「同僚にお願いしたいことがあっても、素直に頼み事を切り出せない」
「何か意見を述べても、あまり賛同してもらえない」
人と打ち解けるのが苦手で、社内に味方が少ない気がしたり、敵が多くて周囲から孤立している感じがしたり……。
そんな人間関係に関するお悩みは、あなた自身の振る舞い方を少し変えるだけで改善できるかも。以下にご紹介する4つの対人テクニックを実践すれば、敵を味方に変えることだってできてしまいますよ。円満な人間関係のなかで心地よく働くために、さっそく取り入れてみてください。
1. 5~10秒間「たわいない会話」をする
「あの人を味方につけたい」と思ったら、見かけるたびに積極的に話しかけ、雑談するとよい――そう述べるのは、人事戦略コンサルティングなどを手がける株式会社セレブレイン代表取締役社長の高城幸司氏です。
高城氏いわく、誰かと親しくなるためのコミュニケーションにおいて重視すべきは、「質」より「量」。「お互いに負担を感じず、さらっと終わる話題」を「5秒~10秒間ほどの短時間」行なうのがポイントなのだそう。
たとえば、
- 「元気ですか?」
- 「今日は暑いですね」
- 「ランチは何を食べるんですか?」
といった、情報量がなきに等しい会話でかまいません。
逆に「このあいだのプレゼンは……」「○○部長がこんなことを言ってたんです……」など、内容のあることばかり話しかけると、「話が重くて面倒だ」という印象をもたれてしまい、逆効果になってしまう恐れがあるとのこと。
加えて、廊下ですれ違ったときなど「会ったときには必ず声をかける」ことで会話の機会を増やすことも重要だと高城氏。このことは、心理学の「単純接触効果」により説明がつきます。
精神保健福祉士の川島達史氏の解説によれば、単純接触効果とは「目に触れる回数が増えると、それだけで好感度が上がる心理」。
「とにかく頻繁に話す」というアプローチは、シンプルでありながら、心理学的観点からも、味方をつくるうえで効果を発揮してくれる方法だと考えられるのです。
2. 相手の意見を「即否定しない」
誰かと意見が対立したとき、そのまま敵対関係に陥ってしまうことを回避するには、いったん相手の話を聞き、受け入れることが大切なようです。つまり、意見が違ったからといって、相手を真っ向から否定するのは控えるべきだということ。
フリーランスライター・編集者の藤吉豊氏が、話し方についてのベストセラー100冊を読み込んだところによると、人の意見をすぐさま否定することは、相手を不快にさせる会話スタイルの代表的特徴のひとつだそう。
とはいえ、「自分の意見を折って、相手の意見に迎合すべきだ」というわけではないのだとか。あくまで自分の意見をしっかり伝えながら、同時に相手の意思も尊重してあげる——この対等なバランス感覚をもつことが大切なのだと言います。
具体的には、次のステップで意見を述べるといいそうです。
◆相手に不快感を与えずに、自分の意見を伝えるには……
- 相手の考えをすべて聞き入れる
- そう考える理由を聞く
- 相手の意見を受け入れ、理解したことを伝える
- 自分の意見を、断定的でない言葉で述べる
上記のポイントをふまえた会話の具体例はこちら。
相手「今回の企画は、A案で進めたいと考えているんですが」
あなた「なるほど(STEP1)。そう考えたのはなぜですか?(STEP2)」
相手「A案のほうが予算が安くすむし、売上も見込めそうだからです」
あなた「たしかに! それはごもっともだと思います(STEP3)。ただ長期的なブランディングという観点に立つと、B案も捨てがたいなぁと私は思いました(STEP4)。いかがでしょうか?」
上記のような会話の流れを意識すれば、相手の顔を立てつつ私見を述べることが可能になります。敵対する立場にある人や、意見の合わない人と円満な関係を築く方法のひとつとして、ぜひ覚えておきましょう。
3. 攻撃されたら「あえてほめ返す」
チクリと嫌味を言ってくる同僚、重箱の隅をつつくように批判してくる上司や顧客……なにかと “攻撃してくる人” にはついイラっとしてしまうものですが、真っ向から言い返すのはもちろん禁物。かといってずっと耐え続けたり、無視し続けたりするわけにもいきませんよね。
そこでおすすめしたいのが、ほめるという対処法です。
精神科医のゆうきゆう氏は、そもそも彼らが攻撃的な態度をとる原因は、自分に自信がなく、他者を攻撃することで自分の価値を守ろうとしていることにあると指摘。そんな “攻撃してくる人” たちにほめ言葉をかけ、心を満たしてやれば、攻撃の手も自然に緩むと考えられるそうです。
たとえば嫌味や批判を言われた際は……
- 「勉強になりました」
- 「なかなか鋭いことを言いますね」
- 「いい考え方ですね」
といったほめ言葉を返してみましょう。すると相手は、 「こんなにほめてくれる人を攻撃するのは悪いな」「攻撃したらほめてもらえなくなるかもしれない」と感じ、態度を軟化させる可能性が高いと、ゆうき氏は述べています。
職場にいる嫌な人との関係を改善したいなら、むしろこちらから相手に愛を施すことで “懐柔” することを試みましょう。
4.「プライベートを想像」しながら接する
最後に、職場で味方を増やしたいなら、人と接するうえでの心構えについても知っておく必要があります。
ビジネスコンサルタントの山﨑武也氏は、できるだけ多くの味方をつくることは成功の一条件であり、そのためには気配りが重要であると述べています。
ではどうすれば、うまく気配りができるのでしょう。山﨑氏がすすめるひとつの方法は、私生活を思い浮かべながら職場の人に接すること。
そもそも職場の人間関係とは「利益」をベースに結びついたものですから、友人とも家族とも違う、ドライな接し方になりがちなもの。しかし職場の人たちも、仕事が終わればプライベートな生活があり、愛する家族や恋人や友人がいる「ひとりの人間」です。
そのことを頭の片隅に置いておくだけで、相手への対応が自然と柔らかくなるほか、自身の人間的な温もりを醸し出すことにもつながると、山﨑氏は解説しています。
たとえば、ここまでに挙げたような、嫌味を言ってくる同僚や意見が真っ向から対立したライバルとコミュニケーションをとるときでも、
- この人だって、家では家族に頼られているんだよな。
- この人はどんなプライベートを過ごしているのだろう?
- 仕事以外の趣味や特技、生きがいはなんだろう?
こんな想像をめぐらせたり、実際に尋ねたりすれば、相手との付き合い方やものの言い方がおのずと柔和になるはずだと山﨑氏。結果的に、敵対関係になるどころか、いい味方をつくることにつながります。
一朝一夕には身につかないかもしれませんが、仕事中はぜひ、上記のマインドを意識してみてください。
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職場で人と敵対しがちで悩んでいるなら、上記の4つの方法を用いて不和を解消し、自分を助けてくれる味方を増やしていきましょう。
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。
(参考)
高城幸司(2017年),『社内営業の教科書 上司・同僚・部下を味方につける』, 東洋経済新報社.
Direct Communication|単純接触効果を恋愛,片思いで活かす方法
東洋経済オンライン|嫌われる人の「イラっとする会話」よくある4大NG
東洋経済オンライン|攻撃的な人の「態度を軟化」させるある言葉
山﨑武也(2011年),『なぜあの人には「味方が多い」のか』, PHP研究所.