ビジネスパーソンなら、仕事の効率化には自信があるのに、勉強となるとうまくいかない...。そんな経験はありませんか?実は、仕事と勉強は思いのほか似ているんです。仕事のやり方を勉強に応用すれば、両方の効率がグンと上がるかもしれません。
今回の記事では、「効率よく勉強できる人」と「仕事が速い人」に共通する3つのポイントをご紹介します。これを知れば、あなたの仕事も勉強も、きっと変わるはず。
さあ、あなたの成長のカギとなる3つの秘訣とは...? 続きを読んで、今すぐ実践してみましょう!
1. 初速が早い
当然ながら、先延ばしが多い人は仕事と勉強を早く終わらせられません。両方を効率よくこなしている人は、早く着手するクセがあります。
早く着手することが、どれほど仕事に影響を与えるの?——その答えは、働き方改革の支援を行なう、クロスリバー代表取締役の越川慎司氏が紹介する調査結果にあります。(*1)
そこで明らかになったのは、成果を出し続けている人は、一般社員と比べて「すぐに仕事を始める割合が1.8倍から2.3倍も高い」ということです。
にわかには信じがたい数字ですが、越川氏いわく「『初速を早める』→『次のタスクの初速が早まる』」という好循環が生まれるのだそう。(*1)
最初のタスクに早く着手すれば、終わるのも早いはず。となると、次のタスクに取りかかる時間が前倒しになり、そのタスクも余裕を持って終わり——と、“タスクに取りかかるまでの時間”を短くすればするほど、好循環が生まれるわけです。
これは、勉強に置き換えても同じことが言えます。教材を揃えて勉強する時間を決めても、始めるまでにSNSや動画を見ていたら、使える時間をどんどん消費してしまいます。早く成果を出すことが効率的と考えれば、確保した勉強時間をムダに過ごすのは避けておきたいもの。
では、どうすれば、勉強と仕事の初速を早めることができるのでしょうか。越川氏は「『心理的ハードル』を下げる」ことがポイントと語ります。なぜなら、早く取りかかれない理由は、「ゴールの『到達点』ばかりに目を向けている」から。言い換えれば、小さな目標という “ふもと” を意識して見ればいいのですね。
たとえば、今日中に資料を作成するという目標設定で仕事をするなら、
- 仕事しやすいようにデスク環境を整える
- ザックリとした構成を書き出す
- リサーチする情報を書き出し、絞る
もちろん、これでは完成に至りませんから、行動することに慣れてきたのなら「徐々にレベルを上げていく」ことが重要。まずは、軌道に乗せて山を登っていくのです。(*2)
同じく、心理的ハードルを下げることは、勉強面でも初動を早くするのに有効です。勉強の例で言えば、
参考書を開く
→見出しを読む
→太字を読む
→前後の文を読む
→アンダーラインを引く……
など、勉強するステップを細かく分けて、タスクを “小さなもの” という認識に変えていきましょう。「1分あれば終わる」と感じるまでタスクを小さくすれば、すぐ取りかかるクセがつくはずですよ。
2. 優先順位を決めている
勉強も仕事も ”時間” を意識するのなら、思いついたタスクから始めるのは非効率。制限された期間で成果をあげるのなら、優先順位を決めることが大切です。
マッキンゼーを経てエグゼクティブコーチとして活躍する大嶋祥誉氏は、「抱えている複数の仕事に優先順位をつけることは大前提」と語ります。たとえば、重要なタスクだからといって優先し、納期が迫っているものを後回しにすれば、当然支障がでますよね。
そのうえで、大嶋氏がすすめるのが「緊急度と重要度のマトリックス」。このフレームワークを知っている人は、多いのではないでしょうか。イメージは以下の図。
(画像は筆者にて作成)
A→B→C→Dの流れでタスクを処理します。なぜ、4象限に分けて優先順位を見ることが大切なのかというと——
やるべきことが明確になるため仕事に集中でき、スピードをもって高い精度で仕事を進められるようになります。(*3)
ただ優先順位をリスト化するよりも、4象限に分けたほうがやるべきことが明確化しやすいのです。実際に仕事で活用すると、以下のイメージでしょうか。
(画像は筆者にて作成)
