「自分って成長できてるのかな」と思ったときに確認したい3つのこと。あなたは “○○ばかり” していない?

「自分って成長できてるのかな?」と思ったときに確認すべき3つのこと01

最近、任される仕事の幅が広がっていない。成長してないのかな……。
前に思い描いていたキャリアを、順調に歩めている気がしない……。

このように、成長を実感できなくて不安になったり、もっと成長しなくてはという焦りを感じたりしたときに、一度立ち止まって確認してみたほうがよいことを3つご紹介します。

1.「インテリジェンス・トラップ」にはまってないか

勉強して知識を身につけ、いまの部署での経験も重ねてきたけど、最近、営業成績が伸び悩んでいる。成長が止まってしまったのかな……。そう感じている人はいませんか?

じつは、知識を得たり自信がついたりしたときほど、成長を阻害する「インテリジェンス・トラップ」にはまっていないか、注意する必要があるのです。

インテリジェンス・トラップ(知性のワナ)とは、科学ジャーナリストのデビッド・ロブソン氏が著書『The Inteligence Trap』で提唱した考え方。ロブソン氏は、世界一優秀とされるFBI科学捜査チームが過去におかした判断ミスの話などを例に挙げ、以下のように述べています。

賢い人はある種の愚かな思考に人並み以上に陥りやすいのだ。
たとえば知能も教育水準も高い人は、自らの過ちから学ばず、他人のアドバイスを受け入れない傾向がある。しかも失敗を犯したときには、自らの判断を正当化するための小難しい主張を考えるのが得手であるため、ますます自らの見解に固執するようになる。
(中略)
こうした過ちの多くは、知識や経験の不足では説明できない。むしろ知能、教育、職業上の専門能力が高い人に特有の、悪しき思考習慣から生じているように思える。

(引用元:デビッド・ロブソン著,土方奈美訳(2020),『The Intelligence Trap(インテリジェンス・トラップ) なぜ、賢い人ほど愚かな決断を下すのか』,日経BP. ※太字は編集部にて施した)

つまりインテリジェンス・トラップとは、知能が高い・立派な経歴をもっているといった賢い人ほど、愚かな行動や誤った判断をしてしまう現象を指すのです。

ロブソン氏は、インテリジェンス・トラップに陥る原因のひとつに、「知的謙虚さ」の欠如を挙げています。同書によれば、知的謙虚さとは「自らの判断の限界を受け入れ、誤りを犯さないように対策を講じる能力」

この能力に欠ける人、つまり “自分は正しい” と思い込みがちな人は、いくら知識や経験があっても成長できないと言えます。たとえば次のような例がそれに当てはまります。

(例)
新人の頃から、熱意や論理で商品をアピールする力で結果を出してきた営業部員。「営業成績を上げるにはPR力だ!」と考え、“話す力” には目を向ける一方、“傾聴力” や “質問力” はまったく磨かない。
→客のニーズの変化に合わせられなくなり、しだいに成績が伸び悩む……。

「自分って成長できてるのかな?」と思ったときに確認すべき3つのこ02

では、インテリジェンス・トラップに陥らないよう知的謙虚さを身につけるには、どうすればよいのでしょうか。それには、精神科医の和田秀樹氏が語る、以下のアドバイスが参考になります。

  • 「自分の思想とは真逆の、相容れない意見の記事や本をあえて読んでみる」
  • 他者の意見を「頭ごなしに否定するのではなく、『もしかしたら、彼らの言うことが“よりよい”ものである可能性もあるな』というくらいに受け止めてみる」

こうすることを通じて、「自分では『自分の意見が正しい』と思っていても、それが『100%正しい』と決めつけるのをやめよう」と和田氏は説いているのです。

(上記カギカッコ内引用元:プレジデントオンライン|「まあ、いいや…」和田秀樹が警鐘"40代から一気に脳の老化が進む人"の危険な兆候【2022上半期BEST5】

たとえば、先に挙げた営業部員の例であれば、以下のような行動をとるとよさそうです。

(例)営業成績を上げるためには “話す力” と考えていたが……

  • 「“話す” だけだと売れない理由。大切なのは “聞く” 力だ」という内容の本を読んでみる
  • 話すのが得意ではないのに成績が上がった同僚に、実践談を聞いてみる

⇒自分の考えだけが正しいわけではないのだな、と気づく
⇒成長のきっかけをつかめる!

