「うまい文章を書ける人」には “この3つ” をする習慣がある。

「文章を削る」習慣01

伝えたいことがいろいろとありすぎて、結局まとまらない。
自分の文章なのに、何を言いたいのかわからない文になる。
でも、どうすればうまい文章を書けるのかわからない……。

そのような人に紹介したいのは、「書いた文章を削る」という少し意外な文章メソッドです。文章を削っていくことのメリットに焦点を当て、うまい文章構成の方法を学んでみましょう。

うまい文章を書ける人は、文章を削りまくっている

前職ではWebライターとして数千を超えるWeb制作に関わり、現在は株式会社YOSCAの代表取締役を務める宮嵜幸志氏は、「文章を削る」意義について次のように語っています。

文章を書いていると、あれもこれもと盛り込みすぎて、書いている本人は大作だと思っていても、読み手にとっては「何を伝えたい文章なのか分からない」というケースはよく見受けられます。(中略)不要な部分は削って、読み手に役立つ、伝えたいと思うことを一つに絞り執筆することをお勧めします。

(引用元:フリーライターのよりどころブログ|読みやすい記事の秘訣はダイエット。文章を削る10個のポイント

つまり、文章内の情報が多いと書き手の意図が隠れてしまいやすいため、必要がない情報は思いきって削ったほうがよいのです。

また、博報堂スピーチライターのひきたよしあき氏は、童話『桃太郎』の冒頭部と同じレベルで情報を削るのが理想的だと述べます。というのも、『桃太郎』の冒頭部は、書き手が伝えたいことを「5W1H」を用いた最低限の情報のみで示しているから。実際に冒頭部を読んでみましょう。

「むかしむかし(When)、あるところに(Where)、おじいさんとおばあさんが(Who)いました(What)。」

余計な情報がいっさいないこの文章は、ごく簡潔に書かれているにもかかわらず、必要な情報がスッと入ってきますよね。もしここに、具体的な時代設定や土地名、登場人物の職業といった情報がふんだんに盛り込まれていれば、回りくどい印象をきっと受けたはず。

『桃太郎』の冒頭部は、書き手が伝えたいことを非常に短い文章で明確に伝えている文章である――これこそが、私たちがいつまでも暗唱できるフレーズたる由縁ではないでしょうか。

「文章を削る」習慣02

文章をうまく削るための ”3つ” のコツ

では、どのように削っていけばうまい文章になるのでしょうか? まず、みなさんにAとB、ふたつの文章を読んでもらいましょう。

【A】
寒くなってきましたね。そこで、今日は家で具材がたっぷり入った鍋を食べたのですが、欲張ってたくさんの具材をとろうとしたところ、こぼしてしまい、軽いやけどをしてしまいました。そして、食事のあとはテンションがガクッと落ちてしまい、宿題があるにもかかわらず、何もやる気が起きませんでした。

【B】
今日は鍋を食べたのですが、誤ってこぼしたためにやけどをしてしまいました。そのあとは気分が下がって、宿題もできませんでした。

みなさんは、どちらの文章が読みやすいと感じましたか? おそらく、多くの人がBと答えるのではないでしょうか。ではなぜBのほうが読みやすいと感じるのか、文章を削るポイントを3つ挙げながらご説明します。

1.「余分な修飾語」を削る

Aの文章には「具材がたっぷり入った」など、後ろにくる名詞を修飾する言葉が多く見られますね。プロライター養成講座を積極的に展開している株式会社ジュビリー代表の橋本絢子氏は、具体的な場所や時間を表す修飾語は、読み手にとっては文章の本質を覆い隠してしまうものだと伝えています。

修飾語は、表現をより豊かにし、小説などの作品世界をよりイメージしやすくするために大きな役割を果たします。しかし、ビジネスなど説得力が求められる環境では、書き手が真に伝えたいことを曖昧にしてしまいがち。

Aの文章から修飾語を実際に消してみると、その言葉がなくても文章の内容理解にほとんど影響はありません。したがって、思いきって全部消してしまうのもひとつの手。慣れていないと心配になるかもしれませんが、一度わかりやすい文章をつくることに成功すれば、きっと抵抗感がなくなるはずです。

