記憶力と集中力がグンと高まる! 「KGBスパイ式記憶術」で最高の脳トレを体感せよ。

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海外の映画やドラマを観ると、とても現実とは思えないスパイ(諜報員)の活躍が華やかに描かれています。もちろん現実世界では、美男美女の諜報員が高級スーツやドレスを着こなして、高級車を乗りまわし、華麗にアクションを披露するなんてことはいっさいなく、目立たぬよう地道な活動をしているのだとか。

それでいてミスは許されず、結果を出し続けるよう求められるので、スパイには日々の鍛錬が不可欠だといいます。なかでも記憶力を高める訓練は、最も重要とされているのだとか。

そこで今回は、経済学者で心理学者、そして経営者でもあるデニス・ブーキン氏と、写真家のカミール・グーリーイェヴ氏が共著した『KGBスパイ式記憶術』を参考に、旧ソビエト連邦時代のKGBで、実際に行なわれていた記憶力の鍛え方を紹介します。

KGB/カーゲーベーと『KGBスパイ式記憶術』

KGB/カーゲーベー(国家保安委員会)とは、ソビエト連邦崩壊まで存在(1954~1991年)した、ソビエト社会主義共和国連邦の情報機関・秘密警察のことです。現在のロシア大統領ウラジーミル・プーチン氏が、若いころに所属していた組織としても知られています。

KGB職員に採用された場合、1年以上にわたり秘密工作訓練と語学研修を受けなければならないとのこと。そのあと各部署に配属されるそう。『KGBスパイ式記憶術』には、そうした実際の諜報員養成スクールの、特に「記憶力」「思考を研ぎ澄ます方法」にフォーカスした演習がまとめられています。

ただし、登場人物はすべて架空。自分が主役の新米スパイ「シモノフ」になったつもりで、ひとつずつ与えられるミッション(読者にとってはストーリーに関する記憶テストや脳トレーニング)をクリアしつつ、意識的に短期記憶から長期記憶へ移行させる方法を学んでいくことができます。

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スパイ:フィクションと現実の違い

『007』シリーズや『ボーン』シリーズ、『ミッション:インポッシブル』シリーズに、ちょっと毛色が違う『キングスマン』、あるいはガイ・リッチー監督が近年リメイクし、再び注目を浴びた1960年代の人気TVシリーズ『0011ナポレオン・ソロ』などなど……魅力的なスパイが登場する映画やドラマは多々あります。

いずれのスパイも銃や最新型のスパイツールを持ち、あらゆるミッションに挑みますが、現実のスパイが持つ最大の武器は、スパイ本人の頭脳だといいます。

なかでも重要なのは、やはり記憶力。 極秘任務なので、「あ、ちょっとメモしとこ」なんて記録を残すことは許されません。

スパイが入手した情報を保管・管理しているのは、ノートでもメモ帳でも、デジタルツールでもなく、訓練でバージョンアップされた自身の「頭脳」なのです。

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こんなスパイは映画の中だけ?

記憶トレーニング1:「シュルテ・テーブル」

スパイが頼れるのは自分の頭脳だけ。だからこそ、大切なのは日々の鍛錬です。

『KGBスパイ式記憶術』には、簡単につくれる「数字の表」、よく新聞などに載っていている「クロスワード」ほか、「マッチ」「トランプ」「地図」など、揃えやすいものを使ったトレーニングが頻繁に登場します。

その中から、数字の表を使う「シュルテ・テーブル」をピックアップしてみましょう。

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「シュルテ・テーブル」※筆者作成

5×5のマスに、1から25までの数字がランダムに配置されているシュルテ・テーブルのやり方は、表の中心に目の焦点を合わせたまま、周辺視野(※後述)だけを使い、より速く1から25までの数字を順番に見つける、といったもの。

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シンク出版株式会社によれば、物のかたちや色をハッキリ認識できる範囲を「中心視」といい、ほぼ明瞭に見分けられる範囲までを「有効視野」といい、それ以外の明瞭に認識しにくい範囲を「周辺視野」と呼びます。

周辺視野を鍛えることは、有効視野を広げること、といっていいのかもしれません。

視力回復/目の健康センター(ビジョンサロン)設立者で、独自に視力回復法を研究・開発している中川和宏先生は周辺視野を、「周囲の状況を広い範囲で把握する力」としています。

周辺視野は、加齢とともに低下するといわれていますが、シュルテ・テーブルを繰り返し訓練することで鍛えられるそう。自制力、注意力、集中力も効率的に鍛えることができるといいます。観察や速読にも役立つのだとか。

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シュルテ・テーブルを行なっていると、「視線を動かして数字をしっかり見たい!」といった衝動や、「周辺の数字が気になる」といった注意散漫がしばしば起こるので、自制力、注意力、集中力が鍛えられると実感できます。

また、周辺視野を鍛えることは、映像記憶(写真記憶・直観像記憶)を鍛えることにもなるはずです。映像記憶とは、視界に入れた対象を映像で記憶することです。

映像記憶が優れていると、本の文字を目で追い情報を頭に刷り込んでいくのではなく、紙面ごとまるまる同時に記憶できるのだとか。

同書でも、たびたび「頭の中で対象の写真を撮るようにして覚える」といったことが書かれています。

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人間は「言語」を得て物事を抽象的に把握する能力が発達したため、映像記憶の能力が衰えたと考えられているそうです。高い映像記憶能力を持つ人もわずかにいますが、大人になってから完全に習得するのは非常に難しいといわれています。

しかし、その定説を覆すかのように『KGBスパイ式記憶術』には、訓練を重ねることで優れた映像記憶を持てる可能性が示唆されています。

そういえば、架空のすご腕スパイ、ジェイソン・ボーンも映画の中で、屋内に入りすぐに「表の車の6台のナンバーをいえる」と、高い映像記憶力を見せつけていました……!!