これなら、抱えているタスクの流れがひと目でわかります。同時に、ムダな作業であるDの存在にも気づきますよね。マトリックスを使えば、優先度の高いものに意識して集中することができるのです。
言うまでもなく、勉強においても優先順位は重要です。たとえば、資格試験などの期間に制限のある勉強なら、どのタスクから始めればいいのか、どのタスクに時間をかければいいのか、など優先順位を明確にすれば、逆算して計画を立てることもできるはず。
たとえば、筆者の例を挙げれば、韓国語勉強のマトリクスは次のとおり。
(画像は筆者にて作成)
大嶋氏によれば、「緊急ではないが重要」タスクの「優先順位をなるべく上げていく」ことを意識すれば、なお好ましいとのこと。(*3)
たとえば、上記の例でいうと「韓国語の小説を読む」ことは、緊急ではありません。しかし、この勉強を継続していけば、韓国の文化や社会的な背景を知ることができます。すぐには成果にならなくとも、長期的な目線で見れば、学びが大きな成長へとつながるでしょう。
みなさんもタスクに着手する前に、マトリクスを活用して優先順位を明確にしてみてくださいね。
3. 全体の2割に力を入れている
高い成果を求めるなら「すべてに全力を尽くそう」と考えてしまいがち。しかし、速さを重視するなら非効率です。仕事と勉強を効率的に進められる人は、全体の2割に注力します。
『新・独学術』の著者、ロック・インベストメンツ代表取締役の侍留啓介氏は、「『全体の数値の80%は、20%のものが占めている』」という、経済学者のパレートが発見した「パレートの法則」を紹介しています。
業務に当てはめると、必要ではあるものの脳のリソースを多く消費しない事務作業は後回しにしてもいいわけです。一方、複雑かつ集中力を要する、市場調査の分析や企画案の作成などは疲れていない午前中に回すほうが効率的。
仕事は長時間におよぶわけですから、疲れないために作業の力配分を見極めることで、全体を通して集中力を継続させられます。“仕事を速く進める” とは、“全体のパフォーマンスを維持すること” とも言えるでしょう。同時に侍留氏は、勉強にもパレートの法則を応用できると語ります。
ビジネスパーソンが教養として覚えるのであれば、頭から全部覚える必要はありません。覚えるべきは参考書全体の20%で十分です。
(*4)
ただ、勉強内容を20%にまで絞るのは、取捨選択に迷ってしまいますよね。見極めるポイントは侍留氏いわく、「問題集で『問いになっている部分』」なのだそう。
言い換えれば、参考書を先に読みこむのではなく、問題集を読んで “問いになっている部分” を抜き出し、そこを重点的に学べばいいのです。方法としては「解答を見て、解答欄に赤字で答えを書き込んでしまい、そのうえで問題集を暗記する」ことを侍留氏は推奨しています。(カギカッコ内引用元:同上)
侍留氏が提案した方法を、筆者も韓国語の勉強に取り入れてみました。さっそく模擬試験のページにオレンジ色で答えを書き込み——
そして、赤シートで答えを隠して勉強します。
ページをめくる時間を省くことができ、「答えを見る→隠してテストをする→答えを確認する」という流れがスムーズにできます。これなら、「なぜ間違ったのだっけ?」と忘れることもありません。問題集を開けばすぐ勉強できるため、取りかかる心理的ハードルも低くなるでしょう。
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仕事と勉強のやり方は、根底では同じ。どちらの効率化も成功すれば、時間にも心にも余裕をもって着実に成長することができますよ。
※引用文の太字は筆者が施した。
*1 東洋経済オンライン| 「仕事をさっさと始められない人」共通の傾向2つ
*2 東洋経済オンライン|仕事が「早い人」「遅い人」の事前準備の決定的な差
*3 STUDY HACKER|仕事が速い人は「手で書いている」。マッキンゼー流・仕事のスピードアップ習慣
*4 ダイヤモンド・オンライン|教養を一気につけるには「この2割」を知ればいい
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。