仕事ができる人は、「先延ばしをしない」ためにあえてやっている思考習慣・行動習慣があるそうです。それらは、先延ばし癖を直せない人や、成功を目指す人にとって貴重な指針となるはず。さっそく紹介しましょう。
1. まずは自分軸で直感的に動く
『0秒で動け』(SBクリエイティブ)の著者で、Zホールディングス株式会社の企業内大学、Zアカデミア学長の伊藤羊一氏いわく、
私が見ているかぎり、行動が速い人は『直感』を多用しながら頭を整理しています。クオリティが低くてもいいから直感で仮説を立て、とりあえずの結論を出し、行動に移す。行動してみてうまくいかなかったら軌道修正する。
とのこと。この繰り返しが経験値を上げ、仮説のクオリティを高めるそうです。ちなみに伊藤氏によれば、「直感は磨くことができる」のだとか。その土台となるのが「『志』と『好奇心』」。志はいわゆる「自分の軸のようなもの」で、それを確立するためには「やはり経験値が必要」とのこと。そして「経験を積むための原動力となるのが、好奇心」だといいます。
(カギカッコ内含む引用元:EL BORDE(エル・ボルデ) by Nomura|行動が早い人は「直感」を使いこなしている! スピード感ある仕事に必要なこと)
また、伊藤氏は行動を決定した(結論を出した)際に、“根拠を後づけ” して、それらに整合性がとれていれば、自信を持って動けるようになるとアドバイスしています。
――たとえば直感が働き、「このやり方なら必ずイベントは成功する」という結論に至ったとしましょう。その際に、「開催地の雰囲気に合っている・斬新な響きがあるのでメディアに取り上げられやすい・ビジュアルイメージをつくりやすい」といった根拠を後づけして、辻褄が合っていれば安心して動けるということです。
つまり、伊藤氏の言葉をもとに起源からの流れをたどってみると、
- 「好奇心」を原動力に「経験」を積む
- 「経験値」を上げて「自分の軸」を確立する
- 「自分の軸」に基づいて「直感的」に判断
- 「根拠」を後づけしながら「行動」に移す
(参考:同上)
となるわけです。これらを簡潔にまとめると、次のような言葉になるのではないでしょうか。

2. とにかく行動量を増やす
組織コンサルティング事業を展開する株式会社識学 代表取締役社長の安藤広大氏は、行動までに時間がかかる原因として、失敗を恐れることや、その行動について納得できない(だから行動前に理解や納得を求めてしまう)場合などを挙げています。失敗を恐れることに関しては、プライドの高さゆえ優秀な人ほど顕著なのだとか。もちろんそれだと確実に行動量が減るわけです。
しかし、実際には成功している人ほど「驚くほどの量」をこなし、「圧倒的に多くの失敗」をしているそう。だからこそ安藤氏は、
- まず「素直にやって」みる
- まず「体に覚えさせてしまう」
- まず「誰よりも数をこなす」
- 「行動量を増やすことだけ」を考える
といったことをアドバイスしています。 同氏いわく、
実際にやってみて、「そういうことだったのか」と気づくのが正しい順番です。
とのこと。つまり、
根本的な「理解」や「腹落ち」は遅れてやってくるもの
なのだそうです。
(参考およびカギカッコ内含む引用元:ダイヤモンド・オンライン|「すぐやる人、先延ばしする人…」凡人が高学歴の人に勝てる、決定的な理由)
働き方改革の支援を行なう、株式会社クロスリバー代表取締役社長の越川慎司氏も、人事評価で上位5%に入るビジネスパーソンの大きな特徴として「行動ファースト」を挙げています。同氏いわく、
とてもシンプルですが、生産性を高めるには、止まって考える時間より、「動きながら考える」ことが重要だったのです。
とのこと。だからこそ失敗も経験するわけですが、
早い段階で失敗をしているので、そのリカバリーも早く、次の行動に活かして成功確率を高めていっている
のだそうです。これを越川氏は「修正力が高い」と表現しています。
(カギカッコ内含む引用元:マネー現代 | 講談社|人事評価で「上位5%」に入った人たちの働き方「驚きの共通点」)
こうした識者らの知見は、次のようにまとめることができるはずです。
3. とことん定量化思考になる
前出の安藤氏が挙げた先延ばしの理由には、ほかに「何をすればいいかが明確じゃないから」といったものもあります。具体的には、「計画や目標の中に数字がないから次に移れない」のだそうです(カギカッコ内引用元:前出の「ダイヤモンド・オンライン」記事)。
