旅する自分を “空想” するだけで脳にも心にもメリットいっぱい。休日こそ「空想旅行」に出かけよう!

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休日は意識的に、仕事に役立つ本を読んだり、運動したり、美術館に行って教養を深めたり、可能であれば、経験を増やすべく旅行に出かけたりする。でもときどき、有意義な時間を過ごしていても、まったく別のことを考えてしまう。たまには家でボンヤリ過ごしたいなぁ……、とも思う。

「こんなふうでは、デキるビジネスパーソンにはなれない……?」

いやいや、空想を楽しむことができるなら大丈夫ですよ。脳と心に多大な効果がもたらされるそうです。ワーキングメモリを鍛え、幸福感まで持続するのだとか! さっそく説明しましょう。

旅行の楽しさは「計画すること」にあった

大阪観光大学の宮原道子准教授は、オランダのある研究をWEBマガジンで紹介しています。『Applied Research in Quality of Life』に2010年2月10日付でオンライン公開された研究の目的は、休暇と幸福との関連性について、より深い洞察を得ることでした。

1,530人のオランダ人の「休暇中の人・休暇を取っていない人」を対象に、

  • 幸福感に違いがあるかどうか
  • 旅行後に幸福感が高まるかどうか

を調べたそうです。32週間の調査期間中、実際に旅行に出かけたのは1,530人のうち974人。宮原道子准教授がまとめた内容によれば、調査の結果からわかったことは次のことです。

  1. 旅行を計画し期待するだけで幸福感が上昇し、効果は8週間にわたって持続
  2. 実際に旅行した人の幸福感は旅行時に上昇。旅行後はすぐに元の状態に
  3. 実際に旅行した人で、旅行がストレスフルまたは普通と評価した人は、旅行後の幸福感が上昇しなかった
  4. 実際に旅行した人で、非常にリラックスできたと感じた人たちのみ、旅行後も幸福感が上昇。ただし、効果が続いたのは2週間のみ

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つまり、上記の調査でわかったことは、 

  • 幸福感の上昇は、旅行を計画しているときの期待感によって起こる。
  • 旅行自体はそれほど幸福感を上昇させず、効果も限定的である。

といったこと。また、研究者らは幸福感の低下について、次のように分析しています。

  • 旅行中に幸福感が上昇しなかった理由:同行者との意見の不一致、体調不良など
  • 旅行後に幸福感が続かない理由:楽しい旅行先から仕事に戻るストレスなど

もちろん旅行先で得た知識と経験は、幸福感があろうとなかろうと何にも代えがたいものです。これは間違いありません。

でももし、旅行には行きたいけれど、時間がないとき、少し億劫なとき、あるいは金銭面で無理なときなどは、のんびり気ままに旅行計画を立て、空想上の旅行を楽しむのもいいかもしれません。なにしろ幸福感が8週間も持続しますから。

それに、空想は脳にもいい影響を与えます。

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空想がワーキングメモリを鍛える

もしも、電車やバスに乗っているとき、シャワーを浴びているとき、食器洗いをしているとき、仕事で単純なタスクを行なっているとき、頻繁に “心ここにあらず” の状態になり、いろんな空想を始めてしまうとしたら、あなたは優れたワーキングメモリを持っている可能性があります。

ワーキングメモリの容量が大きい人は、何か別のことを考えていても、無理なく仕事を続けることができるそうです。

2012年3月14日の『Psychological Science』誌に掲載された研究では、米ウィスコンシン大学マディソン校と独マックス・プランク研究所のチームが、ワーキングメモリマインドワンダリングの関係を調べました。

「ワーキングメモリ(作業記憶)」とは、脳が同時に複数の情報や考えを調整・処理するための作業空間のこと。いわゆる、頭の中にある「作業机」のことです。読み書き、計算、会話、家事など、学習や日常生活を支える重要な能力です。
「マインドワンダリング(心をさまよう)」とは、いま行なっている課題や、目の前の出来事から注意がそれて、自発的な思考を行なう現象のこと。いわゆる “心ここにあらず” の状態です。

