「きちんと覚えようと思って繰り返し学習しているのに、すぐに忘れてしまう」
「勉強したことを長い間覚えておければいいのに」
こんなふうに、せっかく学んだことをすぐに忘れてしまって悩んでいませんか?
今回は、そんな悩みをもつ方に向けて、学んだことを長期の記憶にできる学習法をご紹介します。
【ライタープロフィール】
髙橋瞳
大学では機械工学を専攻。現在は特許関係の難関資格取得のために勉強中。タスク管理術を追求して勉強にあてられる時間を生み出し、毎日3時間以上勉強に取り組む。資格取得に必要な長い学習時間を確保するべく、積極的に仕事・勉強の効率化に努めている。
1. 長期記憶をかなえる2つのポイント
「仕事で忙しくしていたら、このあいだ勉強した内容を全部忘れてしまった」
誰にでもこんな経験がありますよね。しかし、それは完全に忘れているわけではなく、記憶の奥深くに勉強した内容が保たれているのかもしれないそうです。
カリフォルニア大学教授のロバート・アレン・ビョーク氏は、「記憶の強さには、保存強度(SS)と検索強度(RS)という2つの指標がある」と仮定しています。「保存強度とは、ある情報がどれだけよく覚えられているか。検索強度とは、その情報にどれだけアクセス可能か」とのこと。
たとえば、以前使っていた電話番号はすぐには思い出せませんよね。これは、情報(電話番号)の保存強度は高いものの、検索強度が低いから。つまり、記憶の奥深くに保たれているけれど、今は使わない情報であるために思い出せないのです。
しかしビョーク氏は、「この情報にもう一度触れた場合、それは記憶の奥深くにあると感じるだろうし、またすぐに覚える可能性がある」と説明しています。
(上記カッコ内引用元:UCLA Bjork Learning and Forgetting Lab:Applying Cognitive Psychology to Enhance Educational Practice より筆者が訳してまとめた)
以前使っていた電話番号を再び目にすれば、またすぐに覚えられるといったイメージです。
つまり、保存強度を高めておき、その情報に触れる機会を増やすことで検索強度も高めることができると考えられます。記憶の奥深くに情報を眠らせておけば、再びその情報に触れたときにすぐに思い出し覚え直せるというわけです。
また、同氏は記憶を長期のものにする方法として、以下の2つを挙げています。
- 学習条件を変化させること
- 間隔を空けて復習すること
(引用元:同上より筆者が訳してまとめた)
日々の勉強においてこの2つをかなえられるのがインターリーブ学習法です。さっそく実践とともにご紹介していきます。
2. 「インターリーブ学習法」とは
インターリーブ学習法とは、関連はあるが異なるジャンルの勉強を混ぜながら勉強していく方法です。たとえば英語の学習であれば、単語→文法→長文読解→単語→文法……、と問題を解いていくような手順です。1つのジャンルの勉強だけを進めるのではなく、ジャンルの変化をもたせながら勉強を展開していきます。
南フロリダ大学ではこの勉強方法での影響について実験をし、ひとつのジャンルの勉強を続けるよりも、複数ジャンルを混ぜたほうがテストのスコアが上がるという結果が出ています。
2007年、南フロリダ大学が行った実験では、10〜11歳の男女24人に対して、「面の数、辺の数、点の数、角度の数」の問題学習を行いました。
半数の12人には面の数、辺の数、点の数、角度の数と順番に解くブロック学習で、もう一方の12人には、問題の種類をランダムに混ぜたインターリーブ学習としたのです(双方、問題の数と休憩時間は同条件)。 翌日4種類すべて1問ずつ出題するテストを実施したところ、インターリーブ学習のグループの正解率は77%、ブロック学習のグループは38%と、ほぼ2倍の開きとなりました。
(引用元:BPS BUSINESS PLUS SUPORT|インターリーブ学習を取り入れる )
問題を順番に解くブロック学習よりも、問題をランダムに混ぜたインターリーブ学習のほうが優れた結果を残すとは興味深いですね。
さらに、インターリーブ学習法では間隔を空けて勉強することがポイントです。前述のビョーク氏の研究では「最適な学習スケジュールは、等間隔の練習ではな」いとされ、学習と学習の間隔が長いほど記憶が強化されるとのこと。(カッコ内引用元:UCLA Bjork Learning and Forgetting Lab:Applying Cognitive Psychology to Enhance Educational Practice より筆者が訳してまとめた)
こうしてインターリーブ学習法では、学習に変化をもたせながら間隔を空けて繰り返し学ぶことが可能となり、記憶を長期のものとすることができるのです。
3. 「インターリーブ学習法」で勉強してみた
筆者は特許関係の資格を目指して勉強をしています。しかし、勉強した内容をすぐに忘れてしまうことがよくあるので、インターリーブ学習法を試してみることにしました。
弁理士の資格試験では複数のジャンルから問題が出されます。そこで今回は、「特許法」「実用新案」「意匠法」「商標法」という4つのジャンルの練習問題を解いてみることに。それぞれのジャンルについての講義動画を見た後、4つのジャンルの練習問題をランダムに解いていきました。
さらに、時間を置いて勉強してみるために、1週間復習をしないでおくことに。1週間後、再びこのときと同じ問題を解いてみました。
4. 記憶に残り、理解が深まる
インターリーブ学習法で勉強した感想を2つお伝えします。
時間をおいての復習に手ごたえを感じた
1週間後に同じ問題を解いてみると、やはり答えを覚えていないものもありました。そこで再度解説を読み、内容を理解し覚えようと努めたところ……1回目に勉強したときよりも、スッと頭に入ってくる感覚があったのです。おそらく、1週間前に一度勉強した内容なので、2回目は眠っていた記憶に働きかけることができたのでしょう。これがビョーク氏の言う保存強度と検索強度を高めるということか、と実感しました。何度も記憶にアクセスしようとすれば、記憶は長期のものとなっていくのですね。手ごたえを感じた筆者は、これからさらに間隔を空けて勉強を続けていこうと前向きな気持ちになりました。
ジャンルごとの違いを深く理解できた
今回勉強したジャンルのうち「特許法」「実用新案法」「商標法」では、内容が似ているものの、少し異なる法律の勉強が必要です。内容が似ているので共通している規則もあるのですが、独自のルールがある部分については個別で覚えなければならないため、紛らわしく感じます。
たとえば特許法では「証人尋問の公開停止」ができるという規則がありますが、商標法と意匠法ではそれができません。特許法のみ勉強しているとそれに気づくのが難しいのですが、商標法や意匠法を並列して勉強することで違いが明確に見えてきました。インターリーブ学習法で勉強すれば、関連するジャンルの違いをきちんと理解できるメリットもあると感じました。
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複数のジャンルの勉強を混ぜて勉強するインターリーブ学習法。勉強した内容をすぐに忘れてしまう方は、ぜひ試して記憶を長期のものにしてください。
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