また、行動科学マネジメントの第一人者で、株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼CEOの石田淳氏によると、行動科学の世界においては、以下に示した「MORSの法則(具体性の法則)」の4要素がそろわないかぎり、行動と呼ぶことさえできないそうです。
- Measured(計測できる)=どのくらいやっているかを数えられる(数値化できる)
- Observable(観察できる)=誰が見ても、どんな行動かがわかる
- Reliable(信頼できる)=誰が見ても、同じ行動だとわかる
- Specific(明確化されている)=誰が見ても、何を、どうしているかが明確である
(カギカッコ内含む引用元:日経ビジネス電子版|「不注意だからミスが起きる」というのは大きな誤解)
たとえば「日曜日までに部屋を片づける」と決めたとしましょう。安藤氏に言わせれば、これは先延ばしの原因となる曖昧な言葉であり、石田氏に言わせれば、これは行動を示す言葉ですらないわけです。
そうではなく、「〇月〇日(日)の11時59分までに、机の上を100%(なにも置いていない状態にする)、クローゼットのなかを20%(クローゼット全体の5分の1が空くように)片づける」などとすれば、具体的な行動として認知でき、先延ばしを防げるのではないでしょうか。
これらをシンプルにまとめると、次のように表現できます。
定量化のコツ
せっかくなので、ここからはビジネス数学教育家の深沢真太郎氏の説明を参考に、定量化のコツをつかんでおきましょう。それは「“定義”と“比較”という2つの思考回路を用いること」。
同氏いわく「どんな概念でも数字化することができる」「世の中のあらゆるものは定量化できる」とのこと。“気持ち” さえも定量化できるそうですよ。たとえばこうです。
- Aさんには週14回 “ありがとう” と言った。
- Bさんには週7回 “ありがとう” と言った。
- つまり、私のAさんに対する感謝の気持ちは、Bさんへの感謝の気持ちの2倍の量がある。
もちろん、人の気持ちはそうそう単純ではないので、こうした題材はあくまでも定量化のトレーニングとして、自分のなかで楽しむといかもしれません。ただし、感謝を伝えるパフォーマンスを維持したい・上げたいと考えるなら、以下のように「“定義”と“比較”」をしてみることが有効となります。
- 【定義】:感謝を伝えるパフォーマンスを維持するためには、チームメンバーに週14回 “ありがとう” と言う。
- 【比較】:しかし、4日目の現時点ではまだ8回しか “ありがとう” を言えていない。
⇒⇒⇒残りの3日間は、毎日2回「何か手伝えることがないか」聞き、そのタイミングで「〇〇の件はありがとう」と言うようにする。これを実践すれば感謝を伝えるパフォーマンス(週14回のありがとう)を維持できる。
ちなみに深沢氏によると、
「定義」は、定量化を含むあらゆる数学的思考の大前提
であり、
ものごとを定量化するにはいずれにしても「定義」と「比較」が不可欠
とのこと。
(参考およびカギカッコ内含む引用元:EL BORDE(エル・ボルデ) by Nomura|愛すら数値化する定量化思考とは? ビジネス数学教育家が教える、伝わる言葉の作り方)
まずは身近な題材を用いて、定量化のトレーニングを始めてみてはいかがですか?
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仕事ができる人が「先延ばしをしない」ために、あえてやっている3つのことを紹介しました。「なぜ、いままで先延ばしなんかしていたんだろう?」と不思議に思うほど、すぐ行動できる人になれるといいですね。
(参考)
EL BORDE(エル・ボルデ) by Nomura|行動が早い人は「直感」を使いこなしている! スピード感ある仕事に必要なこと
EL BORDE(エル・ボルデ) by Nomura|愛すら数値化する定量化思考とは? ビジネス数学教育家が教える、伝わる言葉の作り方
ダイヤモンド・オンライン|「すぐやる人、先延ばしする人…」凡人が高学歴の人に勝てる、決定的な理由
マネー現代 | 講談社|人事評価で「上位5%」に入った人たちの働き方「驚きの共通点」
日経ビジネス電子版|「不注意だからミスが起きる」というのは大きな誤解
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