些細な違いや細かいことが気になり、深くじっくり考えてしまう。見られているとすごく緊張し、他人の気分にも影響される。そして、とにかくよく疲れ、よく傷つく……。
これはHSPと呼ばれるとても敏感な人の特徴です。もしも思い当たるなら勉強で悩むこともあるのではないでしょうか。そこで今回は、HSPの特性を活かしながら快適に勉強するコツをお伝えします。
時間がかかるけど覚えたらすごい
「HSP(Highly Sensitive Person)」は、中枢神経系の感度の強さと、あらゆる刺激に対する認知処理の深さを表す、SPS(Sensory-Processing Sensitivity)の測定値が高い人だと言われています。つまり、人一倍「感受性」が強く、人一倍「深く考える」ということ。
自身も「刺激追求型」のHSP(HSS)だという、HSP専門のカウンセラー&キャリアコンサルタントのみさき じゅり氏がHSPの人々に話を聞いたところ、次のことがわかったそうです。
HSPは初めての仕事を覚えるのは苦手ですが、その際に「全体的な流れ」や「作業の目的」などを教えてもらうと、理解しやすくなるのだとか。また、一度仕事を覚えてしまうと、すごい力を発揮できるとのこと。同氏が表した「HSPの学習曲線」を見るとよくわかります。
(※みさきじゅり氏の著書『ささいなことに動揺してしまう敏感すぎる人の「仕事の不安」がなくなる本』(秀和システム)内にある図を参考に筆者が作成)
みさき氏によれば、HSPが非HSPに比べて理解が遅いのは、環境や人、時間の流れ、自分の状態など、あらゆる情報を深く細かく処理しているから。その後もなおトライ&エラーを繰り返し、とことん精度を高めるのだそう。それが質の高い成果へとつながるわけです。
ここで注目したいのは、全体の流れがわかれば理解の速度を上げられるということです。これは学習にも活かせるはず。
ミラーニューロンの働きが強い
ミラーニューロンとは、模倣を通して学習したり、他者の行動の意図を理解・予測したり、共感したりする際に働く脳の神経細胞ネットワークのこと。
2014年に『Brain and Behavior』で発表された共同研究の報告によれば、HSPはそのミラーニューロンが活発に働くそうです。共感力の高さは、HSPさんの大きな特徴のひとつだと言われています。
また、他者の模倣を可能にするミラーニューロンは、言語の進化に重要な役割をもつと神経科学者のヴィラヤヌル・S・ラマチャンドラン氏は考えました。これも勉強に活かせそうですね。
楽しいアウトプットがプラスに?
さらに、HSP専門カウンセラーで自身もHSPという武田友紀氏によれば、感じる力や察知する力が強いHSPさんは、どうしてもインプットが多くなりがちなので、こまめにアウトプットすると心が整いやすいそうです。
自分の気持ちを日記やブログ、SNSなどに書いたり、絵を描いたり、歌ったり、友人に話を聞いてもらったりするといいとのこと。絵はノートの端っこに書くラクガキ程度でもいいそうですよ。
また、東北大学脳科学センター教授の瀧靖之氏は、「好き・楽しい」と感じて学ぶと、感情が記憶の定着に好影響を及ぼすと伝えています。記憶をつかさどる脳の海馬のそばに、感情をつかさどる扁桃体があるからです。
ならばHSPさんは、勉強に楽しくアウトプットできる方法を取り入れることで集中でき、覚えやすくなるのではないでしょうか。
HSPさんが快適に勉強するために必要なこと
以上をふまえると、HSPさんが快適に勉強するために必要なことは次の3つです。
1. 全体の流れを把握できるようにする
前出の瀧氏によれば、「どこまで学んだか」を常に把握できると、脳はストレスを感じにくいそうです。先に全体の流れがわかればHSPさんの理解度が高まることもお伝えしました。
ならばHSPさんの勉強のお供には、全体の流れを把握しやすいように、慣れ親しんだ教科書か薄めの参考書がおすすめです。ちなみに多くの東大生は、教科書が一番わかりやすいと言うそうですよ。
2. ミラーニューロンの強さを活かす
瀧氏は、人間の脳に模倣を助けるミラーニューロンが備わっているなら、語学習得にシャドーイング(聞いた音を追いかけて復唱)を取り入れない手はないと言います。
それならミラーニューロンの働きが活発なHSPさんこそ、語学の勉強にはシャドーイングがピッタリですよね。
3. 図や絵で楽しくアウトプット
前出の武田氏は、こまめなアウトプットでHSPさんの心が整うと述べ、ラクガキ程度でもいいと伝えています。また、瀧氏は「好き・楽しい」と感じて学ぶと記憶の定着がいいと述べました。
加えてHSPの臨床医として知られる精神科医の長沼睦雄氏は、HSPさんが創造的な感性を備えていると言います。ならばひとりで自由に勉強できるときは、復習のためのアウトプットを絵や図たっぷりに行い、楽しく勉強してみてはいかがでしょう?
(※ノート内:食品機能性の科学編集委員会編集,西川研次郎監修(2008),『食品機能性の科学』,産業技術サービスセンター.)
また、学校ではなく個人で勉強する際は、人の干渉や環境による刺激が少ない場所で勉強することも大切です。気持ちよく勉強ができるといいですね。
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HSPさんが快適に勉強するために必要な3つのことを紹介しました。ぜひお試しくださいな。
【関連記事】
HSS型HSPとは? 矛盾だらけの特徴と、気持ちが楽になるコツ。
(参考)
PMC - NCBI|The highly sensitive brain: an fMRI study of sensory processing sensitivity and response to others' emotions
Edge.org|MIRROR NEURONS and imitation learning as the driving force behind the great leap forward in human evolution
みさきじゅり(2018),『ささいなことに動揺してしまう敏感すぎる人の「仕事の不安」がなくなる本』, 秀和システム.
長沼睦雄(2017),『敏感すぎる心がスーッとラクになる本』, 扶桑社.
髙橋亜希(2016),「Highly Sensitive Person Scale 日本版 (HSPS-J19) の作成」, 感情心理学研究, 第23巻, 第2号, pp.68-77.
ダイヤモンド・オンライン|HSP専門カウンセラーが教える「刺激過多のサイン」と「アウトプット」
NIKKEI STYLE|WOMAN SMART|脳のパフォーマンス最大に 脳医学者お薦めの勉強法
東洋経済オンライン|「お金かけずに東大生」の勉強法が効率的すぎた
独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所|自閉症の人は模倣が苦手?
Wikipedia|ハイリー・センシティブ・パーソン
Wikipedia|Sensory processing sensitivity
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