社内文書や会議でのプレゼンテーション資料、取引先へのメールなど、毎日何かしらの文章を書くなかで、自分はそんなつもりがなかったにもかかわらず相手へ不快感を抱かせてしまった経験はありませんか?
書き方ひとつで印象が大きく変わるのが文章というもの。「相手へ好印象を与える文章を書ける」というのは、仕事において非常に強力なスキルになりえます。そこで今回は、相手へ好印象を与える文章を書くためのポイントを4つご紹介しましょう。
【1】読み手の気持ちを考慮する
せっかく書いた文章が読み手に好印象を与えられなかった……。それはきっと、読む側の気持ちを考慮していなかったことが原因です。
たとえば、社員の採用にあたって募集文を考えることになったとしましょう。事業内容や採用条件などについて記載する必要がありますが、単にそれらの情報を書き連ねただけでは、読み手をひきつけることはできません。
『成功者3000人の言葉』の著者であるライターの上阪徹氏は、自身のキャリアから、そもそも「できればだれも文章なんて読みたくない」のだと伝えています。書き手はそこをスタート地点だと考え、「読みたくない」と思っている人にもなんとか読んでもらえる工夫をしなければならないとのこと。そのひとつとして、文章の構成を練る際には「目的」と「読み手」の条件を定めることが大切なのだそう。
たとえば、先に例示した募集文の目的は「社員を採用すること」。そして読み手は、「新卒学生」や「転職を考えている社会人」などにおのずと絞られますよね。読み手を「この企業に就職したい!」「応募したい!」という気持ちにさせるには、たとえば「○年間離職者ゼロ」「競合他社と比較して高給」「市場が近年拡大しつつある分野」「最寄駅から徒歩5分以内」などの文言を使うことが考えられます。
このように、読み手の気持ちに寄り添った表現を使えば、きっと印象よく最後まで読んでもらえるでしょう。
【2】心遣いを感じさせる表現を差し込む
取引先や同僚へ送るメールの文章は、どうしても定型文になりがち。いつもいつも定型文だと、機械的で印象がよくない場合もあるかもしれません。
しかし、たったひとこと添えるだけでその印象を一変できます。コラムニストの石原壮一郎氏によれば、「今日は一段と暖かく、すっかり春めいてきましたね」「梅雨とはいえ、毎日よく降りますね」のような時候に関する一文が、メールに潤いをもたせるのだそう。
時候の言葉を使用したあいさつは、古くから手紙や礼状を書く際に使われています。少し前は「余計なもの」として省かれることが多かった時候の言葉ですが、現在は大切なビジネスマナーとして見直されているのです。
また石原氏によれば、相手とすでにやり取りがある間柄の場合、「あなたに教えてもらったお店へ行ってみました」「次に会うときは、前に使った喫茶店を待ち合わせ場所にしましょう」など、相手にまつわる内容をひとこと添えるとよいそう。さらに「ご自愛ください」など気遣いの言葉もあわせて使用すると、いっそう親近感が増します。
メールは普段、単なる連絡ツールとしてのみ使用されがち。しかし、書き手の心遣いを感じさせる言葉をほんの少し足すだけで、印象をグッとよくすることができますよ。
【3】言い訳ではなく代替案を伝える
仕事で取引先へ謝罪文を送ることもあるでしょう。そんなとき、書き方に注意すれば、相手に悪印象どころかむしろ好印象を与えられますよ。
まず大前提として、言い訳をしてはいけません。編集プロダクションである株式会社エフスタイル代表の宮田志保氏によれば、相手へ謝罪する文章を書く場合、「理解してもらえているものだと思った」「納品したものだと思っていた」といった言い訳がましい表現は避けるべきだそう。責任を相手へ押しつけるような言葉を使うと、相手の怒りをさらに買ってしまう恐れがあるからです。素直に「大変申し訳ございません」と丁寧に伝えれば、印象はよくなると言います。
そのうえで宮田氏は、代替案を加えることを推奨しています。たとえば、生産ラインをオーバーするほどの大量発注を受けてしまったとしましょう。この場合、単純に「申し訳ございません。ご要望にお応えできません」とするだけでなく、「いますぐの対応は難しいのですが、2週間頂ければ納品できます」というように、条件を変更すれば対応可能なことを取引先へ伝えるのです。ここで重要なポイントは、「2週間」など具体的な数字を組み込むこと。このように伝えれば、相手は「要望を真摯に受け止めてくれているな」と感じ、好印象をもつはずです。
謝罪文は、読む相手に不満を抱かせてしまう可能性が高いもの。しかしその機会を逆手にとり、好印象を与えるチャンスにしましょう。
【4】ミスを指摘するときは、自分の失敗経験も吐露する
仕事のなかでは、どうしても相手のミスを指摘しなければならない場面もあるでしょう。伝える力【話す・書く】研究所所長の山口拓朗氏は、決して「誹謗中傷(=悪口を言って他人をそしること、貶めること)」はすべきでないと言います。してもいいのは「批判(=誤りや欠点を指摘し、正すべきであるとして論じること)」です。
たとえば、新入社員があなたにメールで企画案を提出したとして、あなたがその企画には賛同できないとする内容の返信をするとしましょう。このとき「そのような考えはありえない」などの一方的な言葉や「新入社員というのは知識が不足しているから使えない」のような主観的な表現を使うのはNG。相手に悪印象をもたれても当然ですよね。そうではなく、「その企画には反対だ」と明確な意思を示したうえで「予算的なリスクが高いため、実現不可能ではないか」と論理的な批判を行なうほうがベターです。
また文筆家の三宅香帆氏によると、あえて自分の弱みや失敗をさらけ出すようなエピソードを伝えると、好意的に受け止められやすいそう。先ほどの指摘とあわせて「じつは、自分も前に同じような失敗をした経験があって……」と似た経験があることも吐露すれば、部下に与える印象はよくなります。部下もきっと、言葉を素直に受け入れやすくなるでしょう。
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文章は書き方ひとつで印象がまったく変わります。今回ご紹介した4つの方法を意識すれば、相手へ好印象を与えられる文章を書けるようになりますよ。
(参考)
東洋経済オンライン|文章がどうもうまく書けない人のための処方箋
リクナビNEXTジャーナル|ちょっとした工夫でOK!ビジネスメールで好印象を与える小ワザ
All About|好印象を与えるビジネスメールの書き方
リクナビNEXTジャーナル|SNS投稿で「自滅してしまう人」の特徴
東洋経済オンライン|バズる文章を書く人と書けない人の致命的差
【ライタープロフィール】
亀谷哲弘
大学卒業後、一般企業に就職するも執筆業に携わりたいという夢を捨てきれず、ライター養成所で学ぶ。養成所卒業後にライター活動を開始し、スポーツ、エンタメ、政治に関する書籍を刊行。今後は書籍執筆で学んだスキルをWEBで活用することを目標としている。