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ちなみに、カナダのモントリオール大学が開発した脳トレーニングシステムの「ニューロトラッカー」の場合は、視線を固定せず3D画面上に表示される複数の球体を目で追うことで、周辺視野、記憶力、注意力、集中力などを鍛えるといいます。

シュルテ・テーブルの場合も「絶対中心から目は離しちゃいけない!」と頑なに考えすぎず、やんわりルールを守って楽しく、より数多くトレーニングするのがいいかもしれません(スパイを目指すなら別ですが)。

さてさて、数字は1から25まで順番に見つけられたでしょうか。

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※「シュルテ・テーブル」の答え=1~25(透明度高~低)まで色分けしたもの

繰り返しトレーニングを行ない速く見つけられるようになったら、難易度を挙げて7×7の49マスに挑戦してみましょう!

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最初はかなり難しいかもしれませんが、何度もやってみると、あちこちに視線を泳がさず、周辺視野を使い探したほうが、むしろ見つけやすいと感じるようになるはずです。

記憶トレーニング2:マッチならず「つまようじ」

もうひとつ、「つまようじ」を使った記憶トレーニングを紹介しましょう。

『KGBスパイ式記憶術』ではマッチを使っていますが、あいにく身近にマッチがなかったので、「つまようじ」を使いました。 やり方は、こうです。

  1. 「つまようじ」を数本ランダムに置く
  2. ランダムに置かれた「つまようじ」を撮影
  3. 4秒間「つまようじ」位置を記憶
  4. いったん「つまようじ」をまとめる
  5. 4秒経ったら「つまようじ」位置を再現
  6. 撮影したものと見比べる

本来であればマッチを使うこのトレーニングは、半世紀以上にわたって、スパイや戦闘機パイロットの視覚的記憶の訓練に使われてきたのだそうです。

まず、このようにバラバラと、マッチをまねて太いほうの先端を赤く塗った「つまようじ」を適当に置きます。

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これを撮影し、4秒間眺めてから、4秒おいて、記憶を頼りに再現してみます。

つまようじ(マッチ)4本を使った場合は、『KGBスパイ式記憶術』でいうとレベル2。なんだか簡単に思え、完璧に覚えられた気がしました。

――が、

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――あら……?

バッテンになった2本の、向かって左にある2本の向き(赤く塗った部分)が逆になっていました。「ほぼ同じだから、向きが違うくらい……」といいたいところですが、これが重要なミッションなら大変です。

本書の中で随所に登場する脳(記憶)トレーニングは、簡単なレベルから始まりますが、どんどん難易度が上がっていきます。 でも、レベル2でこれだと先が思いやられるなぁ、などと落ち込む必要はないようです。

「最初から完璧にできなくても心配はいらない。地道に鍛錬すれば、成果は必ず現れてくる」とのことです。

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記憶術の3原則

『KGBスパイ式記憶術』によれば、あらゆる記憶術には次の3原則が当てはまるのだそう。

  1. 何かに関連づけて覚え、何かから連想して思い出す
  2. 記憶すべき情報を、視覚的なイメージにする
  3. 感情を伴わせて、記憶を強化する

本書には、記憶のプロも活用している記憶術の「場所記憶法(部屋の中や道のりなど、場所に記憶の対象を配置して覚える)」や、「ストーリー記憶法(覚えたいことをストーリー仕立てにして覚える)」 、大量の情報をインプットする際に役立つ「ツリー構造を使って(カテゴリーごとに分類して)記憶する方法」などのほか、情報の構造を、ひと目でわかるようにするための「マインドマップ」なども紹介されています。

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明日の予定や昨日の出来事をマインドマップにする演習もある

フロー状態(完全に作業に没頭し、そのプロセスを楽しんでいる感覚)に入る方法」や、「脳のための栄養素(タンパク質やヘルシーな脂質など)」なども記されていますが、もちろん、スパイらしい

  • 相手の記憶をかく乱する
  • 相手に干渉して混乱させる
  • 相手の注意力をコントロールする

といったテクニックも紹介されています……!

新米スパイが成長していく工程を楽しむことができ、読み終えたら、もれなく諜報員養成スクールの全段階を進んだことにもなります。よろしければ、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

***
元イギリスの首相、ウィンストン・チャーチル氏は、シェイクスピアの作品を全て記憶し、演説などに引用していたそうです。実際、人間の記憶力の限界はわかっていないのだそう。 映画の中のスパイになった気分で訓練を重ね、あなたも無限の記憶力に挑戦してみてはいかが?

(参考)
デニス・ブーキン著,カミール・グーリーイェヴ著, 岡本麻左子訳(2019),『KGBスパイ式記憶術 単行本』,水王舎.
人と車の安全な移動をデザインするシンク出版株式会社|周辺視野は加齢とともに低下する
ORICON NEWS|脳トレーニングジム「ブレインフィットネス(R)」、知覚認知能力や周辺視野能力を鍛える脳トレシステム「ニューロトラッカー」を6月よりトレーニングに導入
週刊女性PRIME [シュージョプライム] | YOUのココロ刺激する|老眼を放置すべきではない理由「小学生もスマホ老眼に」「目の老化で物忘れが進む」
Wikipedia|ソ連国家保安委員会
Wikipedia|映像記憶

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