認知心理学の専門家が教える「頭がいい人」になる方法。メタ認知を活用すれば賢くなれる

脳がよく働くイメージ

資格試験のために勉強をしたり、自らの成長のためにビジネス書を読んだりしても成果につながらないとき、「自分は頭が悪いから駄目なんだ……」と落胆してしまう人もいるでしょう。でも、そもそも「頭がいい」とはどのようなことを意味するのでしょうか。「頭の働き=認知」を研究対象とする認知心理学の専門家、大阪大学名誉教授の三宮真智子先生にお話を聞きました。「頭がいい人」になるための鍵を握るのは、「メタ認知」だと言います。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

【プロフィール】
三宮真智子(さんのみや・まちこ)
大阪府出身。大阪大学名誉教授。鳴門教育大学名誉教授。専門は認知心理学、教育心理学、教育工学。大阪大学人間科学部卒業、同大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了、同後期課程単位取得満期退学。1985年、学術博士(大阪大学)。鳴門教育大学講師、助教授、教授、大阪大学大学院人間科学研究科教授などを歴任。主な著書に『メタ認知で〈学ぶ力〉を高める』『考える心のしくみ』(いずれも北大路書房)、『誤解の心理学』(ナカニシヤ出版)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

メタ認知とは、自らの認知を俯瞰して客観的に捉えること

「頭がいい」の意味を考えるうえで知っておきたいのが、「メタ認知」です。このメタ認知、みなさんも見聞きすることが増えている言葉だと思いますが、本質を理解するために、まず「認知」とはなにかを知りましょう。

認知とは、「頭を働かせること全般」を指す言葉です。「頭を働かせる」にあたる活動は多種多様であり、なにかを見る、人の話を聞いたり理解したりする、自分で話す、文章を読んだり書いたりする、なにかを覚える、覚えたことを思い出す、そうしてあれこれと考えるなど、あらゆるものが該当します。ですから、私たちは起きている時間のほとんどで、なんらかの認知活動を行なっていると言えます。

しかし、私たちの認知能力には限界があり、認知活動がいつも適切に行なわれるとは限りません。たとえば、記憶違いや考え違いをしてしまうこともあります。ですから、こうした認知の誤りを正す必要が出てくるのです。

そこで重要な働きを担っているものこそ、メタ認知です。メタ認知とは、自らの認知を俯瞰して客観的に捉えること。「自分の頭のなかにいるもうひとりの賢い自分」をイメージするとわかりやすいかもしれません。

その賢い自分が、「これはこうじゃない?」と教えてくれたり、「本当にそれでいいの?」「なにか思い違いをしていない?」と確認してくれる、あるいは「だったらこうしてみようよ」と提案してくれたりして、問い直しをしてくれるのです。そうして、認知をより適切な認知へと修正してくれます。

自らを俯瞰してとらえようとしているイメージ

メタ認知を働かせれば、認知の不手際やミスを大きく減らせる

つまり、このメタ認知をきちんと活用できれば、認知の誤りを減らせるのです。「賢い自分」の働きかけによって、自分の思考に敏感になって慎重に判断するのもそうですし、思い込みや先入観にとらわれなくなることもあるでしょう。あるいは、他者の視点に立って物事を見ることもできます。そうして、認知の不手際やミスを防げるのです。

逆に言うと、メタ認知をきちんと活用できなければ、本当はわかっていないのにわかったと勘違いしたり、覚えるべきことを覚え切れていないのに覚えたと思ったりします。あるいは、思い込みだとか直感、人の意見の受け売りなどで物事を判断するなどして、不手際やミスをしてしまうのです。

ここまで解説すれば、もうおわかりでしょう。メタ認知をきちんと活用できる人こそが、すなわち「頭がいい」人です。

理解力や思考力などの認知能力が高かったとしても、メタ認知を働かせられない場合には不手際やミスが増えてしまいます。一方、メタ認知を活用できる人は不手際やミスを大きく減らせますから、結果的に認知やその結果としての行動のパフォーマンスが上がり、「頭がいい」と思われる人になれるのです。

脳がよく働くイメージ

自分の特性を知り、それに応じた適切な対応策を用意する

では、メタ認知をきちんと働かせるにはどうすればいいでしょうか? 特に重要なこととして、まずは自分の「認知特性」を知ってほしいと思います。

認知の仕方には、人それぞれに得手不得手があります。たとえば、「私は飽きっぽい」「早とちりしやすい」というようなことです。そういった自分の特性を認識していれば、「勉強を長時間続けるのではなく、休憩を挟みながら短時間の勉強を繰り返そう」「慎重に考えたうえで結論を出そう」といった対応ができます。

また、「メタ認知的モニタリング」を意識するのも大切です。「モニタリング」という名のとおり、メタ認知的モニタリングとは自分の頭の状態に注意を向けて観察することであり、いつもそうしているうちに、自分の頭の働きがいいときと悪いときがわかってきます。

起き抜けの時間に勉強がはかどる人もいる一方で、逆に朝はボーッとして頭が働かない人もいるでしょう。あるいは、カフェなどちょっとした雑音がある場所で頭がよく働く人もいれば、集中できない人もいます。いずれにせよ、自分の頭がきちんと働く環境を知り、重要な勉強はその環境でするといった方略が有効です。

そして「固定的知能観」ではなく「増大的知能観」をもってほしいですね。固定的知能観とは「頭のよさは生まれつきのもので変わらない」という考え方で、増大的知能観とは「うまく努力すればどんどん賢くなれる」という考え方です。

すでにお伝えしたように、自分の認知特性を知ったりメタ認知的モニタリングを行なったりすることで、メタ認知をより適切に働かせられるようになります。そして、メタ認知を適切に働かせることが「頭がいい」ということを意味するのですから、増大的知能観こそが望ましい考え方です。「頑張ってもどうせ無駄だ」と諦めずに、増大的知能観をもって努力し続けてください。その結果、周囲から「頭がいい」と思われる人になれるでしょう。

三宮真智子先生の写真

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