ビジネスパーソンとして最も価値が高いのは、周囲から “こう” 言われる人。後悔しないキャリア構築術

余人をもって代えがたい仕事をする、価値の高いビジネスパーソン

変化が激しい今後の時代には、ただ言われたことをこなして平均程度の成果を挙げたり、特定の会社や場所だけでうまく立ち振る舞ったりしていても、有効なキャリア戦略にはなりえません。ビジネスパーソンとして価値を最大限に高めるには、いったいどんな要素が必要なのでしょうか。

2023年10月に『メタ思考 「頭のいい人」の思考法を身につける』(大和書房)を上梓した、株式会社圓窓代表取締役の澤円さんに、後悔しないキャリア構築の方法を解説してもらいます。

構成/岩川悟、辻本圭介

【プロフィール】
澤円(さわ・まどか)
1969年、千葉県生まれ。株式会社圓窓代表取締役。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT 子会社を経て1997 年にマイクロソフト(現日本マイクロソフト)に入社。情報コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部長などを歴任し、2011 年にマイクロソフトテクノロジーセンターセンター長に就任。業務執行役員を経て、2020 年に退社。2006 年には、世界中のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にのみビル・ゲイツ氏が授与する「Chairman's Award」を受賞した。現在は、自身の法人の代表を務めながら、武蔵野大学専任教員、スタートアップ企業の顧問やNPO のメンター、またVoicy パーソナリティ、セミナー・講演活動を行うなど幅広く活躍中。2020 年3 月より、日立製作所の「Lumada Innovation Evangelist」としての活動も開始。著書に『マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術』(ダイヤモンド社)、『個人力 やりたいことにわがままになるニューノーマルの働き方』(プレジデント社)、『「疑う」からはじめる。これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(アスコム)『「やめる」という選択』(日経BP)、伊藤羊一氏との共著に『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)。監修に『Study Hack! 最速で「本当に使えるビジネススキル」を手に入れる』(KADOKAWA)などがある。

自分の仕事は自分で定義する

ビジネスパーソンのよくある悩みのひとつに、「仕事があまり楽しくない」「懸命に働いてもなかなか業績がよくならず、疲れてしまった」というものがあります。結果の出ない徒労感。たとえ取り組む案件が変わっても、結局は似たような課題解決を繰り返しているときに感じる虚しさに似た気持ち……。理由は人それぞれだと思いますが、そんな気持ちをもつビジネスパーソンは意外と多いのではないかと感じます。

僕がそんな人にお伝えしたいのは、なにをもって仕事を成し遂げたとみなすかは、「自分で定義する」ということです。そのうえで、自分が快感だと思える要素や基準を「仕事のプロセス」のなかにつくっておくこと。そんな自分だけの基準をあらかじめ探しておくのです。

多くのビジネスパーソンは、「数字が出た/出なかった」「マネージャーがほめてくれた/ほめてくれなかった」というように、どうしても他者の評価軸で仕事の成果をとらえがちです。もちろん、会社という仕組みに乗っかっているかぎりは、決められた業務内容を達成しなければ、仕事を成し遂げたという評価は得られないでしょう。

でも、基本的に業務内容は「達成」を求められるものであり、「プロセス」まで定義しているものは、少ないのではないでしょうか? 仕事の達成度をつかむためのチェックポイントは設定されているかもしれませんが、多くの場合、仕事のやり方や進め方自体は、個人がそれぞれ自由に考えることができるのではないかと思います。

やり方を工夫しながら仕事をするビジネスパーソン

仕事のなかに自分だけの快感を見つける

そうであるならば、仕事のプロセスのなかで楽しみを自分で見つけられるはず。プログラマーなら、自分の好きなコードの書き方があるでしょうし、営業職なら月末に自分の目標金額が100%を超えているのを確認することが快感の人もいると思います。事務職なら、わかりやすい書類の整理の仕方に楽しみを見いだすことだってできるはずですし、美しく整列した数字に快感を覚える経理の人は、僕の知り合いにもたくさんいます。

もし自分が快感を覚える要素がないのなら、早急に探す必要があるし、見つからないなら、そこはもうあなたがいてはいけない場所かもしれません。いわゆる、ライスワーク(お金のための仕事)として割りきれる人もいるかもしれませんが、自分の時間を切り売りする状態は最低限にしておかなければ、年齢を重ねてから過ぎ去った時間を振り返って後悔するかもしれません。

