思考力は “遊び感覚で” 楽しく鍛えられる。「後出し負けじゃんけん」は最高の脳トレだった!?

記憶力を高めるための「思考力」の訓練方法4選01

勉強や仕事をしていて「記憶力が落ちた……」と悩む人のなかには、「ほかの人の何倍も頑張らなければ!」と必死になって自分を追い込んでしまう人も多くいます。しかし、この頑張りすぎる姿勢が、かえってマイナスになっているかも

記憶を司る脳の海馬を酷使すると、委縮して正常な働きができなくなり、かえって記憶力を落とす原因になる――医学博士の加藤俊徳氏は、こう指摘します。加藤氏によれば、記憶力が悪いと悩む人は、海馬にこれ以上無理をさせるのではなく、「思考力」を高めていくほうがよいのだそう。思考力を高めると海馬の働きが回復し、記憶力もベストな状態に近づいていくとのこと。

今回は、遊び感覚で思考力を楽しく高めるための4つの方法をご紹介します。

【思考力を高める方法1】積極的に “知らない場所” “初めての場所” に足を運ぶ

精神科医の樺沢紫苑氏によれば、行ったことがない場所へ出かけると「アセチルコリン」が活性化するのだそう。アセチルコリンとは、ひらめきや創造力に関わる脳内物質。これが活性化すれば思考力アップが期待できます。

休日にお出かけをしたり、帰宅時に途中駅で下車して散策してみたり、ぜひ知らない場所へ足を運んでみましょう

忙しくて出歩く時間がとれそうにないという場合は、ランチを外食にするだけでもかまいません。その際も、いろんな店を新規開拓したほうがアセチルコリンが活性化すると、樺沢氏はいいます。オフィス周辺に飲食店があまりない場合でも、新メニューが出たら挑戦するなどし、新しいものに触れる機会を積極的につくるようにしましょう。

記憶力を高めるための「思考力」の訓練方法4選02

【思考力を高める方法2】わざと負けるゲームをする

前出の加藤氏は、思考には脳全体の司令塔といわれる前頭葉が大きく関わっているといいます。前頭葉には「こうなりたい」と思い描く姿に向かって集中するための機能が集まっているため、勝ちにいこうとする思考が脳内に定着しているのだそう。

そこにあえて逆らい、わざと負けるようにゲームをするのが思考力を鍛えるトレーニングになると、加藤氏は述べます。特におすすめなのが、オセロや将棋、囲碁といったボードゲーム。これらは、相手の次の一手を読みつつ、あえて負けるように自分の手を考えなければならないため、前頭葉をおおいに刺激します。

囲碁や将棋をたしなむ人に言わせれば、「負けることを前提に打つのは、相当な実力者でなければできない」のだとか。

(引用元:加藤俊徳 (2010),『アタマがみるみるシャープになる! 脳の強化書』, あさ出版.)

上で紹介した類いのボードゲームは、パソコンやスマートフォンアプリでも無料でできるので、手軽に始められるのではないでしょうか。

このほか、スキマ時間にできる方法でおすすめなのが「後出し負けじゃんけん」。皆さんも人生で一度はやったことがあるかもしれませんが、後出しであえて負けるようにグー・チョキ・パーを出してみましょう。無意識に勝とうとしてしまうので、意外と難しいはずです。

記憶力を高めるための「思考力」の訓練方法4選03

【思考力を高める方法3】週に1回「創作料理」にチャレンジする

脳研究の第一人者であり、東北大学加齢医学研究所教授を務める川島隆太氏らの研究によって、「料理」には脳の前頭葉の一部である前頭連合野を活性化させる効果があることがわかりました。前頭連合野の活性は思考を深めることに役立つと、川島氏はいいます。

料理には、メニューを考える・材料を買う・下ごしらえや調理をする・盛りつけをするなどさまざまなプロセスがありますが、いずれも脳の血流を促して活性化させるのだそう。さらに、一緒に食べてくれる人がいれば、幸福感をもたらす「セロトニン」が分泌されるため、ポジティブな思考も浮かびやすくなります

自分の作った料理を、「食べてくれる人がいる」というのも重要です。「美味しい!」と言ってもらえると誰もが嬉しいものですよね。こういったリアクションを求めるために、脳が最大に活性化するという意見もあります。

(引用元:新日本速読研究会|台所で脳は活性化する

前出の加藤氏も料理による脳の活性化を推奨しており、思考力を高めるには、「週に1回、今までつくったことのない創作料理にチャレンジする」のがよいとのこと。

あるいは、創作料理が思い浮かばない人は、残り物のアレンジから挑戦してみるのも手ですね。肉じゃがをリメイクしてコロッケにするなど、ひとつの料理からいろいろな展開を考えることも、思考力アップにつながりますよ。

記憶力を高めるための「思考力」の訓練方法4選04

【思考力を高める方法4】「カラオケ」でストレス発散する

カラオケで声を思いきり出して歌うと、心も体もすっきりしますよね。それもそのはず、カラオケにはストレスホルモンと呼ばれる「コルチゾール」を低下させる働きがあると、鶴見大学歯学部教授・附属病院院長の斎藤一郎氏はいいます。

そして、米テキサス大学で2,000人あまりを対象に実施された心理検査では、コルチゾールの値が高い人ほど、脳内で情報を移動させる「放線冠」と呼ばれる部位などにダメージがあり、思考力が低下することが判明しました。

思考力を高めるためには、思考力低下の原因物質を取り除くことも大切です。ぜひ、気分転換にカラオケに行ってみてはいかがでしょうか。

斎藤氏によると、歌が苦手な人にも同等の効果があるのだそう。

楽しくないときでも、笑顔を作ることで楽しい気分になる。それは笑って楽しかったときの記憶がよみがえるためです。歌っているときは顔の表情筋が動くでしょう。その結果、幸せだった記憶や楽しかった記憶がよみがえり、コルチゾールが下がるのではないかと思われます

(引用元:NIKKEI STYLE|カラオケで気分スッキリには、科学的根拠があった

人前で歌うのが苦手という人は、ひとりカラオケに挑戦してみるのもよさそうですね。自分だけなら意外と楽しめるかもしれませんよ。

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「記憶力が落ちたな……」と感じたときほど、なおさら頑張って暗記などに励んでしまいがち。でも、そういうときは、海馬を回復させるために「思考力アップ」の方法を取り入れてみましょう!

(参考)
加藤俊徳 (2010),『アタマがみるみるシャープになる! 脳の強化書』, あさ出版.
東洋経済オンライン|「デスクでお昼を食べる人」の仕事が遅いワケ
新日本速読研究会|台所で脳は活性化する
加藤俊徳 (2015),『家事で脳トレ65』, 主婦の友社.
NIKKEI STYLE|カラオケで気分スッキリには、科学的根拠があった
Justin B. Echouffo-Tcheugui , at al (2018) ,"Circulating cortisol and cognitive and structural brain measures The Framingham Heart Study" , American Academy of Neurology, 91 (21).

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

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