても脳はしっかりと幸せな状態になっているのですから、まさにいいことずくめなのです。

岩崎一郎さんインタビュー「幸せになるための最高の人間関係の築き方」03

「心が温まる、心をひとつにできる人間関係」を築く「普遍的感謝」

では、どうすれば「心が温まる、心をひとつにできる人間関係」を築けるのでしょうか。私からは、普遍的感謝というものをおすすめします。

「感謝」というと、宗教みたいと言われる方がおられます。じつは、脳科学で「感謝」に関する研究が進んできています。たとえば、ここで紹介する「普遍的感謝」ができるようになると、ある特定の脳内ネットワークが13%変化することがわかっています。つまり、よりスムーズなネットワークになり情報伝達がよくなる。さらに、身体の炎症が少なくなって免疫力が上がり、より健康になったり寿命が伸びたりするようなことも科学的に検証されています。すなわち、「感謝の気持ち」は、“気持ち” だけではないということです。

さて、みなさんはどういうときに感謝をしますか? 多くが、誰かに助けてもらったなど、なにかをしてもらったときに感謝をするのではないでしょうか。これは、「恩恵的感謝」と呼ばれるものです。しかし、それでは残念ながら「心が温まる、心をひとつにできる人間関係」を築くための脳の使い方はできません。

なにかをしてもらったから感謝するのではなく、どんなときも感謝の気持ちを感じる——。それこそが普遍的感謝であり、「心が温まる、心をひとつにできる人間関係」を築くための脳の使い方をする方法です。

その感謝の対象は、職場のメンバーはもちろん、家族でもプライベートの友人でもいい。まわりの人を同志として受け止め、その人のいいところや可能性、できているところに目を向けたり、一緒にいられることに感謝の気持ちをもったりしましょう。

あるいは、スーパーの店員さんやバスの運転手さんなど、知り合いでなくてもかまいません。私は「感謝の種」という言い方をしていますが、そういった周囲の人にも感謝するのです。お金を払っている立場からすればサービスを受けるのは当然かもしれません。でも、店員さんがいなければ欲しい商品は手に入らないし、運転手さんがいなければ行きたいところにも行けない。そんな当たり前のことが「感謝の種」です。ぜひそんな「種」を見つけていただきたいと思います。

そのようにして、普段なら見過ごしがちなところにも意識的に目を向けてみると、感謝できることは意外なほどたくさん見つかります。常に感謝の気持ちを感じることによって普遍的感謝ができるようになり、ひいては大きな幸せをもたらしてくれる「心が温まる、心をひとつにできる人間関係」を築くことにもつながっていくのです。

岩崎一郎さんインタビュー「幸せになるための最高の人間関係の築き方」04

【岩崎一郎さん ほかのインタビュー記事はこちら】
幸せな人は脳全体が活性化している。仕事がはかどる最高の脳状態は「あの行動」で手に入れよ
勉強へのやる気を失ったときは「これ」をするべき。脳は “ダメ出し” だけでは成長できない

科学的に幸せになれる脳磨き

科学的に幸せになれる脳磨き

  • 作者:岩崎 一郎
  • サンマーク出版
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【プロフィール】
岩崎一郎(いわさき・いちろう)
1961年1月生まれ、神奈川県出身。脳科学者。医学博士。京都大学卒業、京都大学大学院修士課程修了後、米国ウィスコンシン大学大学院で医学博士号(Ph.D.)取得。旧通産省の主任研究官、米国ノースウェスタン大学医学部脳神経科学研究所の准教授を歴任。直接的に世の中のため、人のためになるような研究活動をしたいと志すようになり、日本に帰国後は脳科学を活用して一般的な知性の人たちが天才知性を超えるパフォーマンスを発揮できる組織づくりの企業研修を提供する会社である国際コミュニケーション・トレーニング株式会社を創業。現在までに200社以上で企業研修を実施。経営を脳科学で裏づけることの第一人者。主な著書に『なぜ稲盛和夫の経営哲学は、人を動かすのか?』、『何をやっても続かないのは、脳がダメな自分を記憶しているからだ』、『はたらく女性のコンディショニング事典』、『はたらく人のコンディショニング事典』、『誰とでも仲良くなれる人の聞き方・話し方』(いずれもクロスメディア・パブリッシング)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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