目標達成率が爆上がりする。「MACの原則」と「If-Thenプランニング」の合わせ技が最強だった

MACの原則とIf-Thenプランニングの合わせ技1

「ToDoリストを作っても、いつも達成できない」
「やることが多すぎて、いろいろなことが後ろ倒しになってしまう」
「資格の勉強がしたいけど、仕事が忙しくて手が回らない……」

このように、時間を上手に使えていない人は、「計画」のコツを押さえられていないのかもしれませんよ。

今回は、計画を立てるときに有効な「MACの原則」と「If-Thenプランニング」をご紹介しましょう。

日本人は遺伝子的に「計画」が向いている?

「日本人は、遺伝学的に不安を感じやすい」といわれていることをご存じですか?

これは、脳内ホルモンのセロトニンによるもの。セロトニンは、不安感を抑え、楽観性を増加させる脳内物質で、精神を安定させる作用があります。脳にはセロトニントランスポーターという運搬役があり、セロトニンを回収し、再利用しているのだそう。そして、このトランスポーターの型を決める遺伝子があり、遺伝子の型によって再利用の効率が異なっています。そのため、セロトニンの働きにも差が生じるのです。

セロトニントランスポーターの遺伝子は、SS型・SL型・LL型の3タイプに分かれています。SS型は不安を感じやすく、LL型は楽観的、SL型は両者の中間です。米国人はLL型が多数で、SS型は極端に少ないそう。対して日本人はSS型が全体の7割近くを占め、LL型は数%しかいないのだとか。つまり、日本人は、遺伝的に不安になりやすい民族なのです。

脳科学者の中野信子氏は、日本人にSS型が多い理由は災害の多さにあるのではないかと述べています。同氏いわく、災害大国である日本では、SS型すなわち、不安を感じやすい慎重な遺伝子が生き残りやすかったと考えられるそう。

慎重ということは、しっかり計画を立て、準備をすることに向いているということです。不安を感じやすいからこそ、未来に起こりうるネガティブな要素を事前に洗い出し、適切な段取りをつけていくことができるのではないでしょうか? 

では、具体的にどのように計画を立てればよいのでしょうか。ゴールを設定する方法として有用な「MACの原則」と、計画する際のコツとなる「If-Thenプランニング」をご紹介します。

MACの原則とIf-Thenプランニングの合わせ技2

ゴール設定は「MACの原則」に従う

計画を立てる前に重要なのは、ゴールを決めることです。やりたいことや、やるべきことは何なのか、それは本当に自分にとって大事なことなのか、洗い出して考えましょう。

アイントホーフェン工科大学の研究チームが推奨する「MACの原則」は心理学・行動経済学・脳科学など複数の分野で評価の高い論文を分析してまとめた、現時点で最もエビデンスのあるゴールの設定方法と言われています。

MACの原則はM・A・Cの3つの要素から成り立ちます。

  • Measurable(予測可能性):目標が数字として予測可能なこと
  • Actionable(行動可能性):目標を正確に把握し、そこにたどり着くまでのプロセスを明確に書き出せること
  • Competent(適格性):目標を達成することが、自分の価値観に基づいていること

まず、Measurableで目標を数値化することで明確にします。たとえば「企画書が通るように頑張る」よりも「1年以内に、企画書を3つ通す」のほうがわかりやすく、次のActionableにつなげるのに有効です。

Actionableでは、「1年で3つ通すためには、4ヶ月に1つ通す必要がある」「そのためには月20本は企画を考える」など、行動を具体化しましょう。

そして、最後のCompetentが、じつは重要なポイント。人間の行動は、感情に大きく左右されます。「そもそも、この目標は、本当に自分が望むことなのか?」「達成すると、自分の欲望が満たされるのか?」「価値観に反していないか?」など、目標が自分の気持ちに反していないか確認することで、挫折のリスクを減らせます。

MACの原則とIf-Thenプランニングの合わせ技3

成功率を上げるにはIf-Thenプランニング

ゴールを設定したところで、次はその目標を達成するのに有効な「If-Thenプランニング」法をご紹介します。

If-Thenプランニングは、ニューヨーク大学の心理学者であるピーター・ゴルウィッチャー氏が発表した、目標を達成するためのメソッドです。94の研究を考察した結果、目標に対してこのメソッドを実行することで、成功率が上がることが判明。ある実験では、運動プログラムを被験者に課したところ、If-Thenプランニングを実践したグループは91%の確率で継続することに成功し、実践しなかったグループは39%にとどまったのだとか。

