「根拠→結論」だと遅い。その逆「結論→根拠」で仕事が圧倒的に速くなる。

「0秒で動く人」は直感の結論から根拠を導く――伊藤羊一さんインタビュー01

現在のビジネスシーンでは、なにより「スピード」が重視されています。Yahoo!アカデミア学長を務める伊藤羊一(いとう・よういち)さんは、その思考の基本として「ピラミッドストラクチャー」を掲げます。

本来は、「根拠→結論」の順で思考するロジカルシンキングの手法ですが、伊藤さんは「結論→根拠」の順で考えるのだそう。その具体的手法を教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

ロジカルシンキングの基本的手法「ピラミッドストラクチャー」

みなさんのなかには、「ピラミッドストラクチャー」という言葉を知っている人もいると思います。これは、ロジカルシンキングの基本的な手法のひとつです。ピラミッドを構成するのは「結論」と「根拠」で、3つくらいの根拠のうえに結論があるという状況を想像してみれば、ピラミッド型になります。そういったことから、この名称で呼ばれています。

本来、ロジカルシンキングでは、それこそピラミッドのように下から積み上げていくように事実から根拠を導き出し、その根拠をもとに結論を導いていきます。もちろん、その正攻法が大切だという場合もあるでしょう。

たとえば、コンサルタントであれば正攻法を使うことが基本になる。なぜなら、感覚的に考えつくような結論ではなく、事実をベースに結論を導いてクライアントが気づかない経営戦略等を提示する必要があるからです。つまり、この場合は、事実から「素の頭」で考えて結論を出すということになります。

ただ、それではやはり時間がかかりますし、そもそも人間は直感から逃れることができない生き物です。そうであるならば、その直感に従った結論からあとづけで根拠を導けばいいのです(『「0秒で動ける人」が大切にしている、たった1つのシンプルな思考』参照)。

「0秒で動く人」は直感の結論から根拠を導く――伊藤羊一さんインタビュー02

結論と「フィットする」根拠を、「出し入れ」によって見つける

たとえば、「いま、私は牛丼を食べたい」という直感による結論があったとします。

その根拠は、某チェーン店のキャッチコピーである「うまい」「安い」「早い」でもいいでしょう。もし午後の会議の時間が迫っているというときなら、それこそ「早い」は説得力のある根拠になります。あるいは、「安い」に注目して「牛丼はいくら」「ハンバーガーはいくら」「立ち食いそばはいくら」という3つの価格を比べることを根拠にしてみてもいいでしょう。

直感に従ってあとづけで根拠を導く方法であれば、この作業は意外なほど簡単で、ものの数分でできるものです。ただ、大事なのはここから。「『うまい』から『いま、私は牛丼を食べたい』」というふうにこれらの根拠と結論をつなげてみて、「いい感じだ」というふうに感じるのか、ビビッときてフィットするのかをチェックするのです。そうするなかで、「これはいまいちだな」と思うような根拠があれば、別のものと入れ替えてみることが重要。その「出し入れ」が非常に大事なのです。

そして、その際には「誰を説得するのか」という意識も持っておく必要がある。自分を納得させるためのものであればともかく、ある誰かを説得するための企画書を作るとき、その誰かを意識しないままでは、説得力のあるロジックを構築できるはずもないからです。

そういう意味では、根拠の「粒感がそろっている」ことも重要です。たとえば、「牛丼を食べよう」と誰かに提案するとき、その根拠が「うまい」「安い」「世界平和に貢献できる」だとしたらどうでしょう? これは極端な例ですが、3つ目の根拠を聞いたら誰もがガクッときてしまいますよね(笑)。これでは相手を説得できそうもありません。根拠の粒感がそろってリズミカルであることで、相手には「それらしく」感じられ、説得力も増すというわけです。

「0秒で動く人」は直感の結論から根拠を導く――伊藤羊一さんインタビュー03

「メタ化」で思考を整理し、誰かに「ぶつけて」プラッシュアップする

また、直感に従うとはいえ、ある程度の客観的な視点は必要です。そのために重視してほしいのが「メタ化」。簡単に表現するなら、「俯瞰する」といってもいいでしょう。私の場合であれば、なにかを考えている自分を、もうひとりの自分が眺めているようなイメージを常に持っています。そういう別の視点こそが必要です。

思考が堂々巡りをしているようなときは、そのもうひとりの自分になって自分に対して話しかけてみる。「私はいったい、なにをもやもやしているんだろう」「もうちょっとここの部分を詰めてみたほうがいいんじゃないかな?」「そもそもなにを考えているんだっけ?」というふうな具合に、です。そうすることで、考えるべきことが整理されていきます。

「0秒で動く人」は直感の結論から根拠を導く――伊藤羊一さんインタビュー04

そして、いまいった「そもそも」を考えることもとても大切になる。結論を出すには直感に従ってもいいのですが、そのあとの考える作業のときには、ともすれば自分の思い込みの袋小路にはまってしまうということもよくあること。そのとき、メタ化によって自分自身を客観視し、「そもそもなにを考えているんだっけ?」と立ち返るわけです。

そのようにして構築したロジックは、上司でも先輩でも同僚でもいいので「ぶつけて」みてください。この世の中には「正解」は存在しません。そのロジックがいいものなのかどうかは、頭で考えているだけでは判断しようがないのです。

誰かにぶつけて意見を聞き、「ゴー」となったら実地で検証する。そうしてなるべく早く「やる」なかで、いろいろなファクトを見つけ、ロジックをブラッシュアップしていく。そういうサイクルをつくり出すことが「0秒で動く」には絶対に必要なのです。

「0秒で動く人」は直感の結論から根拠を導く――伊藤羊一さんインタビュー05

【伊藤羊一さん ほかのインタビュー記事はこちら】
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ロジカルに納得させ、人生を賭けた「想い」で人を動かす
自分を導ける者だけが、優れたリーダーになる
「0秒で動ける人」が大切にしている、たった1つのシンプルな思考
直感が鋭い人は “この3つ” を大事にしている。

【プロフィール】
伊藤羊一(いとう・よういち)
1967年、東京都出身。東京大学経済学部卒業。ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト、Yahoo!アカデミア学長、株式会社ウェイウェイ代表取締役。グロービス・オリジナル・MBA プログラム(GDBA)修了。1990年に日本興業銀行入社。2003年、プラス株式会社に転じ、事業部門であるジョインテックスカンパニーにてロジスティクス再編、事業再編などを担当し、2011年より執行役員マーケティング本部長、2012年より同ヴァイスプレジデントとして事業全般を統括する。2015年にヤフー株式会社に転じ、次世代リーダー育成を行うだけでなく、グロービス経営大学院客員教授として教壇に立つほか、大手企業のアドバイザーなども務めている。著書には、『1分で話せ──世界トップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』『「わかってはいるけれど動けない」人のための──0秒で動け』(以上、SBクリエイティブ)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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