企業に勤めるビジネスパーソンであれば、収入を上げるためにも「評価をされたい」と思うのは当然のことです。でも実際には、「しっかり頑張っているつもりなのに、なぜか評価されない」ということも少なくありません。評価される人と、評価されない人にはどんな違いがあるのでしょうか。
著書『時間最短化、成果最大化の法則』(ダイヤモンド社)を上梓した株式会社北の達人コーポレーション代表取締役社長の木下勝寿(きのした・かつひさ)さんは、「まずは『やるべきこと』をきちんと認識すること」をすすめてくれました。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人
あなたがやっていることは、本当に「やるべきこと」か?
みなさんは、仕事において「やるべきこと」をやっていますか? おそらく、ほとんどの人が「当然じゃないか」と思ったはずです。でも、実際にはそうではないケースもよく見られるのです。
自身もプレーヤーとして業績を上げることを求められているリーダーがいるとします。リーダーですから、部下などのメンバーを育てることも「やるべきこと」と言えるかもしれません。でも、もし部下の育成にばかり注力したことで、肝心の業績が下がってしまったらどうでしょう?
部下を育てることも、最終的には業績を上げるためのものです。会社がそのリーダーに求めていること、つまり「やるべきこと」は業績を上げることであって、部下の育成はそのための手段に過ぎません。優先順位が違うのです。
ところが、この優先順位を勘違いしている人が本当に多いというのが私の実感です。しかも、多くは無意識のままそうしてしまっています。無意識のうちに、「これが私のやるべきことだ」と思い込み、じつは自分が「やりたいこと」や「やれること」に逃げているだけなのです。
ですから、そんな勘違いをしていないかどうかをきちんと確認する必要があります。自分が好き勝手にやっておきながら、「上司が評価してくれない」「自分をきちんと見てくれていない」と不満をもつのはおかしな話です。
「私はこれがやるべきことだと考えているが、それでいいのか」ということを上司に確認し、しっかりとコンセンサスをとっておくべきでしょう。
10回本気でチャレンジすれば、誰でも1回は成功する
また、仕事において評価されようと思えば、当然のことながら実績を残すことも求められます。なんの実績も残していないのに評価されることはありません。
そのための方法として、私は「ピッパの法則」というものを推奨しています。やるべきことができたときに、「あとでやろう」と考えるのではなく、「ピッと思いついたらパッとやる」のです。(『最速で仕事をする人の “考え方のクセ” とは? 確実に周囲に差がつく2つの「思考アルゴリズム」』参照)
ただ、この法則に対して、「すぐにやれば成果が出るのか?」「じっくり考えたほうがいいのでは?」といった疑問をもつ人も多いものです。もちろん、そういう考えがあることも私は否定しません。
でも、すぐにやることで行動量を増やせば、それだけ成果につながりやすくなると断言できます。それは、ピッパの法則と、私が言う「10回に1回の法則」というものが合わさることによる結論です。
10回に1回の法則とは、「世のなかは、10回本気でチャレンジすれば誰でも1回は成功するようにできている」という、これまでの経験から導き出した法則です。私は、これまでに「10回本気でチャレンジして1回も成功しなかった人」を見たことがありません。
そう考えると、人の3倍の成果を挙げている人は、人よりも成功確率が3倍高いわけではないと言えます。単純に人の3倍チャレンジしている、3倍行動量が多いということなのです。
1回でも成功すれば、失敗しているあいだも評価は下がらない
ところが、評価をされない人はこのチャレンジができません。失敗を恐れるあまりに考えすぎて動けない、あるいは1、2回の失敗で10回本気でチャレンジする前にやめてしまうのです。
あることに1、2回のチャレンジで失敗してしまった。「これは駄目だ」と思ってまた別のことで挑んで1、2回のチャレンジで諦めてしまう……。そんなことでは、永遠に成果を挙げることはできません。
でも、ただ10回本気でチャレンジすれば誰でも1回は成功するのですから、とにかくチャレンジを続ければいいだけの話です。
そうして、9回の失敗をして1回の成功をつかむことができればしめたものです。その人は、「今後も最初の9回は失敗するかもしれないけれど、10回目には成功できる」ということを体感して学習しますから、その後のチャレンジにも再現性をもって臨むことができます。
そしてまわりからも、「あの人は9回失敗するかもしれないけれど、10回目には成功する」と思われますから、9回の失敗をしているあいだも評価が下がることはないのです。
そもそも、仕事を任せる側の人間からすると、1、2回失敗したくらいで諦めてしまうような人には仕事を任せられません。みなさんもそんな人だと思われないよう、10回に1回の法則を意識して諦めずにチャレンジを続けてみてください。最初から10回分のプランを用意して挑むくらいがちょうどいいと私は思います。
【木下勝寿さん ほかのインタビュー記事はこちら】
最速で仕事をする人の “考え方のクセ” とは? 確実に周囲に差がつく2つの「思考アルゴリズム」
“市場が評価した経営者ランキング1位”の社長が「手帳がタスクでびっしりな人には期待しない」と語る理由。
【プロフィール】
木下勝寿(きのした・かつひさ)
兵庫県出身。株式会社北の達人コーポレーション(東証プライム上場)代表取締役社長。株式会社エフエム・ノースウエーブ取締役会長。大学卒業後、株式会社リクルートに勤務。2002年、eコマース企業・株式会社北の達人コーポレーション設立。独自のウェブマーケティングと管理会計による経営手法で東証プライム上場を成し遂げ、一代で時価総額1,000億企業に成長させる。フォーブスアジア「アジアの優良中小企業ベスト200」を4度受賞。東洋経済オンライン「市場が評価した経営者ランキング2019」1位。日本政府より紺綬褒章8回受章。著書に『売上最小化、利益最大化の法則』(ダイヤモンド社)、『ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング』(実業之日本社)がある。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。