自分の考えている正解がすべてではないという気づきこそが、知的謙虚さを身につける助けになるのです。

「自分って成長できてるのかな?」と思ったときに確認すべき3つのこと03

2.「できなかったこと」ばかり振り返っていないか

仕事で失敗をしたので、自分の悪いところをよく振り返り、改善しようと頑張ったが、同じ失敗を繰り返してしまった。全然成長できていないな……。そう自信をなくしている人もいるでしょう。

行動科学専門家の永谷研一氏は、「『できなかったこと』ばかり見て悩んでいると(中略)成長が止まってしまう」と言います。

というのも、「脳科学の研究でも、人は悲観的な思考に引っ張られやすいとされて」おり、一度ネガティブな思考にはまると、「どんどんネガティブになり、前向きに行動でき」なくなっていくから。

(上記カギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|劇的に成長する人は「失敗」ではなく「○○」を振り返る

たとえば、時間をかけて準備をしたプレゼンの本番で、緊張してうまく話せず失敗してしまったとします。「どうして失敗したのか」と原因を考えるのは大切ですが、「自分は人前で話すのには向いていない」「前にも似たような失敗をしたし……」「考えてみたら普段から話すのが下手だ……」というように、ダメなところばかり気にしていたらどうなるでしょうか。

本来であれば、次のプレゼンでは成功できるよう、よりよい準備の仕方を探ってみるべきなのに、ネガティブ思考にはまってしまってはそうした前向きな行動すらとれなくなります。これでは成長できなくて当然。あなたにも似たような経験はありませんか?

「自分って成長できてるのかな?」と思ったときに確認すべき3つのこと04

では、“成長につながる振り返り” をするにはどうすればよいのでしょうか。永谷氏はズバリ、「失敗やできなかったことは完全無視」して「『できたこと』を見つめること」だと説きます(カギカッコ内引用元:同上)。その目的は、自己肯定感を高めること。

 自己肯定感が高い状態になると、自然に心のフタが開き、自分の本音と正面から向き合えます。自分のマイナス面も含めて、ありのままの自分を自分で認めている状態になるのです。自分は価値ある大切な存在だと疑いもなく、自信に満ち溢れている状態です。自らを認めている状態のため、弱い部分にも向き合えるのです。

(引用元:ダイヤモンド・オンライン|成長し続けるために必要な「たった1つ」のこと

つまり、

できたことに目を向ける
→自己肯定感が高まる
→目をそらすことなく、自分の課題と向き合える
→改善につながる行動をとりやすくなる
→成長できる!

という流れを生めるわけです。たとえば、プレゼンに失敗した場合でも、「緊張してプレゼンするとうまくいかないことが把握できた」「準備した台本自体はよくできていた」などと「できたこと」に目を向ければ、自己肯定感を高めた状態で、次のプレゼンに向けた行動を起こせるということ。

「できたこと」に目を向けるには、永谷氏が提案する「できたことノート」を書いてみるとよいでしょう。夜の5分程度で、その日に「できたこと」を1~3つ思い出してノートに書くのです。「できたこと」といっても大きなものである必要はなく、些細なものでいいのだそう。

「できたこと」を見るということは、小さな成功体験を確認するということ。そうなると、毎日が何かしら「うまくいったことの積み重ね」であることを実感できます。「実は成功体験をずっとしてきた」ということに気づき、「なかなか自分もやるじゃないか」ということを自分に思い込ませることができるのです。

(引用元:永谷研一(2016),『1日5分 「よい習慣」を無理なく身につける できたことノート』, クロスメディア・パブリッシング.)

ならば「いつもより10分早く起きた」「いつもより元気よく挨拶できた」などでもよいかもしれません。

――というわけで、筆者も「できたことノート」を書いてみました。

「自分って成長できてるのかな?」と思ったときに確認すべき3つのこと05

「できたことを書こう」という意識をもつだけで、いつもならネガティブに振り返ってしまうことも、ポジティブにとらえ直せると実感しました。

たとえば、STUDY HACKERの原稿の修正作業に専念した日、いつもなら「今日はほとんど記事の修正だけで終わってしまった」とネガティブに振り返ってしまうところ、「記事の修正を終わらせられた! 天才!」という具合にとらえると、1日を前向きに締めくくり、次の日を気持ちよく迎えることができました。

また、永谷氏は週に1回10分ほどを使い、「内省文」を書いてみることもすすめています。「その週の『できたこと』のなかから1つ選んで、それについて内省」するのです。ポイントは以下の4つ。例は、筆者の実体験談です。

  • 「詳しい事実」例:久しぶりに記事を書き上げることができた!
  • 「原因の分析」例:心身が完全に復調したから
  • 「本音の感情」例:いままで心苦しかったぶん、とっても嬉しい!
  • 「次なる行動」例:今回の仕事環境と、作業直前の行動を再現しよう

(カギカッコ内引用元:同上)

このように「できたこと」を足がかりに、仕事に活きる行動を考えてみてください。ネガティブな反省をするだけだったときとは違い、止まらずに成長していけるはずです!