人が亡くなるときに後悔することリストの常連は、いつの時代も、「仕事よりもっと人生を楽しむことに時間を使えばよかった」であることは、よく知られていることです。

「余人をもって代えがたい」存在を目指す

この先の変化し続ける時代では、言われたことをこなして平均程度の成果を挙げたり、特定の会社や場所の枠組みのなかでうまく立ち振る舞ったりしていても、キャリアとして積み上がっていかない可能性があります。会社が危険な状態にあっても転職すら難しくなるのです。

また、転職を考えていないとしても、平均程度の能力の人がたくさんいる労働市場において、プラスアルファの特長がなくては差別化要因になりません。ほかの人と同じようなことをしているだけなら、年齢だけであっさり入れ替えられてしまいます。

ならば、どんなキャリア戦略が有効かというと、僕は「余人をもって代えがたい」存在を目指すことに尽きると考えています。「この人にはこんな特性がある」とまわりが認めるような、自分だけにしかない別の要素が必要なのです。

そんな特性があれば、たとえ優秀な人が現れても、常にオンリーワンな存在として差別化することができます。

「ビジネスパーソンはキャリア戦略を考えるべきである」ことを象徴的に示した「CAREER」の看板

「ぜひあなたにやってほしい」と言われているか?

注意したいのは、「余人をもって代えがたい」というのは、「その人がいないと仕事が回らない」状態ではないということです。もしかしたら、みなさんの身近に、自分の仕事や人脈をけっして人に教えないようなタイプの人がいるかもしれませんが、それは会社を危険にさらす行為と言えます。もし誰かが抜けたことで業務が滞る状態になっているなら、組織デザインが完全に間違っています。

仕事のプロセスが属人的になると、その人が病気になって休んだだけで会社が危険な状態になってしまう。会社というのは、特定の人がいなくても、業務が問題なく回る状態にデザインされていなければなりません。

余人をもって代えがたい存在になるためには、ほかの人でも回せる組織デザインのなかで、「それでもあなたがやるのが一番いい」と、周囲の人から認められるような状態をつくれるかどうかです。

プロセスを回すだけならほかの人にもできるけれど、「ぜひこれはあなたにやってほしい」と言われるのが、ビジネスパーソンとして最も価値が高い状態なのです

貴重な情報が勝手に集まってくる人の特徴

もうひとつ、仕事においては、コミュニケーションによって「相手をどれだけいい気分にさせられるか」が価値になります。これは必ずしも口がうまかったり、ひたすら懸命にしゃべったりする必要はありません。それよりも、相手をリスペクトする気持ちがあるかどうかが、僕は重要だと思います。そんな気持ちが伝わるからこそ、相手は「いい気分」になるからです。

トップセールスパーソンの多くは、必ずしも話し上手ばかりではありません。口下手でも売れるセールスパーソンが多いことからも、相手を尊重しながらコミュニケーションすることの大切さは明らかです。そうしたことが価値であり、ほかでは得られないオンリーワンの商材であるからです。

さらに、目の前の人を「いい気分」にさせることで起こるいいことがあります。それは、貴重な生の情報(一次情報)が勝手に集まってくるということ。普段から相手へのリスペクトが伝わるコミュニケーションをしていると、気になることを質問したとき、相手が進んで教えてくれるようになります。そうしたときの情報は、「親しい人にしか話さない」ような、生の情報であることが多いものです。

いまの時代はインターネットで検索すれば誰でも簡単に情報を得ることができますが、ほとんどが加工された二次情報のため、いくら頑張って情報収集しても差別化要因にはなりません。そんな時代だからこそ、生の情報が貴重なのです。

相手を「いい気分」にさせることは多くのビジネスパーソンがすぐに実践でき、仕事の生産性も上げることができる有効な方法になるはずです。

後悔しないキャリア構築法について解説してくれた澤円さん

※今コラムは、『メタ思考 「頭のいい人」の思考法を身につける』(大和書房)をアレンジしたものです。

【『メタ思考 「頭のいい人」の思考法を身につける』より ほかの記事はこちら】
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