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研究では、18歳~65歳の参加者に、マインドワンダリングが起きやすい単純なタスクを行なってもらい、何度も「目の前の課題に集中できたか? それとも “心ここにあらず” であったか?」と質問を重ね、そのあとワーキングメモリ容量を測定したとのこと。

その結果、単純なタスクの遂行中にマインドワンダリング状態になっていた人ほど、ワーキングメモリテストでより高得点をあげたそうです。一般的に高いワーキングメモリを持つ人々の場合、注意が必要な難しいタスクのときには、集中力を持続させることが可能です。

つまり、ワーキングメモリに余裕があるからこそ、たとえば簡単な整理やデータ入力に情報収集などの単純作業中に、心をさまよわせる(マインドワンダリング状態になる)ことができるわけです。

同研究を科学ニュースウェブサイトの『Live Science』で紹介した、サイエンスライターの Jennifer Welsh 氏は、単純なタスクを行ないながら心をさまよわせることで、ワーキングメモリが鍛えられると伝えています。

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休日におすすめの空想

2017年8月の『Neuropsychologia』に掲載された米ジョージア工科大学などの研究では、マインドワンダリング流動性知能創造性と、正の相関(片方の値が増加すると、もう片方の値も増加する関係)があるとわかりました。

「流動性知能」とは、新しい場面への適応に必要な能力で、計算力・暗記力・思考力・集中力などが含まれます。「創造」とは新しいものを独自につくり出すことです。

これらを踏まえ、デキるビジネスパーソンになるためにも、ぜひ自由に楽しい空想をしてみてください。ルールはいっさいありません。通勤・通学時の電車やバスの中で、あるいは掃除、洗濯、食器洗いをしながら、もしくは休日のんびりしながらでもOKです。

(【注意】※危ないので車・バイク・自転車の運転中、乗り降りするとき、車や人が多い場所で歩くとき、階段などではやめましょう!)

旅行のパンフレットや旅行サイトを眺めながら空想旅行を楽しむのもいいし、小説を読んだり映画を観たりして、この主人公が「自分だったら……」と想像を広げてみるのもいいでしょう。

ちなみに筆者の場合は、高級マンションのチラシにある間取や内装のイメージ写真などを眺め、自分だったらこの家に、どんなインテリアを施し、どんなふうに生活するかと想像して楽しんでいます。

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ぜひお試しあれ!

***
いくつかの研究成果をもとに、ストレス知らずの空想タイムがワーキングメモリを鍛え、幸福感まで持続させることなどについて説明しました。

いま起こっていることに注意を向けるマインドフルネスが世の中に広まったとき、心をさまよわせるマインドワンダリングが有害だととらわれがちでしたが、いまは本質的に有害ではないことが議論されています。

もちろん、過去の嫌なことばかりに思いをめぐらせる、ネガティブなマインドワンダリングはおすすめしませんが、楽しい空想は積極的に行なうことを強くおすすめします。

(参考)  
SAGE Journals|Psychological Science|The Persistence of Thought: Evidence for a Role of Working Memory in the Maintenance of Task-Unrelated Thinking 
ScienceDirect|Functional connectivity within and between intrinsic brain networks correlates with trait mind wandering  
National Center for Biotechnology Information|PMC|Vacationers Happier, but Most not Happier After a Holiday 
Live Science: The Most Interesting Articles, Mysteries & Discoveries|Daydreaming Is Good for the Mind
大阪観光大学の学生や教員が運営するWEBマガジン|passport|空想旅行をして幸福になろう 
日本社会心理学会|山岡明奈・湯川進太郎|ほどほどに気を散らすのが創造的になる秘訣? 
児童・生徒のワーキングメモリと学習支援(広島大学)|「ワーキングメモリ」とは 
コトバンク|流動性知能(りゅうどうせいちのう)とは

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