勉強しても身につかないなら “仕事でよくやる○○” を取り入れて。意外と勉強に生かせる2つの仕事スキル

仕事のスキルを勉強に活かしている女性

「仕事をしながらでも、効率よく勉強して資格をとりたい」
「実際の業務に活用できるような、意味のある勉強をしたい」

でも、そうするための効果的な方法がわからない……。そんな人は、普段の仕事で使っているスキルを勉強に生かしてみましょう。じつは、仕事で使うことの多い “あのスキル” が勉強の効率アップにも役立つのです。勉強にも応用できる仕事のスキルと、実践方法をご紹介します。

1.「クリティカルシンキング」を読書に生かす

「仕事に生かそうと思ってビジネス書を読んでも、実践に至った試しがない」

といったように、勉強しても結局身につかないと感じたことはありませんか?

これに当てはまる方におすすめなのが、ビジネスシーンで使われることの多い「クリティカルシンキング」。たとえば「本当にこのスケジュールでいいか?」のように、物事を批判的にとらえて自問自答することで課題を分析し、解決に導く思考法です。

そんなクリティカルシンキングの “批判的な見方” は、勉強のための読書にも役立ちます。

「別の考え方もあるのではないか?」「ほかの解釈もできるのではないか?」などと自ら考えをめぐらすことにより、本の内容をより深く理解したうえで、自分の状況や課題に応用できるようになるからです。これは、本をただ読んで終わりにした場合では得られないメリット。

このことを示唆しているのは、『東大大全』などの著書をもち、全国で勉強法の講演を行なう現役東大生の布施川天馬氏。布施川氏は、本を読んでいるときに「筆者の言っていることに対して、素直に受け止めすぎ」ると、あとでその内容を思い出せなかったり実践できなかったりすると言います。それを防ぐには、以下の読書術が有効なのだそう。

「筆者の主張に出ている以外の場面、具体例を想定すること」

具体的には、

「筆者の主張が通らないような状況」を自分で設定してみて、その2つの状況を比較する

(引用元:プレジデントオンライン|「読んだ本は忘れない」そんな東大生が実践する"忘れない読書"の3要点

といいとのこと。

書籍には、筆者の主張とその正当性を分かりやすく示すための例が挙げられていますよね。しかしその例からわかるのは「『そのある一場面においてのみ』その主張が正しい」ということ。したがって、本に書かれている筆者の主張や例をそのまま読むだけでは、読者は「他の場面について応用することができない」のです。本を読んでも実践につながらないのは、これが原因だったというわけです。(カギカッコ内引用元:同上 ※太字は編集部が施した)

そこで活用したいのが、クリティカルシンキング。たとえば、読んでいる本のなかに「営業は足で稼ぐべき」という主張があったとすると、次のように考えられます。

【筆者の主張とは逆の見方】
足を使わずに営業で好成績を収めた例は本当にないのか?

↓↓↓

  • 自分が以前リモートで商談をしたところ、対面での商談と変わらない成績を出せたうえに、時間効率もよかった。
  • 過去のデータから足に頼らない営業方法を見いだし、成績を上げた人もいる。

↓↓↓

足で稼ぐ営業ばかりではなく、状況に合わせ、足に頼らない営業方法も考えてみよう。

このように、クリティカルシンキングを通すと、本をただ漫然と読む場合に比べて、自然と理解が深まります。自分の状況に当てはめたり、自分の課題を解決するにはどうしたらいいか考えたりと、一度立ち止まって筆者の主張を検討すれば、仕事に生かしやすくなるのです。「読書をしても身につかない」と悩んでいる人は、取り入れてみてはいかがでしょうか。

クリティカルシンキングを用いて勉強しているイメージ

2.「マトリクス」を効率よい勉強に生かす

「資格試験のために勉強を始めたけれど、やることが多すぎて何からすればいいかわからない……」
「最低限の勉強で、効率よく試験対策ができたらいいのに……」

こうした悩みを抱える人は、「マトリクス」を使ってみましょう。

人材開発や組織変革に携わるコンサルタントで、『仕事の悩み 問題解決』などの著書をもつ生方正也氏は、マトリクスを「「重要度」と「緊急度」の2点から優先順位をつける」方法だと説明しています。「色々な仕事をこの2つの観点で分類し、重要度と緊急度のどちらも高いものから着手する」ことで、スケジュール通りに仕事ができるそうです。(カギカッコ内引用元:生方正也 (2018), 『仕事の悩み 問題解決』, 日本能率協会マネジメントセンター.)

