「なんだか勉強がはかどらない。ノートのとり方がよくないのかな?」
「仕事のメモがごちゃごちゃして整理も面倒。見やすく書いて仕事効率を上げたい!」
勉強や仕事に欠かせないノート。無地や横罫線が入っているものなどさまざまな種類がありますが、特にこだわりなく選んで使っている人は多いかもしれません。
じつは、そんないつものノートを「方眼ノート」に変えてみると、嬉しいメリットがあるのです。今回は、方眼ノートが仕事や勉強に与えるいい影響を3つご紹介します。筆者の実践例もぜひ参考にしてみてください。
メリット1.「復習しやすいノート」が書ける
「自分さえ理解できればいい」と、体裁を気にせずノートをとっていませんか? これでは、復習の効率が落ちてしまうかもしれません。
東京大学大学院生で勉強法に関する著書がある紀野紗良氏は、「見栄えの良さを意識して」ノートをとることをすすめています。その理由はこちら。
私は、整った体裁のほうが、わかりやすいと思うのです。とくに、時間を置いてもう一度見直す場面では、きれいに書かれているほうがスムーズに頭に入ります。
(引用元:東洋経済オンライン|東大王が語る「美しすぎるノート」を作る納得理由)
つまり、復習しやすくするために、ノートをきれいにとるべきだということです。
紀野氏いわく「マス目のあるノート」つまり方眼ノートを使えば、「行ごとの最初の1文字(横書きで言う左の端)を揃えられ」るので、「情報が整理されている」ノートをつくれるとのこと。「マス目(目盛)の小さいノートを選び、心持ち字を小さくして書く」と、うまくいくそうです(カギカッコ内引用元:同上)。
加えて大手文具メーカーのコクヨ株式会社は、方眼ノートを使うメリットを次のように挙げています。
- 「罫線にとらわれず、自由に書き込める」
- 「文字の大きさを変えたりするときにも邪魔にな」らない
- 「図表やイラストが書きやすい」
- 「タテにしてもヨコにしても使える」
- 「フリーハンドで線を引き」やすい
(カギカッコ内引用元:1~4「東洋経済オンライン|コクヨ社員に聞く!方眼ノートの最強活用法」、5「コクヨステーショナリー|デキる人は知っている!正しい勉強ノートの作り方」)
方眼ノートなら、時間をかけずともきれいで振り返りやすいノートがつくれるのです。
方眼ノートで勉強内容をまとめてみた!
そんな方眼ノートのメリットを体感できるか、筆者も実際に方眼ノートを勉強に使って確かめてみました。今回は日本の近代文学史について勉強したことを、ノートにまとめています。
ノートを書きながら実感したのは「迷いなく書ける」こと。いつも使っている横罫線のノートだと、「どこから書き出そう?」「どのくらい間隔を空けよう?」と迷いながら書くので、時間がかかることが多くあります。しかし方眼ノートなら「3マスあけて書き出そう」といったように基準を明確にできるので、迷う時間が減ってノートをサクサクつくれました。
また完成したノートは文字のサイズや書き出しの位置が揃っていて、いつもの横罫線のノートよりも見やすいと感じました。横罫線のノートでは「なんとなく」でしか揃えられず、キーワードと説明の見分けがつきにくくなることも。ですが方眼ノートへ変えると、統一感が出て、パッと見ただけでわかりやすい紙面となりました。
紀野氏は先の「東洋経済オンライン」の記事で「箇条書きの頭の『・』などは、揃っていないと、ノートを見返したときにストレスに」なると述べており、たしかにそうした問題とは無縁になれるなと感じます。
復習がしやすく、知識を頭のなかへスムーズに入れられるというメリットを、ぜひあなたも体感してみてください。
メリット2.「行動に直結するノート」が書ける
「仕事でメモをとっても、あまり役立っている感じがしない」
「会議や打ち合わせではいつも、何をメモすべきかわからなくなってしまう」
こうしたお悩みを抱えている人は、ノートをインプットの目的だけでしか使えていないかもしれません。
『頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?』などの著書がある高橋政史氏によれば、優秀な人はインプットからアウトプットまでをノート上で行なっているとのこと。
単にお客様との打ち合わせ内容や社内の会議の内容をメモする(インプット)だけでなく、それらの情報を自分なりに解釈し、ロジカルに、次のアクション(アウトプット)に落とし込む。こうした作業をノート上でしているのです。
(引用元:PHPオンライン衆知|できる人が「方眼ノート」を使う理由)
その作業をしやすいノートとして、高橋氏がすすめるのが方眼ノートです。「情報記入のフレームを作ることで、思考が整理しやすくな」る、と高橋氏(カギカッコ内引用元:同上)。マス目に沿って線を引くだけできれいなフレームをつくれるという点で、方眼ノートはぴったりだというわけです。
具体的なやり方は、まずA4の方眼ノートを横向きにして縦線を2本引き、3つの情報記入欄をつくります。左から順に、「事実」「解釈」「行動」の欄です。
なぜこの3つなのかというと、高橋氏いわく、
どんな仕事でも、アウトプットを生み出すには、「事実(得た情報)」を「解釈」して、「行動(アウトプット)」する、というプロセスを踏むことが必要です。