方法はいたってシンプル。その名のとおり「もし(If)Xが起きたら、行動Y(Then)をする」と前もって決めておくだけです。たとえば、以下のような例が挙げられます。

  • 月・水・木曜日は、30分早起きしてランニングをする
  • 毎日午後4時に、たまっているメールを返信する
  • 勉強中に集中力が切れたら、窓を開けて5分間呼吸を整える

このように決まりを作ってしまうことで、面倒でも自動的に行動できるよう、ルール化されます。段取り通り計画を進めることを後押ししてくれますよ。

仕事が思うように捗らない人は、「◯時〜△時の間は会議を入れずに、たまったタスクを終わらせる時間に回す」といったルールがいいかもしれませんね。あるいは、仕事が忙しくて勉強時間がとれない人は、「帰宅したら1時間は食事などの自由時間とし、その後30分、勉強する」「夜、疲れて勉強ができない場合はすぐに寝て、翌日30分早起きして勉強する」など、いくつか対処法を考えるのもよいでしょう。

MACの原則とIf-Thenプランニングの合わせ技4

実際にMACの原則・If-Thenプランニングにしたがって計画を立ててみた

筆者が実際にMACの原則とIf-Thenプランニングにしたがい、計画を立ててみましたので、ぜひご参考ください。

まずは、MACの原則を使って「健康のためにランニングを習慣にする」という目標を検証してみました。

「健康のためにランニングを習慣にする」という目標をMACの原則を使って検証した。

Measurableで数字で目標を設定し、Actionableでプロセスを書き出し、Competentで目標の達成が自分の本当の願望であることを確認できました。

※1:関西福祉科学大学の教授で、理学療法士の重森健太氏によると、ランニングをすると、主に「海馬」と「前頭葉」が鍛えられるそう。海馬は記憶力、前頭葉は脳の司令塔として、集中力や計画力、発想力、判断力、思考力、そして感情までも司っています。ランニングは、身体を鍛えると同時に記憶力や集中力、さらには発想力といった脳機能全体を高めることのできる、最強のパフォーマンスアップ・ツールなのだとか。

次に、If-Thenプランニングで、この目標を実践するためのルールを下記のように決めました。

if-thenプランニングを使って目標達成のためのルールを設定した。

前日にランニングウェアを準備することで、朝、気が乗らなくても自動的に着替えて走れるよう工夫しました。また、当日、急遽ランニングができなくなる日もあるかと思うので、その場合は「翌日に必ず実践する」と決めることによって、週3日は必ず走るというノルマを達成させます。慣れないうちは、疲れて眠くなりそうなので、あらかじめ昼寝をするということも決めておきました。

MACの原則とIf-Thenプランニングは、実践してみると、どちらもかなり効果的であることがわかりました。まず、MACの原則を使うことで「この目標は本当に達成したいことなのか?」「現実的に、達成可能なことなのか?」と検証できるため、達成できそうにない目標を立てたり、自分の気持ちに反した目標を立てたりするリスクが減ります。今まで、目標を立てても挫折することがあったのは、最初の段階でこれらを確認していなかったせいだと感じました。

そして、If-Thenプランニングを利用することによって、行動が自動的に生活の中に落とし込まれました。事前に、目標達成を防ぐような落とし穴を洗い出し、こういうことが起こったら(If)このように打破しよう(Then)と考えておくことで、失敗の可能性が下がった安心感もありました。

***
ぜひ、皆さんも「今、抱いている目標は自分の価値観に沿っているのか?」と自分に問いかける時間を作ってみてください。納得のいく目標が決まったら、If-Thenプランニングを利用して実行していきましょう。忙しいビジネスパーソンは日々のTo Doリストをこなすことで精一杯になってしまいがちですが、立ち止まって計画を立てることこそ、達成への近道かもしれません。

(参考)
DIAMOND ONLINE|心配性の日本人が不安を解消するための「究極の一手」
Psychology Today|The Science of Success: The If-Then Solution
DaiGo(2018),『倒れない計画術』,河出書房新社.
東洋経済ONLINE|仕事がデキる人は走りながら脳を鍛えている
ログミーBiz|日本人は生まれつき悲観的?中野信子氏が解説する“不安”の脳科学

【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。

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