覚えたければ「いったん忘れる」のが吉。記憶力向上に効く “ちょっと意外な” 4つのこと。

記憶力維持・向上のためにできること-01

もしも、朝日が昇れば起きて、本能のまま食べて飲んで、日が沈めば寝て……、を繰り返すだけならば、「生命にかかわることだけを記憶しやすい脳」の特性に任せておけばいいでしょう。しかし、高度に発展した人間社会に身を置いて暮らしていくには、意図的な記憶も必要不可欠です。

加えて、加齢やストレス、生活習慣によって脳機能が低下してしまう事態が多発している昨今、みなさんは記憶力維持・向上のために、何かを心がけていますか?

アルバータ大学の神経科学者らによる新しい研究や、過去の研究、専門家からのアドバイスをもとに、「記憶力維持・向上のためにできること」を紹介します。

記憶力のためにできること1:【教養を身につける】

2019年2月11日付で『IOS Press』に 公開されたアルバータ大学の研究では、健康的な記憶力を持つ成人の傾向のひとつとして、【教養がある】ことが挙げられました。

教養こそが最強の武器になると語るジャーナリストの池上彰氏が、日本社会にいま一番足りないものは「教養」であると、2014年に著書で投げかけてから数年経った今、日本はすっかり教養ブームです。

歴史、文学、哲学、芸術、食、科学ほか、さまざまな分野を基礎的に学ぶ「教養」は、世の理を見通すことがき、生涯にわたって活用できるのとのこと。

それに加え、記憶にも役立つとわかったのです。 単なるブームだと横目で見ていた方も、ご自身の記憶力維持・向上のために、興味がわく内容の教養本を読んだり、専門家の話を聞きに行ったりしてみてはいかがでしょう。

記憶力維持・向上のためにできること-02

記憶力のためにできること2:【多言語の習得】

アルバータ大学の研究では、健康的な記憶力を持つ成人の傾向として、【第二言語の習得】も示されています。

脳生理学者で東京大学教授の酒井邦嘉氏いわく、人間の脳は、もともと【多言語】を獲得できるようデザインされているとのこと。 「門前の小僧習わぬ経を読む」ということわざを挙げ、意味や意義などを確認しようとばかりせず、幼児が言葉を吸収するように、普段から覚えたい言語とごく自然に接していれば、年齢に関係なく多言語が習得できると酒井教授は説明しています。

また、パリを拠点とする作家兼歴史家のコーディーC・デリストレリ(Cody C. Delistraty)氏によれば、多言語には驚くべきプラスの副作用があるとのこと。数学や読み、語彙などの標準化されたテストにおいて、得点が高くなる傾向があり、脳の機能低下を抑制する効果もあるそうです。

しかも、流暢に話せるか、話せないかは関係なし。学ぼうとするだけで効果が生まれるとのことですよ。これを機会に、第二言語、第三言語の習得にチャレンジしてみては?

記憶力維持・向上のためにできること-03

記憶力のためにできること3:【いったん忘れて復習】

能力開発コンサルタントの高島徹治氏は、覚えたことを忘れそうになる時に、再び覚えると、記憶が定着すると説明しています。また、覚えたあと忘れて、再び覚えるという繰り返しは、記憶力強化に欠かせないとのこと。

これは、覚えた直後よりも、一定時間が経ってからのほうがよく思い出せる「レミニセンス現象」に関連しています。そのなかで、文章など意味を持った内容の記憶について起こるレミニセンス現象を「バラード・ウィリアムズ効果(1913)」といいます。

心理学者の P・B・バラード博士と、共同研究者のウィリアムズ氏が小学生を対象に実験を行ったところ、授業の「直後」に復習したグループより、「翌日」に復習したグループのほうが、しっかりと授業内容を覚えていたとのこと。

つまり、【いったん忘れる】ということは、「少し時間が経ってから復習したほうが記憶しやすい、脳の性質を考慮する」ということです。

ただし、すっかり忘れてしまわないうちに復習することが重要です。脳研究者の池谷裕二氏によれば、1ヵ月以上の間隔をあけてしまうと記憶が難しいとのこと。まずは覚えた翌日、さらに1週間後、それからさらに2週間後、またさらに1ヵ月後の復習がいいそうです。