仕事でおなじみのこの手法、じつは勉強にも活用できます。マトリクスを使うことで、無駄のない勉強ができるようになるのです。

教育事業などを手がける現役東大生・西岡壱誠氏が代表を務めるチームドラゴン桜によれば、勉強で「自分がどのように努力すれば結果が出るのか、しっかりとマトリクスで整理することで、結果につなが」る効果が期待できるそう。(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|勉強オンチの彼が「全国4位に」勉強以前の一工夫

なぜなら、マトリクスを使うと主観と客観のズレがなくなり、最適な勉強法がわかるからです。

たとえば、「自分は計算問題が得意だ」と思っていたのに、試験では意外に点数が低かった……という状況を想像してみてください。この場合「自分は計算問題が得意だ」と思っていたこと(主観)と実際の結果(客観)にはズレがあります。それなのに計算問題の演習をせず、ほかの範囲の勉強に時間をかけてしまえば、試験のスコアが上がらないのは当然ですよね。

つまり、効率よく結果を出すには、「本当に得意なのか? 本当に苦手なのか? それを正しく把握」し、注力すべきポイントを明確にしたうえで勉強に取り組むべきだということ。(カギカッコ内引用元:同上)そこで役立つのがマトリクスです。

実際に、色彩検定の試験勉強中である筆者がマトリクスをつくってみることにしました。やり方は、チームドラゴン桜式の方法にのっとります。

「STEP1:縦に「得意」と「苦手」、横に「好き」と「嫌い」と書いたマトリクスをつくる」
「STEP2:そこに、自分がいまから自己分析したいことを書き込んでいく」
「STEP3:シートを完成させて、「好き」「嫌い」「得意」「苦手」という主観と客観を見える化する」

(カギカッコ内引用元:同上)

「好き」と「嫌い」は主観で、「得意」と「苦手」は問題演習の客観的な成績をもとに、試験範囲の単元を4マスに振り分けました。完成した紙面がこちら。

マトリクスを使って単元を振り分けた紙面

マトリクスにすることで、いままで得意だと感じていたインテリアの単元は 「好きなだけで、じつはスコアとしては低い」という発見がありました。反対に、苦手意識のあった色のはたらきの単元は「正解率が高く、じつは得意」であることもわかりました。

そうした発見をふまえて見えてきたのが、自分に本当に合った勉強の進め方です。

チームドラゴン桜によると、「『好き×苦手』なことに向いている勉強法で『嫌い×苦手』な分野に挑むと、やり抜くことが難しくなり、三日坊主になってしま」う可能性があるとのこと。(カギカッコ内引用元:同上)

たしかに「好き×苦手」な単元は、好きなだけあって毎日でも続けられそうですが、「嫌い×苦手」な単元は、なかなかやる気が起こりませんよね。

そこで、筆者は苦手なものを先に食べてしまう要領で、始めの20分で「嫌い×苦手」の単元を勉強することにしました。一方、「好き×得意」の単元には時間を割きすぎないよう、隙間時間にだけ着手することに。これで無駄なく試験対策ができそうです。

マトリクスを通した勉強方法の見直しは、勉強のモチベーションが下がったときやスコアが伸び悩んでいるときにもおすすめです。「好き」「嫌い」「得意」「苦手」を明らかにして、勉強を効率化させましょう。

***
日頃仕事で使っているスキルであれば、なじみがあるぶん、勉強にも取り入れやすいはず。勉強をはかどらせたい人は、ぜひ試してみてくださいね。

(参考)

プレジデントオンライン|「読んだ本は忘れない」そんな東大生が実践する"忘れない読書"の3要点
生方正也 (2018), 『仕事の悩み 問題解決』, 日本能率協会マネジメントセンター.
東洋経済オンライン|勉強オンチの彼が「全国4位に」勉強以前の一工夫

【ライタープロフィール】
藤真唯

大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。

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