「蛍光ペンでアンダーラインを引きすぎて、何が大事なのか思い出せない」
「テキストに付箋を貼りすぎて、いざ情報を取り出したいときに該当ページを見つけられない」
勉強をはかどらせるために使っているはずの蛍光ペンと付箋が、かえって勉強の効率を下げてしまっているケースは少なくありません。ですが、勉強のスペシャリストや東大生たちは、オリジナルの手法で蛍光ペンや付箋を活用し、勉強の効率化に成功しています。では、その具体的な方法を4つお教えしましょう。
1. 蛍光ペンの「太字と細字」を使い分ける
テキストの紙面が蛍光ペンのラインだらけになったりカラフルになりすぎたりして、本当に重要な箇所がわからなくなりがちな人は、蛍光ペンは1色に統一し、太いほうと細いほうを使い分けながら線を引いてみましょう。
資格コンサルタントで勉強法に関する著書を数多くもつ高島徹治氏は、重要箇所に蛍光ペンで線を引くメリットとして「記憶をつかさどる脳の海馬と前頭前野に刺激を与えて、記憶効果を高めることができる」点を挙げています。ただし、次のように蛍光ペンでマーキングしている人は、その効果を得られないかもしれません。
- 一読めからマーキングしている
- 2色以上使っている
- 重要単語だけマーキングしている
脳神経外科医の築山節氏いわく、初めてテキストを読んでいる最中にはマーキングしないほうがよいとのこと。重要なところがまだ見極められていないからです。脳に「記憶すべき重要な情報」と認識させるには、2回3回と繰り返し読んで本当に覚えるべき内容を見定めてから線を引くことが効果的なのだそう。
また築山氏は、色分けのルールをきちんと決めることなく、多くの色を使ってはいけないと伝えています。というのも、何色を使うかいちいち考えていたら、集中力が妨げられるからです。いままで勉強してきたなかで「ピンクにすべきか、青にすべきか」と迷ったことがある人や、いろんな色でマーキングしていたがテキストの内容が頭に入ってこなかった経験のある人は、思いきってマーキング用の蛍光ペンは1色で統一しましょう。
加えて高島氏は、重要単語だけ線を引く「キーワード方式」というマーキング方法はよくないと言います。単語にしか線を引かないと、復習のときに「どういう意味なのだろう」「どうして重要なのだろう」というように、内容を思い出しにくくなるからです。
そこで高島氏がすすめるのが、重要な文章全体に線を引く「キーセンテンス方式」です。キーセンテンス方式ならマーキングした箇所だけ読めば文章の全体像をつかめるので、効率的に勉強できるとのこと。さらに蛍光ペンの太字側・細字側両方を活用して「単語を太ペン」「単語を説明する文章を細ペン」にすると、重要語句が引き立ってよりよいキーセンテンス方式のマーキングができるそうですよ。太字と細字の使い分け方は、たとえば下記の例を参考にしてみてください。
2. 大事なことは「黄色の蛍光ペン」で書く
「ここは大事なところだ!」と赤ペンでマークしておいたのに、なかなか覚えられない……。そういうことがよくあるなら、赤ペンではなく黄色の蛍光ペンで書いてみてはどうでしょう。『東大合格生のノートはかならず美しい』の著者である太田あや氏によると、東大生のなかには「大事なことを黄色の蛍光ペンで書く」人がいるのだそう。
黄色の蛍光ペンは、ほかの色と比べて色が薄いのが特徴で、文字を書いても読みにくくなってしまいますよね。だからこそ、黄色の蛍光ペンで書かれた文字は、目を凝らして頑張って見ようとするはず。それが、記憶の強化につながると太田氏は述べます。先述のように、脳は重要な情報を記憶しやすいという性質があるため、一生懸命見ようとすると海馬や前頭前野が重要だと認識して、記憶に残りやすくなるのです。
重要語句や頻出単語など自分が覚えたい単語をノートに記録する際は、黄色の蛍光ペンを使ってみてはいかがでしょうか。
3. 「3色の付箋」を使って効率的に本を読む
「ビジネス書をたくさん読みたい」
「テキストや参考文献を効率的に読みたい」
こうしたキャリアアップや学習目的の読書には、「3色の付箋を活用したサーチ読み」がおすすめだと、人材育成コンサルタントで社会人向けに勉強法を提案する清水久三子氏は述べます。サーチ読みとはその名のとおり、目当てのキーワードや使える文章をサーチ(検索)しながら読む読書法です。