(引用元:同上。太字は編集部にて施した)
それぞれの欄に書く内容は、以下のとおりです。
事実:商談や会議の内容など
解釈:感じたことや疑問
行動:事実と解釈をふまえて次に取るべき行動
(同上資料よりまとめた)
「事実」の欄に書くのがインプット、「解釈」「行動」の欄に書くのがアウトプットにあたる内容です。後者は「会議や商談後に記入しても良い」とのこと。
このようにしてメモをとれば、“事実を自分なりに解釈し、やるべきことを考える” という流れが自然とできる、つまり “行動に移しやすくなる” のです。
打ち合わせ内容を方眼ノートにメモしてみた
筆者はこれまで、仕事のメモを無地の裏紙や横罫線のノートに書いていました。しかし情報がごちゃごちゃになり、「結局どうすればいいんだろう?」とあとになって迷うこともしばしば……。そこで今回、方眼ノートをあらかじめ3分割して、仕事の打ち合わせに臨んでみました。
実際の紙面がこちらです。
打ち合わせ中は、得た情報を「事実」欄へ書き込み、余裕があれば疑問点を真んなかの「解釈」欄へメモ。「行動」の欄は打ち合わせ後にメモを見返しながら埋めました。
話をしながら急いで書こうとすると、情報の整理がおろそかになりがちですが、この方眼ノート法なら急いでいてもきれいに整理されたメモをつくることができました。そのおかげか、メモを見返したときに打ち合わせの内容を楽に思い出せて、次にとるべき行動を考えやすくなりました。「行動力が上がりそう!」と感じましたよ。
メリット3.「スライド作成」の効率が上がる
会議やプレゼンテーションのためにスライドをつくるとき、デザインも決まらなければ構成もまとまらず、完成までに時間がかかる……。そんな人にも方眼ノートはおすすめです。
スライドはパソコンでつくるのに、なぜ方眼ノートが必要なのでしょう? じつは、いきなりパソコン上でスライドをつくり始めてはいけないのです。
講演・講師活動も行なうコンサルタントの清水久三子氏は、研修の参加者を以下ふたつのチームに分け、5枚のスライドをつくらせたそう。
- 「最初からパワーポイントに向かい1時間かけて資料を作るチーム」
- 「前半の30分は『手書き』で内容を考え、残りの30分でスライドを作るチーム」
その結果、時間内にスライドを完成させたのは後者のチームのみ。清水氏は、手書きのプロセスを入れたことにより「全体像を把握しながら考えることができた」こと、「何が大切で、どこを省略すべきなのかの判断がつ」いたことが、スライド作成がうまくいった要因だと分析したとのこと。
まとめると、スライドを効率よくつくるには、あらかじめ手書きしながら考えることが重要だというわけです。
スライド作成の下書き用に、清水氏は「A4サイズの紙を4等分し、その一つをスライド1枚と見立て、文字やグラフ、資料などを書き込んでいく」ことをすすめています。これぐらいの小ささが、情報の詰め込みすぎを防ぐのに有効なのだとか。
また清水氏自身は、研修用のスライド作成準備に「方眼」を使っているそう。そこで筆者も、A4サイズの方眼ノートを使い、スライドの下書きイメージをつかんでみることとします。
方眼ノートを使ったスライドの下書き例
今回、売上改善策に関するプレゼンテーションをイメージして、スライド例の下書きをしてみました。
方眼ノートだと、無地や横罫線のあるものよりグラフや図形を書きやすいことを実感。きれいに書かなくちゃ……などと気をとられすぎずにすんだので、これなら肝心のアイデアをしっかり伝えられそうだと思いました。
清水氏と同じく、スライドの下書きに方眼ノートを使うというコンサルタントの多武高博氏は、「方眼の罫線」は「考えを描き出すとっかかりになってくれる」と考えているそう。必要な要素を書き出したり、4コマ漫画のようにしたりしながら、「一つのストーリーとして筋が通るためのプロット」をつくっているとのこと。(カギカッコ内引用元:同上)
ストーリーとしての全体の流れを把握しながら、効率よくスライドをつくるのに有効な方眼ノート。マス目を使い文字の位置やサイズを調整すれば雑多にならず、ノートをもとにスライドを清書するときも見やすいはずです。今回は、スライド作成のイメージをつかむにとどめましたが、実際にスライドをつくる機会がきたらぜひやってみたいと思います。
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方眼ノートは、勉強にも仕事にも活用できます。ぜひ、今回ご紹介した方法でメリットを体感してみてください。
(参考)
東洋経済オンライン|東大王が語る「美しすぎるノート」を作る納得理由
東洋経済オンライン|コクヨ社員に聞く!方眼ノートの最強活用法
コクヨステーショナリー|デキる人は知っている!正しい勉強ノートの作り方
PHPオンライン衆知|できる人が「方眼ノート」を使う理由
太田あや (2018),『外資系コンサルはなぜ、あえて「手書きノート」を使うのか?』, KADOKAWA.
【ライタープロフィール】
藤真 唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいてわかりやすく伝えることを得意とする。