「図書館や自習室だと勉強がはかどるのに、家だとイマイチやる気が出ない」
「誰も見ていないとサボりたくなってしまうので、ひとりで勉強するのは苦手」
このように、家で勉強することが得意ではない人にとって、自宅学習を余儀なくされている現在のような状況はつらいですよね。かといって、諦めて何もしないと、周りと差がついてしまったり、自分の目標を達成できなかったり、後悔するのは目に見えています。
そこで今回は、家で勉強がはかどるようになる方法をご紹介。ぜひ参考にしてみてくださいね。
1. スケジュールを決めて、決断疲れを防ぐ
事前に勉強する時間を決めておかず、なんとなく気が向いたときにダラダラと勉強を始める……そんな人はいませんか。たしかに、家で一日中過ごすのであれば、いつ勉強を始め、いつ終えるかは自由です。しかし、スケジュールを決めずに、なんとなく気が向いたときに勉強を始めるのは、パフォーマンスを下げる原因になりえます。
その理由は、「いつ勉強を始めようかな」と迷うことで、決断疲れを招いてしまうから。私たちは決断すればするほど、精神的に疲れ、重要なことに集中できなくなってしまう傾向があります。
たとえば、スティーブ・ジョブズは、決断するエネルギーを無駄遣いしないために、いつも同じ服を着ていたことで有名。ジョブズでさえ、重要な仕事に力を注ぐために、決断力を節約していたのです。
私たちも、勉強に集中することにエネルギーを注ぎたいのに、勉強を始めることにエネルギーを使ってしまってはもったいないですよね。無駄な決断を減らし、本当に重要なことに力を注ぎましょう。
おすすめは、前日の夜に次の日のスケジュールを決めておくこと。たとえば、「8時に起きて、10時〜18時まで勉強する」「休憩は12時と15時に30分ずつとる」など、紙に書き出しておき、翌日はそれに沿って動くとよいでしょう。
2. 目標を決めて友だちに共有する
自宅でひとりで勉強してもやる気がわかない原因のひとつは、「張り合いがない」ことかもしれません。一緒に勉強する仲間がいたり、厳しくチェックしてくる先生がいたりすると、モチベーションが保てるけれど、誰も見ていないとどうも気合が入らない……なんて人は多いことでしょう。
そんなときは、友だちという存在を有効活用しましょう。つまり、お互いに今日の目標を決め、共有し合うのです。たとえば、朝イチに「今日は教科書の◯ページ〜△ページまで終える」「今日中に単語を30個覚える」など、自分の設定した目標を友だちにシェアします。終了時間も決めておき、その時間になったら、達成できたかどうかを報告し合いましょう。
カリフォルニアのドミニカ大学で心理学教授を務めるゲイル・マシュー博士によると、目標を友人と共有することで達成率が上がるそう。同氏は、次のような実験を行なっています。
- 被験者267名に、4週間で達成したい目標を決めてもらう
- 被験者を2つのグループに分ける
- 片方のグループだけ、目標の達成具合(完全に達成した、もしくは、まだ途中である)を友人に毎週報告させる
その結果、【目標の達成具合を報告させたグループ】の70%以上が目標を達成。【目標を報告させなかったグループ】は、わずか35%程度の被験者しか目標を達成できませんでした。
ひとりで勉強していると、緊張感がないので「誰も見ていないしサボってもいいか」となりがち。友だち同士でお互いを見張る仕組みをつくって、ともに頑張ってみてはどうでしょう。
3. 意識的にストレス発散する
「最近、なぜか集中力がない」「勉強しようとしても内容が頭に入ってこない」など、理由のわからない不調を感じていませんか? その原因は、ストレスかもしれません。外に出かけられないことや、先の見通しが立たないことの不安などによって、気づかないうちにストレスがたまっている人は多いことでしょう。
ストレスを継続的に感じていると、コルチゾールというストレスホルモンが過剰に分泌されてしまい、それが原因で脳に悪影響が生じます。たとえば、神経細胞が減少することで、問題解決能力が下がってしまうことも。ほかにも、海馬が萎縮してしまうことで頭の働きが悪くなり、新しいことを覚えるのが困難になるなどの弊害が生じます。ストレスを放置すると、勉強に支障が出てしまうのです。
しかし、友だちに会ったり遊びに出かけたりできないのに、ストレスをどうやって発散すればいいのでしょう? おすすめは「読書」です。
普段あまり読書しない人からすると「座って活字を読むなんて、余計にストレスがたまりそう……」と感じるかもしれませんが……じつは読書は、音楽を聴く・散歩をする・お茶を飲む・ゲームをするといった行為よりも、ストレス軽減の効果が高いのです。サセックス大学の研究によれば、たった6分の読書で、ストレスが3分の2以上なくなることがわかっています。
何を読むかは自由。小説でも新聞でもいいそうです。普段はあまり読書しないという人でも、たった6分ならばハードルは低いのではないでしょうか?