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3.「同じ人」とばかり関わっていないか

居心地も雰囲気もよい、いまの職場。心地いいけれど、刺激が足りないかも……。そう考えている人は、同じ人とばかり付き合っていないかどうか振り返ってみましょう。

経営コンサルタントの大前研一氏は、こう述べました。

付き合って一番役立つ相手というのは、自分とはまったく違った発想をする人だ。それによって自分の発想力が磨かれるし、自分の論理に間違いがあれば気づく。(中略)
だから違う会社の人間や違う業界の人間と付き合うのもいい。とにかく付き合う人を変える

(引用元:プレジデントオンライン|大前流「自分を変革する」3つの方法 ※太字は編集部にて施した)

たとえば同僚が、社内システムには誰よりも習熟しているが、トレンドのクラウドサービスには詳しくないとしましょう。いくら社内システムのことで頼りになるからといっても、その同僚とばかり仕事をしていたら、自分も社内システムの範囲内にのみ通用する発想しかできないかもしれません。それはまさしく、成長が止まった状態だと言えますよね。時には、社内システム以外のことにも詳しい人と、コミュニケーションをとったり一緒に仕事をしたりするほうがいいわけです。

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とはいえ、日々の仕事で会う人が同じような顔ぶれになるのは当然のこと。かといって、転職の決断も簡単にできるものではありませんよね。そこで、習慣化コンサルタントの古川武士氏は、「自分の憧れ・手本となる人を持つ」ことをすすめています。

自分が行き詰まったときに、師と仰ぐ人、目標となる人の言葉を思い出すと突破口を見つけるきっかけになります。
「成長し続けたい!」「小さな自分の殻を破りたい!」と思うのであれば、より大きな存在を見ていると、自分ももっとがんばろうという気持ちになれます

(引用元:古川武士(2019),『理想の人生をつくる習慣化大全』, ディスカヴァー・トゥエンティワン. ※太字は編集部にて施した)

いまの職場にそういった存在が見つからない場合は、古川氏の以下のアドバイスを参考にしてみてください。

ちなみに、全人格レベルまで手本になる人を探すのは無理があります。スキル面・能力面・マインド面でそれぞれ目指す人を変えたほうが現実的です。

(引用元:同上)

再び、筆者のほうで例を考えてみましょう。

上述の例では、「社内システムに誰よりも習熟しているが、トレンドのクラウドサービスには詳しくない同僚」が登場しましたね。この人は古川氏の言う「スキル面」「能力面」では目標とならないかもしれません。しかし、目の前の物事を究めようとする姿勢という「マインド面」では目標たりうるのではないでしょうか。加えて、最新システムに詳しい著名人を「スキル面」での目標とする、システム改良や構築のセンスに長けた取引先の人を「能力面」での目標とする、という具合に、目標にできる人を社外でも探して見るといいかもしれません。

実際、古川氏は、前出の大前研一氏がテレビ番組で話している姿に感銘を受け、大前氏の運営するビジネススクールに通ったり、著作を徹底的に読んだりして、その発想を学んだそうですよ。

***
成長できていないと感じたときは、ぜひ今回お伝えした3つの内容を、1つでも参考にしていただければと思います!

(参考)
デビッド・ロブソン著, 土方奈美訳(2020),『The Intelligence Trap: なぜ、賢い人ほど愚かな決断を下すのか 』, 日経BP.
プレジデントオンライン|「まあ、いいや…」和田秀樹が警鐘"40代から一気に脳の老化が進む人"の危険な兆候【2022上半期BEST5】
ダイヤモンド・オンライン|劇的に成長する人は「失敗」ではなく「○○」を振り返る
ダイヤモンド・オンライン|成長し続けるために必要な「たった1つ」のこと
永谷研一(2016),『1日5分 「よい習慣」を無理なく身につける できたことノート』, クロスメディア・パブリッシング.
プレジデントオンライン|大前流「自分を変革する」3つの方法
古川武士(2019),『理想の人生をつくる習慣化大全』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.

【ライタープロフィール】
月島修平
大学では芸術分野での表現研究を専攻。演劇・映画・身体表現関連の読書経験が豊富。幅広い分野における数多くのリサーチ・執筆実績をもち、なかでも勉強・仕事に役立つノート術や、紙1枚を利用した記録術、アイデア発想法などを自ら実践して報告する記事を得意としている。

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    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
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