「つい長文メールを書いてしまう……」
「2枚にまとめる予定の資料が5枚を超えていた……」
というように、長い文章を書く癖がある人は、ビジネスシーンで2つの損をしています。ひとつは、文章の要点を相手に伝えられないこと。もうひとつは、仕事がデキない人と評価されてしまうことです。
『すぐできる! 伝わる文章の書き方』の著者・赤羽博之氏は、「無駄に長い文章は迷惑だ」とはっきり述べています。
必要以上に長い文章、ムダの多い文章は、忙しい相手の時間を奪うものであり、同じ内容を伝えるのであれば、なるべく相手にかかる負荷を減らすべき――。
(引用元:まいにちdoda|ビジネスパーソンに必要な「文章力」。やりがちな3つのNGとは?)
無駄に長い文章を書いてしまう癖は、4つのポイントを押さえれば直せます。ビジネスパーソンとして成長するため、ぜひマスターしましょう。
【ポイント1】文章を書く前に全体の構成を練る
文章が長くなる人の傾向として挙げられるのは、すべての情報を詰め込もうとすることです。情報は多ければ多いほどよいのでは、と思うかもしれませんが、文章を作るときに大事なのは情報の多さではなく、伝わりやすさです。必要な情報を正しい流れで配置すれば、文章が「ムダに長くなる」ことはありません。
文章が「ムダに長くなる」ことを防ぐには、書きはじめる前に文章全体の構成を考えるようにしましょう。『一瞬で心をつかむ77の文章テクニック』の著者・高橋フミアキ氏によれば、「どんな情報を、どんな順序で、どれだけの分量で書くのか」という設計図を事前に描いておくのが重要なのだそうです。
構成を練る段階で見出しを作るのもポイント。『売れる文章術』の著者・中野巧氏によると、「文章の8割は見出しで決まる」そうです。
見出しを作ることによって文章構成が明確になり、あなた自身、伝える内容をより理解できるようになります。あなたの理解以上に相手は理解できませんので、あなたが理解を深めることは、そのまま相手が理解を深めることにつながります。
(引用元:ITmedia|売れる文章術:文章の8割は「見出し」で決まる)
文章を書き終えてから構成を変更するのは大変ですが、見出しを作る段階なら構成は簡単に変更できます。見出し作りに時間はかかるかもしれませんが、事前に構成をしっかり考えておけば、無駄のない文章を効率的に作成でき、結果として時間の節約になるのです。
【ポイント2】段落の初めに結論を書く
話が長い人を前にして、「結局、この人は何が言いたいんだろう?」と思ったことはありませんか。文章が長い場合も同じ。前置きが長くなると、読み手は「結論を先に言ってくれ!」と感じてしまいます。
先述の高橋氏は、「何が言いたいの?」という不快感を不快感を与えないため、段落の初めに結論を書くことを推奨しています。
とくに物事を詳しく説明したり報告したりする文章で、重宝します。一つの段落が終わったら、次の段落の始めに結果を書く、と覚えておきましょう
(引用元:高橋フミアキ (2014),『一瞬で心をつかむ77の文章テクニック』, 高橋書店.)
結論を最初に書くことは、読み手と書き手それぞれにメリットがあります。読み手は、伝えたいことが何なのかをすぐに理解できるので、時間のロスが減ります。そして書き手は、話題があちこちに飛ぶ「ブレ」を起こさず、スリムな文章を作成できるのです。
【ポイント3】1文あたりの文字数を80字以内に収める
公益社団法人・日本広報協会は、「悪文要素」として“構文” と “語の選択” に次いで“長文” を挙げています。1文あたりの文字数が多いと、主語と述語がわかりにくくなったり、内容が複雑になったりして、読者は混乱しますよね。
『世界のどんな職場でも評価される 無敵の働き方』の著者・篠崎正芳氏は、職場で評価される人について「長文を書かず、1文の長さを80文字以内に収める傾向がある」と述べています。
そこで篠崎氏は、“プロジェクト80” という研修で、文章の精度を高めるトレーニングを始めました。プロジェクト80で教えている、1文を80文字以内に収めるコツは、次の5つです。
- 80文字以上の文があれば分割する
- 1文の中に主語、述語があることを確認する
- それぞれの文を接続詞で適切につなぐ
- 論理の流れが自然であることを確認する
- メッセージの論理と構成を再点検する
ひとつめのコツに関しては、1文にひとつの事柄を書く “一文一義” を意識して文を分割しましょう。ふたつめのコツについては、前文の主語と同じ主語であれば、日本語の特性上、省略しても問題ありません。
基本的に、1文は80文字以内に収めましょう。1文あたりの文字数を意識することで、ぐっと分かりやすい文章を書けるはずです。
【ポイント4】冗長表現をなくし、文章に磨きをかける
構成を練り、1文あたりの文字数を意識すれば、おおむね読みやすい文章に仕上がっていることはず。最後にご紹介するのは、文章に磨きをかけるためのポイントです。
文章の書き方に関する書籍を複数手がけている山口拓朗氏は、文章を書き終えたあとに冗長表現がないか見直すことが重要だといいます。見直すべきポイントは、次の3つです。
- 重複する情報がないか
- テーマと無関係な情報が書かれていないか
- くどい言い回しがないか
「くどい言い回し」のうち特に多いのが、「という」「こと」「ということ」の3つです。例文を挙げましょう。
悪い例)犬という動物は、外を駆けまわることが大好きだということだ。
修正後)犬は、外を駆けまわるのが大好きだ。
無駄に長い文章を書く人は、「ということ」などの言い回しが癖になっている可能性があります。執筆中に癖を自覚するのは難しいので、読み返す段階で修正を入れるか、身近な人に添削をお願いしてみましょう。
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長すぎる文章を書いてしまう背景には、構成の甘さや冗長表現の多用といった原因があります。「甘い構成」「くどい言い回し」などの修正ポイントを押さえれば、読みやすく・伝わりやすい文章を書けるようになりますよ。
無駄のない文章を書けるようになれば、ビジネスパーソンとしての評価が高くなること間違いなし。ぜひ、今回ご紹介したポイントを意識してみてくださいね。
(参考)
まいにちdoda|ビジネスパーソンに必要な「文章力」。やりがちな3つのNGとは?
高橋フミアキ (2014),『一瞬で心をつかむ77の文章テクニック』, 高橋書店.
ITmedia|売れる文章術:文章の8割は「見出し」で決まる
AERA dot. |できる人の文章は「長さ80文字以内」?
日本広報協会|悪文のパターンと出現のメカニズム
リクナビNEXTジャーナル|【体はしぼった!文章はどうだ?】くどい“メタボ文”を改善する「文章ダイエット」の奥義
【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。