3色の役割は以下のとおり。色数は3つと少し多めですが、明確なルールのもとで色分けするので、先述のような集中力の乱れが心配されることはありません。
- 黄色:重要なキーワード
- 青色:データベース用(表、チャートなど)
- 赤色:その他、備考
たとえば、時間術に関するビジネス書を読むとき。目当てのキーワードを「スキマ時間」にしたとしましょう。ページをめくりながら「スキマ時間」と記載されたページに黄色の付箋を貼ります。あわせて「社会人のスキマ時間の活用法」をまとめた表などがあるページには青色の付箋を。そして、「通勤時間」や「昼休みの15分」というようにスキマ時間に関連するページには赤色の付箋を貼ります。
こうしてひととおり読み終えたら、付箋を貼ったページを読み返します。「要点をまとめたページがあるから、前のページに貼った黄色い付箋はいらない」「赤い付箋を貼ったが、スキマ時間との関連性はそれほどないようだ」というように、不要な付箋は外していきましょう。そして、残った付箋にだけキーワードや表の名前などをメモして、今後もすぐ参照できるようにするのです。
清水氏は、このようにして行なうサーチ読みで、2日間に3~5冊は読めるそうですよ。効率よく多くの本を読みたい人には、まさにうってつけの方法だと言えますね。
4. テキストの余白メモは「透明の付箋」に書く
勉強で自分の苦手な分野を克服したいなら、少し大きめの透明の付箋を活用してみてください。余白メモを透明の付箋に書けば復習や苦手発見に活用できると、心理学ジャーナリストの佐々木正悟氏は言います。付箋の貼り方のポイントは次の3つです。
- 余白メモを残したいページで、重要な部分を覆うようにして透明の付箋を貼る
- 付箋に「メモ」を書き込む
- 付箋を貼っている「ページ数」も、付箋に書き込む
たとえば、テキストp.115に「源頼朝を中心に鎌倉幕府が成立した」と書かれている場合。講師が「鎌倉幕府は日本で最初の武家政権という点も重要だ」と口頭でつけ加えたとしましょう。
通常ならテキストの余白に「日本初の武家政権」と書きたいところですが、以下のように透明の付箋を重要な文章全体へ貼って、その上からメモを残します。あわせて、テキストのページ数もメモしてください。
今回はあくまで見やすくするために緑色の水性ペンを使っていますが、透明付箋は水性インクペンだと乾きにくい特徴があるため、実際に使用する場合はシャーペンを使って記入するとよいでしょう。
透明の付箋に書き込んだメモを、復習に活用する方法は次のとおりです。まず、テキストから付箋をはがしてノートに貼ります。ノートに貼った「日本初の武家政権」というメモ書きだけで「鎌倉幕府」と答えられたらしっかり理解できている……ということ。
逆に、透明付箋のメモだけで内容を思い出せない場合は、テキストの読み込みと理解が明らかに足りないと佐々木氏は述べます。そんなときは、付箋にメモしておいたテキストの該当ページをたどって復習を重ねましょう。こうして苦手を発見できるのが、透明付箋のよいところなのです。
透明付箋は、漢字の読み方や意味が分からなかった英熟語などを余白にメモする際も使えます。透明付箋は無印良品や一部文具メーカーで取り扱っていますよ。
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普段なにげなくデスクに置いている蛍光ペンや付箋は、使い方次第でよりいっそう勉強のパフォーマンスを高めてくれます。どれもいますぐできる活用法なので、さっそく取り入れてみましょう。
(参考)
高島徹治 (2012),『寝る前1分記憶術』, ダイヤモンド社.
築山節 (2012),『脳が冴える勉強法 覚醒を高め、思考を整える』, NHK出版.
STUDY HACKER|記憶力が抜群に上がる「東大式ノート術」。蛍光ペンの使い方が普通とは全然ちがった。
佐々木正悟 (2008), 『脳と心を味方につける マインドハックス勉強法』, 日本実業出版社.
【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。