2.「余分な助詞」を削る

Aの文章でもうひとつ特徴的なのが助詞の使い方。コンピュータハウス ザ・ミクロ東京代表の豊田倫子氏は、助詞が多い文章は長く、読みづらい傾向にあると言います。

たとえば「そこで、今日は家で具材がたっぷり入った鍋を食べたのですが、欲張ってたくさんの具材をとろうとしたところ、こぼしてしまい、軽いやけどをしてしまいました」には、「〜が(逆説)」や「〜ところ(順接)」といった接続助詞が多用されています。明らかに、長ったらしくて読みづらく感じますよね。

ここで説明しておきたいのが、助詞と接続詞の違いです。これらは以下のように、同じ意味のことを違う言葉で表現します。

  • 並列:助詞→「〜たり」、接続詞→「および」
  • 逆接:助詞→「〜が」、接続詞→「しかし」

文章を助詞だけでつないでいくと一文が長くなり、逆に接続詞だけでつなぐと、一文が短くなりすぎてかえって読みづらくなります。したがってBの文章のように、助詞を文中にひとつかふたつ、また接続詞も同じくらいの頻度で用いるのが適切です。見た目がすっきりして、内容もはっきり伝わる文章になりますよ。

3.「遠回しな表現」を削る

Aの文章の最後にある「そして、食事のあとはテンションがガクッと落ちてしまい、宿題があるにもかかわらず、何もやる気が起きませんでした。」という一文は、書き手が意図することを遠回しに伝えている点が、文章を理解しづらくさせています。ここで言いたいのは「宿題ができなかった」ことのはず。それをはっきりと明示していないため、わかりづらくなってしまったのです。

電通コピーライターの橋口幸生氏によれば、遠回しな表現は書き手の個人的な意図で用いられるため、読み手が必ずしも書き手と同じように理解するとは限らないそう。したがって、遠回しな表現をできるだけ避け直接的な表現を使うようにすれば、文章の読みやすさはグッと上がるはずです。

「文章を削る」習慣03

文章を削るタイミングは「ひととおり書ききってから」

最後に、文章を削るタイミングについてお教えしましょう。そのタイミングとは、「すべての文章をひととおり書ききってから」です。

ライター・ジャーナリストの山口拓朗氏は、一度「情熱」で書いて、のちに「冷静」で直すスタンスをとると、伝わりやすい文章を書くことができると言います。

内容と表現を同時に考えながら文章を書き進めることは、なかなか難しいもの。そこで、いったん頭のなかに思い浮かんでいる文章をすべて書き出すことから始めましょう。そのあと、余計な内容や回りくどい表現について、「ここはなくても話が通じるな」「この表現はもう少し直接的にしよう」といった感じで推敲してみてください。

そうすれば、「何を言いたいのかわからない文章」は「簡潔で伝わりやすい文章」に生まれ変わるはずです。

***
文章を削る意義と、その方法論についてご紹介しました。余分な修飾語を削る、余分な助詞を削る、遠回しな表現を削る。この3つの習慣で、あなたの文はうまくなります。「せっかく書いたのに」というネガティブな感情は捨てて、「削った部分もよりよい文章をつくるための糧だ」とポジティブに考えましょう。

(参考)
フリーライターのよりどころブログ|読みやすい記事の秘訣はダイエット。文章を削る10個のポイント
ひきたよしあき(2018), 『博報堂スピーチライターが教える 短くても伝わる文章のコツ』, かんき出版.
仕事に直結するプロライター養成塾|その修飾語、本当に必要ですか?
日経Xtech|分かりにくくイラッとする文章、あの助詞の使いすぎに注意
橋口幸生(2019), 『言葉ダイエット メール、企画書、就職活動が変わる最強の文章術』, 宣伝会議.
リクナビNEXTジャーナル|“伝わる”ための総仕上げ!「●●で直す」と文章はグッとわかりやすくなる

【ライタープロフィール】
YG
大学では日韓比較文学を専攻し、自身の研究分野に関する論文収集に没頭している。言語学にも関心があり、文法を中心に日々勉強中。これまでに実践報告型の記事を多数執筆。効果的で再現性の高い勉強法や読書術を伝えるべく、自らノート術や多読の実践を深めている。

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