再評価!京大式カード:現代の資格試験勉強に効く伝統の学習法

白を基調とした勉強机

時代は変われど、学びの本質は変わらない——。

デジタル全盛の現代、「京大式カード」という伝統的な学習法が、意外にも資格試験対策の強力な味方になるかもしれません。

この半世紀以上前に考案された方法が、なぜ今、再び注目を集めているのでしょうか。

忙しい日々の中で資格取得を目指す現代人にとって、この古典的メソッドには驚くべき効果があります。筆者自身、ITパスポート試験の勉強にこの方法を取り入れ、わずか2週間で模擬テストの点数を24点も上げることができました。

本記事では、デジタル時代にこそ効果を発揮する「京大式カード」の現代的活用法をご紹介します。スキマ時間の有効活用から苦手分野の効率的な克服まで、この伝統的手法が現代の学習者にもたらす恩恵を、実践例を交えてお伝えします。

古きを温めて新しきを知る——。学びの王道は、時として意外なところに隠れているのかもしれません。

【ライタープロフィール】
藤真唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。

京大式カードとは

京大式カードとは、情報整理に使うためのB6サイズの紙です。もともと研究者がメモや論文執筆の準備などに使っていましたが、京都大学名誉教授で民俗学者であった故梅棹忠夫氏が、著書『知的生産の技術』で紹介したことから広まりました。

京大式カードの使い方について、手帳評論家の舘神龍彦氏は次のように述べています。

  1. 常に携帯し、気付いたことがあればメモする
  2. 1枚に1つの情報を記録する

(枠内引用元:ITメディア|元祖ライフハック! 梅棹忠夫の京大カードは現代でも通じるか

京大式カードの使い方は、受験勉強でよく見る単語カードに似ていますね。しかし、単語カードよりも大きいB6サイズのカードは、単語以外の文章や図を書き込めるのが利点。この特徴を活かし、資格試験で押さえたいポイントや間違えやすい問題だけをまとめて、勉強に使うことができそうです。

黄色いデスク上で、えんぴつでメモ帳に記入しようとする人の手元

京大式カードを資格試験勉強に活用するメリット

京大式カードを資格試験勉強に活用するメリットは、スキマ時間に勉強しやすい点と、苦手に絞った勉強ができる点です。それぞれ、詳しくご説明します。

メリット1. スキマ時間に勉強しやすい

B6サイズの京大式カードは、コンパクトで持ち運びしやすいため、スキマ時間を使った勉強に適しています。忙しくてまとまった勉強時間をとれない人でも、移動中や寝る前のちょっとした時間を活用して勉強ができます。

むしろ、長時間の勉強よりも、短時間の勉強を繰り返し行ったほうが、記憶にも定着しやすいようです。

株式会社瞬読の代表取締役で『たった1分見るだけで頭がよくなる 瞬読式勉強法』の著者である山中恵美子氏によると、「長時間の連続的な学習は脳への過度なストレスを引き起こし、疲労感を増大させる」ため、暗記には短時間の学習が適しているとのこと。
(上記カッコ内引用元:株式会社 瞬読|暗記力を飛躍的に高める7つの方法とは

つまり、スキマ時間に京大式カードを使って勉強すれば、脳への負担を減らしてパフォーマンスが高い状態で学習に臨めるということですね。さらに、スキマ時間のたびに何度も勉強をすることで、記憶の定着も期待できるでしょう。

メリット2. 苦手に絞った勉強ができる

京大式カードには、苦手な内容に特化した勉強がしやすいというメリットもあります。なぜなら、B6サイズのカードに試験科目をすべて書くのは現実的ではなく、覚えられない内容や重要な項目に絞って書く必要があるためです。

『科学的に脳の力を120%引き出す方法 頭がいい人の勉強法』など、勉強関連の著書を多くもつ精神科医の和田秀樹氏は、実際に受験で京大式カードを使用し、そのメリットを次のように語っています。

カードの効用は、憶えたことと憶えられないことを明確化することにある。たとえば、私は何度も辞書でひいた熟語や、どうしても憶えられない数学の解法などをカード化しておいた。こうすれば自分の暗記していないことがらがはっきりするわけだ。(中略)暗記し残したことをチェックする、一種の「残務整理」に使えるわけである。

(上記枠内引用元:和田秀樹 (2002)|『難関大学も恐くない受験は要領』, PHP研究所

つまり、自分が苦手なことや覚えられない内容を京大式カードに書けば、勉強するたびに「覚えた・覚えていない」をチェックできるということですね。覚えたカードは抜いたり飛ばしたりして、苦手克服に向けた勉強ができそうです。