いずれも記憶にいい「復習」には変わりないので、脳の海馬の性質を考えたタイミングでしっかりと復習するか、もう少し気楽に「覚える→忘れる→覚える」を繰り返すスタンスで行うかは、あなた次第です。

記憶力維持・向上のためにできること-04

記憶力のためにできること4:【感情を揺さぶって記憶】

『脳の強化書』の著者である加藤俊徳医師は、大脳の内部にある海馬を含んだ領域を「記憶系脳番地」といい、思考や感情と連動させながら記憶できる状況をつくり、そのうえで知識を取り入れることで、しっかりと記憶でき、衰えた記憶力も向上できると説明します。

面白い本と、面白くない本では、前者のほうがよく記憶できるのもそのせい。とはいえ、時には面白くない本も読まなければならない場合もあるでしょう。 そんな時こそ、【感情を揺さぶって記憶】です。

筆者の場合、どうしても、すぐ手が伸びるのは好きなミステリー小説や、興味が強い脳科学や心理学、思考法などの本。もっと勉強したいとは思っているけれど、経済学の本はいつも後回しになってしまいます。

そんななか、読み始めると止まらないミステリー小説で睡眠時間を削らないよう、読書を中断すべく小説を閉じて、読み始めるとすぐ眠くなる経済学の本を開いてみました。すると、意外にも驚くほど理解しやすく、内容がスッと頭に入ってくるのです。

ミステリーを全力で楽しんだ脳は、感情を揺さぶられていい状態になり、苦手な経済学の取り込みを助けたわけです。

理性的に経済学を面白そうだと考えたことはあるけれど、感覚的に面白そうだと感じたのは初めて。これが学ぶ意欲を加速させ、記憶力までも鍛えてくれるのはいうまでもありません。

***
「記憶力維持・向上のためにできること」4つを紹介しました。

1:【教養を身につける】
2:【多言語の習得】
3:【いったん忘れて復習】
4:【感情を揺さぶって記憶】

記憶力がよくなればアウトプットが楽しくなり、会話もグンと弾むはず。ぜひお試しください。

(参考)
University of Alberta|Faculty of Science|Study identifies factors for healthy memory at any age
IOS Press|Modifiable Risk Factors Discriminate Memory Trajectories in Non-Demented Aging: Precision Factors and Targets for Promoting Healthier Brain Aging and Preventing Dementia? 
The Atlantic|For a Better Brain, Learn Another Language 
ダイヤモンド・オンライン| 10歳若返る!簡単に頭を鍛える法|覚える→忘れる→復習、記憶が最も定着する間隔は?  
Wikipedia|レミニセンス 
酒井邦嘉(2018),「脳科学から見た第二言語習得―自然な言語習得法への試論―」,第二言語としての日本語の習得研究 第21号,凡人社,pp.136-148. 
池上彰著(2014),『池上彰の教養のススメ 東京工業大学リベラルアーツセンター篇』,日経BP社.
池谷裕二著(2011),『受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法』,新潮社.
加藤俊徳(2010),『アタマがみるみるシャープになる! 脳の強化書』,あさ出版.

【ライタープロフィール】
StudyHacker編集部
皆さまの学びに役立つ情報をお届けします。

会社案内・運営事業

  • 恵学社

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、大学受験の予備校「学び舎東京」「烏丸学び舎」や、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」を運営。
    >> HPはこちら

  • 学び舎東京

    烏丸学び舎

    東京・京都に校舎を構える個別指導の予備校。勉強に過度な精神性をもちこまず、生徒1人1人に合理的な勉強方法を提示することで「東大・医大に合格できた!」「3ヵ月で偏差値が15上がった!」などの成果が続出。
    >> HP(東京校舎)はこちら
    >> HP(京都校舎)はこちら

  • english company

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >> HPはこちら