なぜ “ボス猿タイプ” は危険なのか。 これからは「謙虚で気取らないリーダー」が必要とされる。

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いま企業にとって、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)が重要だといわれています。また、その文化を受け入れ、企業が成功するには、インクルーシブ(包括的)・リーダーの存在が不可欠なのだとか。インクルーシブ・リーダーの特徴と、「包括的な文化を生み出すコツ」を紹介します。

「ダイバーシティ&インクルージョン」とは

さまざまな人・視点を受け入れて組織に生かすこと、それぞれの人が違いを認め合い、多様な能力を発揮して、誰もが組織の一員であると実感できることを、「ダイバーシティ&インクルージョン」といいます。

女性のキャリア推進と組織の変革をサポートするカタリスト社の、元プレジデント兼CEOのデボラ・ギリス氏は、多様な人材が集まっている“現状”を「ダイバーシティ(Diversity)」といい、企業の戦略的な“行動”で生まれるものを「インクルージョン(Inclusion)」と説明しています。

ダイバーシティとインクルージョンの2つが揃わなければ、イノベーションの土壌は育まれないそう。

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「インクルーシブ・リーダーシップ」とは

インクルーシブ・リーダーシップ(Inclusive Leadership)」は、以前からアメリカの教育界で注目されていた概念なのだとか。

あらゆるジェンダーや年齢層、さまざまな文化的背景を持つ人々が集まるダイバーシティの場合、強いリーダーがグイグイ引っ張っていくだけでは、まとめることも、成果を出すことも難しいでしょう。多様な要素すべてを包括(Inclusive)し、それぞれの力を引き出していく能力が必要です。

さまざまな立場の人の力を引き出せる能力が、「包括的(インクルーシブ)な指導力(リーダーシップ)」というわけです(※包摂的ともいう)。

チームメンバーの誰もが、敬意を持って公平に扱われている、尊重されている、チームの一員であると確信できれば、個々のパフォーマンスも高まるはず。

実際に、デロイト・オーストラリアのヒューマン・キャピタル部門パートナー、ジュリエット・バーク氏らの研究では、インクルーシブ・リーダーシップによる効果が示されているそうです。

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「インクルーシブ・リーダーシップ」の特徴

ジュリエット・バーク氏と、同社ヒューマン・キャピタル部門のコンサルタントであるアンドレア・エスペディード氏は、4,100人超の従業員から包括性についてのアンケート調査を行ったそうです。

そして、部下から認定された“包括的なリーダー”たちに聞き取り調査を行い、なおかつリーダーシップに関する学術文献を検証した結果、次の6つが「包括的なリーダーの特性」として認められたとのこと。

  • 多様性と包括性を優先課題とし、取り組みを明言する
  • 謙虚な姿勢を持ち、過ちを認めることができる
  • バイアス(偏見・差別)の認識があり、実力主義の徹底に尽力する
  • 他者への好奇心を示し、言葉に耳を傾け、共感・理解に努める
  • 他者の文化に配慮・適応できる能力(文化的知性: CQ)がある
  • 部下に権限を持たせ、あらゆる思考に気を配り、チームワークを発揮する

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包括的リーダーと、“非”包括的リーダーの大きな違い

バーク氏らによれば、ほとんどのリーダーが「包括的なリーダー」の具体的な行動について知らなかったそう。包括的リーダーシップ能力の自己判断と、部下の認識が同じだったのは約3分の1(36%)のみ。あとの3分の1は自分を過大評価、残りの3分の1は過小評価していたのだとか。

ちなみに、もっとも包括的なリーダーが「自分の知らないことを率直に尋ね謙虚で気取らず文化的な違いを学びながら、部下の名前や仕事を把握しようとしている」のに対し、もっとも包括的では“ない”リーダーは、「威圧的で、部下が意見を述べづらくなる雰囲気をつくり、平等にチャンスを与えず(えこひいきする)、凝り固まった考えを持ち、自分とは異なる意見を無視する」のだそう。

つまり、包括的なリーダーが、平坦な場所でチームの一員として、顔と顔を突き合わせるようにリーダーシップを発揮しているのに対し、“非”包括的なリーダーは、チームがいる場所ではない高いところから、一方的なリーダーシップを放出しているわけです。

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包括的なリーダーと包括的でないリーダーの大きな違いには、重要なポイントが示されています。

重要なのは、いかにもリーダーらしいボス猿タイプが、これから必要とされるリーダーになれるとは限らないということ。逆に、「自分がリーダーになれるわけがない」と感じていた人は、今後インクルーシブ・リーダーシップを発揮できる可能性が非常に高いということです。さらにいえば、誰もがインクルーシブ・リーダーシップを鍛えて発揮し、チームを盛り上げられるということなのです。

リーダーとしての肩書は、後からついてくるでしょう。

チームに包括的な文化を生み出すコツ

ジュリエット・バーク氏とアンドレア・エスペディード氏が、包括的な文化を生み出す方法として示した内容を参考に、個々ができることを5つ挙げます。リーダーであるかないかは関係ありません。以下の5つを実践してみれば、チームの成果があがって昇級・昇格が期待できるほか、信頼の構築・人気度アップなどの恩恵が個々にもたらされるはずです。

  1. 積極的に意見をもらう
  2. 幅広いネットワークで情報交換
  3. 対話を増やし見えていない部分を知る
  4. 皆が多様な能力を発揮することが重要だと明言
  5. 上記を心がけ、ときどき効果や影響力を確認
  • 自分の周囲は以前よりも多様化しているか?
  • 自分の周囲はより協働的に仕事をしているか?
  • 包括的な文化を生み出す自分の活動は他者に模倣されているか?

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デボラ・ギリス氏は、これまでになかった文化をいち早く受け入れ、部下を信頼して権限を与え、謙虚さを持って1人ひとりと向き合っていく姿勢が、インクルーシブ・リーダーの条件だと述べます。

他者を尊重し、興味を抱いて1人ひとりと向き合うことも、包括的な文化を生み出す要因になるということですね。

***
インクルーシブ・リーダーの特徴と、「包括的な文化を生み出すコツ」を紹介しました。インクルーシブ・リーダーシップの能力を伸ばし、優れた成果を生むのもよし、包括的な文化を生み出す中心となり、刺激的で楽しい職場にするのもよしです。よろしければ、参考にしてみてください。

※「社会的包摂:ソーシャル・インクルージョン」は、社会的経済格差から生まれた言葉「社会的排除:ソーシャル・エクスクルージョン」の対義語として、社会的排除をなくし、弱者社会の中に包み込んで(包摂して)いこうという考えから生まれた言葉です。そのため、Inclusive は「包摂的」とも表現されますが、この記事では多様性をすべて受け入れる意味合いで「包括的」と統一しています。

(参考)
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|HBR.ORG翻訳リーダーシップ記事|インクルーシブ・リーダーシップが組織のパフォーマンスを高める 包摂的な人材が備える6つの特性
ITmedia エグゼクティブ|まわりを味方に付けた人が成功する――共に学び、共に創る (1/2)
プレジデントオンライン|「インクルーシブ・リーダー」がビジネス戦略としてのD&Iを加速させる
ノバルティス|ダイバーシティ&インクルージョン
カオナビ人事用語集|インクルージョンとは? ダイバーシティとの違いや企業のメリットについて

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