京大式カードで資格試験の勉強をしてみた

京大式カードの効果を試すべく、実際に資格試験の勉強へ取り入れてみました。筆者はITパスポートという資格の勉強中なのですが、IT関連の用語がなかなか覚えられないため、京大式カードを使って効率化を図ります。

“京大式カード”という商品も販売されていますが、今回はB6サイズのリングノートを用意しました。理由はバラバラのカードよりも、1冊にまとめられたノートの方が管理や持ち運びに便利だと考えたためです。

筆者が用意したB6サイズのリングノート

前出の和田氏は「何度も辞書でひいた熟語や、どうしても憶えられない数学の解法などをカード化」したとのことを受け、過去問を軸に勉強している筆者は間違えた問題の解説をカードに書きました。(上記カギカッコ内引用元:和田秀樹 (2002),『難関大学も恐くない受験は要領』, PHP研究所

さらに、前出の舘神氏が述べている「1枚に1つの情報を記録する」ことも意識。(上記カギカッコ内引用元:ITメディア|元祖ライフハック! 梅棹忠夫の京大カードは現代でも通じるか 太字は編集部が施した)スキマ時間に見やすいよう文字を大きくし、メモをとるための余白も残しました。そして完成したカードの一部が、次のとおりです。

筆者が作成したメモの見開き

画像は筆者が作成した

このカードを、自宅にいるときはデスクの上、移動中はカバンの中に入れて、いつでも手に取れるようにしました。そして、信号の待ち時間や仕事の前後、寝る前などに開いて勉強をしてみることに。この勉強法を、2週間ほど続けてみました。

弱点をスキマ時間で克服できた!

京大式カードを使って約2週間の勉強をした後に模擬テストをやってみたところ、76点と合格ラインを超えることができました。前回は52点だったため、京大式カードの活用は効果があったと言えそうです。特に筆者が感じられたメリットを、以下でお伝えします。

弱点の克服に役立った

筆者は今回、過去問の間違えた部分を京大式カードにまとめました。その結果、弱点の克服に特化した勉強をハードルを下げながら実践できたと思います。というのは、「1枚に1つの情報を記録する」ことを意識することで、自然と解説を簡略化し、短い文章にして覚える工夫を自分なりにするようになったのです。そのおかげで、わからない用語がずらりと並んだ問題集や参考書で勉強するよりも、間違えた問題を繰り返し勉強するハードルが下がったと感じました。

筆者が作成したメモ

さらに、自分の弱点の傾向が明らかになるメリットもありました。完成したカードを見てみると、IT関連の用語のなかでも特に「ISO」など英語に略された言葉が苦手だとわかったのです。そこで、カードを見返すときはこれらの用語の正式名称を唱え、しっかり覚えられるように意識しました。

筆者が作成したメモ

画像は筆者が作成した

これまでの筆者は、苦手な分野の勉強をつい後回しにし、得意な内容に時間をかけてしまう傾向がありました。しかし、京大式カードには間違えた問題、つまり苦手な内容だけをまとめていたので、得意な分野に逃げることなく苦手と向き合えた実感がありました。

スキマ時間の勉強で記憶が定着した

もうひとつ筆者が実感したのは、短時間の勉強を続けることで記憶が定着するということです。スキマ時間に繰り返しカードを見返すうちに、サッと見るだけで用語の意味を思い出せるようになりました。前出の山中氏が述べるとおり「長時間の連続的な学習は脳への過度なストレス」となりますが、京大式カードでは短時間の勉強を繰り返せるので疲労感なく記憶が定着します。(上記カッコ内引用元:株式会社 瞬読|暗記力を飛躍的に高める7つの方法とは

スキマ時間に京大式カードを見て勉強する方法は、忙しくてまとまった勉強時間をとりにくいビジネスパーソンにも最適でしょう。土日に苦手な内容をカードに書き、平日はそれを見て復習を繰り返すことで、効率よく資格試験の勉強を進められるのではないでしょうか。予期せずスキマ時間ができてしまったときも、サッとカードを取り出し勉強できるので便利ですよ。

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弱点をスキマ時間で克服できる京大式カードは、勉強の効率化をしたい人におすすめです。資格試験に向けて勉強を始めたい人はもちろん、すでに勉強中という人も、ぜひ取り入れてみてください。

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