4. 定期的に立ち上がる
家の中にいると、立ち上がって動き回る機会は少ないはず。通学や通勤もしなくていいですし、狭い部屋の中では、少し手を伸ばせばなんでも届きますよね。でも、座りっぱなしには注意が必要。座り姿勢を長い時間続けていると、頭の働きが悪くなり、生産性が落ちてしまいます。
コーネル大学経済学部のアラン・ヘッジ教授によると、体のポジションを定期的に変えて、脳を休憩させることで、健康も生産性も向上するそう。
同氏は、座る・立つ・歩くをルーティン化させることをすすめています。【20分座って作業をしたら、次は8分立って作業をし、2分手を止めて歩く】。この3つを繰り返すのがよいのだそう。定期的に立ち上がって動き回ることで、脳への血流が増し、頭の働きがよくなるのだとか。
とはいえ、スタンディングデスクなど立って作業できる環境がないと、厳密にこちらのルーティンを遂行することは難しいかもしれません。その場合は、30分おきにキッチンに移動し水を飲んだり、お手洗いに行ったりと、定期的に立ち上がって移動するための工夫をするとよいでしょう。
5. デスクを窓際に移動させる
家の中に終日いると、自然の光を浴びる機会が減ってしまいますよね。しかし、日にあたることは、私たちの健康を向上させたり、集中力をアップさせたりするのに重要な役割を担っています。出かけることができないときも、積極的に日光を浴びる工夫が必要です。
ノースウェスタン大学の研究によると、日当たりの良い環境で働くビジネスパーソンは、そうでない人に比べ、睡眠の質が高く、運動量も多いということがわかっています。また、国立再生可能エネルギー研究所によると、自然光や自然の景色は、ストレスを軽減させ、気分や気力を向上させ、不安を減らし、集中力を上げる効果があるよう。
日光は、集中力や落ち着きを高めるセロトニンというホルモンの働きを助ける効果があります。また、自然の光を浴びることは、体内時計の働きを保つのに重要な役割をしており、睡眠や疲労を改善させてくれるのです。
デスク環境が暗いという人は、作業場所を、窓際などの日当たりのいい場所に移動させてみてください。それが難しい人は、明るいうちに少し散歩をしたり、家の前でラジオ体操をしたりして、自然の光を浴びる時間を1日の中に組み込んでみてはいかがでしょう。
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家の中で勉強をすることが得意ではない人は、カフェや図書館に行くことを好むかもしれません。しかし、自宅にいなければならない状況のときは、ご紹介したように、少しでも快適な空間をつくったり、友だちと協力し合ったりすることなどで、勉強をはかどらせるための工夫をしてみてくださいね。
(参考)
The University of British Columbia|Check less to reduce email stress
Dominican University of California|Study focuses on strategies for achieving goals, resolutions
Wedge Infinity|「脳に良い習慣」で人生を活性化しよう!
The Argus|Reading can help reduce stress, according to University of Sussex research
Cornell University Ergonomics Web|Sit-Stand Working Programs
NREL|A Literature Review of the Effects of Natural Light on Building Occupants
Northwestern|Natural Light In The Office Boosts Health
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。