新型コロナウイルスの影響で、仕事のデジタルシフトが急加速しました。オフィスで顔を合わせて気軽に会話する機会は減り、メールやチャットなどテキストでコミュニケーションする場面が増えたという人は多いのではないでしょうか。
相手の表情が見えず文字だけでやり取りしなければならない状況は、慣れていない人にとっては意外と大変なもの。対面のとき以上に無駄を省いて簡潔に伝えることが要求されますし、冷たい印象を与えないために言い回しを工夫する必要も出てきます。
そこで今回は、このテレワーク時代にも大いに役立つ「文章でのコミュニケーションのコツ」を6つご紹介しましょう。
【1】真っ先に「目的」を書く
アドバイスが欲しい、指示をもらいたい、承認してほしい――相手に望むのはどんなアクションなのか、すぐに理解してもらえる文章を目指しましょう。
たとえば、頭のなかに思いついたままに書き、最後に肝心の「目的」をもってくると、回りくどくなるため要注意。一般社団法人日本ビジネスメール協会代表理事の平野友朗氏は、最初に目的が書かれていると、読み手はその文章の趣旨を瞬時に理解できるため、最後までストレスなく読むことができると述べています。
【× 思いついたままに書く】
コロナウイルスの影響で支障が出ています。具体的には、部品Aが輸入困難になっています。これは工場での組み立て作業に大きく影響します。対策を練りたいため、テレビ会議できる時間帯を教えてください。
【○ 結論から切り出す】
部品Aの輸入に支障が出ている件について対策を練りたく、テレビ会議できる時間帯を教えてください。
読み手を迷路に迷い込ませないためにも、最初に結論を述べてしまいましょう。
【2】接続助詞「が」をなくして一文を短くする
できるだけ文章をコンパクトにするようにしましょう。特に注意してほしいのが「が」。平野氏によれば、逆説ではない場面で接続助詞「が」を使うと、文章がダラダラ続いてしまって「意味をつかみづらくなる」とのこと。こういった「が」は極力排除し、一文一義を心がけましょう。
【× 一文多義】
先週、商品開発会議がありまして、そのときのことを上司にも相談していたらゴールが見えてきたのですが、国内調達という方法ならどうでしょうか。
【○ 一文一義】
先週の商品開発会議の件を上司にも相談し、ゴールが見えてきました。国内調達という方法ならどうでしょうか。
だいぶすっきりしましたね。情報の盛り込みすぎにはご注意ください。
【3】ストレートに書きすぎない
平野氏によると、テキストコミュニケーションでは簡潔さが求められる反面、表現がストレートすぎると反発を招いてしまう恐れもあるのだとか。たしかに、表情やしぐさが見えないぶん、言葉の印象だけから、意図せずしてきつく伝わってしまう可能性も大いに考えられます。正しく伝えるのは当然として、どうすれば印象よく伝わるかまで気を配る必要があるのです。
【× 表現がとがっている】
「これはルールです」
「意味がわかりません」
「間に合いません」
【○ 表現が丸くなっている】
「これは決まりになっているため、恐縮ですがご対応をお願いします」
「私の理解不足で恐縮ですが、もう一度ご説明いただけますと幸いです」
「明日でもよろしければ、間に合わせることができます」
ネガティブなことをストレートに伝えると、相手はカチンと来てしまうことがあります。もっとポジティブな表現に言い換えられる部分がないか、探してみるのが大切ですよ。
【4】お礼は “具体的な内容” を一行入れる
ブックライターとして活躍し、『ビジネスにうまい文章はいらない 「書き方のマインド」を変える新・文章術55』などの著書ももつ上阪徹氏は、お礼をする際に「一行だけ具体的な内容を入れるだけでグッと変わる」と述べています。同僚にプレゼン資料をつくってもらったときを例に考えてみましょう。どこか味気ない文章が嬉しい文章に変わることがわかるかと思います。
【× 具体的なひとことなし】
プレゼン資料の作成ありがとうございました。
【○ 具体的なひとことあり】
プレゼン資料の作成ありがとうございました。特に3枚目のスライドがかなり感動しました!
たった一行を工夫するだけなので、簡単に実践できるでしょう。
【5】お詫びをする際、事情はあとから書く
何かを謝らなければいけないとき、何が起きたのかを最初に書くと言い訳的なニュアンスを含んでしまうと上阪氏は指摘します。そのため、「真摯に謝る」→「状況報告」→「善後策」の流れで書くといいのだそう。
【× まず状況説明】
出荷が立て込んでおり従業員も疲弊しておりました。チェックを怠らないようにきちんと伝えていたつもりでしたが、納品数を間違えてしまったことに関しては弊社に非があるため、深くお詫び申し上げます。今後は細心の注意を払うようにいたします。
【○ まず真摯に謝る】
このたびは納品数に間違いがあり、申し訳ございませんでした。出荷が立て込んでいるなかで不手際が発生してしまいました。今後は確認作業をより徹底するように周知いたします。
前者のように状況説明から入ると、たしかに言い訳をしているように聞こえてしまいますね。最初に潔くお詫びをするほうが、誠意を感じてもらえるはずです。
【6】催促する場合は相手の逃げ道を用意しておく
メールやチャットを送信したものの、時には相手から返信が来ないこともありますよね。前出の平野氏は、このようなときは相手を追い詰めずに “逃げ道” をつくっておくのが大切だと述べます。
【× 相手を追い詰める】
4月30日の11時30分にお送りしたメールはご確認いただけたでしょうか。
【○ 相手の逃げ道を用意する】
前回のメールは少しわかりにくかったかと思い、改めて連絡差し上げます。
前者だと、証拠を突きつけられているようで相手はイラっとするかもしれません。対して、後者は角が立ちません。相手の非に触れない言い回しを使ったほうが無難でしょう。
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伝わりやすく印象のよい文章を書ければ、自分も相手も日々の仕事をより気持ちよく進められるようになるでしょう。お伝えした方法をぜひ実践してみてください。
(参考)
平野友朗(2017),『仕事が速い人はどんなメールを書いているのか』, 文響社.
上阪徹(2018),『ビジネスにうまい文章はいらない 「書き方のマインド」を変える新・文章術55』, 大和書房.
上阪徹(2011),『文章は「書く前」に8割決まる』, サンマーク出版.
【ライタープロフィール】
SHOICHI
大学院修了後、一般企業に就職。現在は会社を辞め、執筆活動をしている。読書、音楽、YouTubeが好き。