仕事がとにかく忙しく、常に神経を張り詰める毎日。心身ともに疲れることばかりで、しかも疲れがどんどん増している気がする……。
このような悪いループにはまってしまうのは、疲れを日々リセットできていないから。きちんと疲れをとらなければ、翌日以後のパフォーマンスはさらに落ちてしまうものです。
そこで今回は、医師ほか医学の専門家たちが推奨する「疲労回復のための夜習慣」を3つご紹介しましょう。たった数分でできるものばかりなので、忙しい人にもおすすめですよ。
【1】体力的な疲れを3分で解消「ストレッチ」
一日の仕事を終えたあとには、多くの人が、体のだるさや肩こりといった肉体的な疲労を感じているでしょう。そして、「家に帰ってゆっくりしよう」「早く寝よう」と考えるはず。しかしそれだけでは、体の疲れは充分にとれないかもしれません。
体の疲れが生じる一因として、「乳酸」という物質が筋肉内に蓄積することが挙げられます。厚生労働省の情報サイト『e-ヘルスネット』によると、乳酸とは、筋肉を収縮させるエネルギーを得るために、筋肉内の糖(グリコーゲン)が分解されてできる物質。乳酸の蓄積によって体内のpHバランスが酸性に傾くことが、疲労感をもたらすのだそうです。
そうした肉体的な疲れをとるには、乳酸を除去することが大切。そこで医学博士の山本利春氏がすすめるのは、疲れたときこそ、あえて体を軽く動かすこと。
軽い運動を行なうと、筋肉がポンプのように伸び縮みして血行がよくなるので、乳酸を除去しやすくなるそうです。運動の強度が低ければ、新たな乳酸の発生も少ないので、じっとしているより疲れがとれやすいと言います。
山本氏は、軽い運動のひとつとして「ストレッチ」をすすめています。たとえば、以下に示す「ふくらはぎのストレッチ」「腰のストレッチ」をたった3分やるだけでも効果的だそうですよ。
【ふくらはぎのストレッチ】
- 床に座って右足の裏にタオルをかける
- タオルの両端を手で持ち、右足を伸ばす
- 気持ちがいいと感じるところで止めて、ゆっくりと10回呼吸
- 左足も同じように行なう
【腰のストレッチ】
- 椅子に浅めに座って背筋を伸ばす
- 両足は固定したまま、後ろを向くように体をひねり、わき腹・腰の筋肉を伸ばす
- 左右5回ずつ行なう
歩き回ることが多い営業職の人や立ち仕事の人は、「ふくらはぎのストレッチ」がいいかもしれませんね。デスクワークが多い人には「腰のストレッチ」がよさそうです。
山本氏は、お風呂上がりの筋肉が緩んでいるときにストレッチをすると効果的だと言います。疲れを翌日までもち越さないように、ぜひ習慣にしてみてはいかがでしょうか。
【2】脳の疲れを1分で解消「口すぼめ呼吸」
仕事に集中できない、会議で考えがまとまらない……そんな状態は、もしかすると脳の疲れに原因があるのかもしれません。
順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏によると、疲れには、自律神経の乱れが関係しているそうです。
自律神経は、交感神経と副交感神経からなります。朝から日中には交感神経が優位に働いて、体を緊張モードに。夕方から夜には副交感神経が優位に働いて、体をリラックスモードに――というように、交替でバランスよく活動することが理想の状態だそうです。
そんな自律神経が、疲れによるストレスの影響で乱れる(つまり、副交感神経の働きが落ちて、交感神経が優位になってしまう)と、脳に充分な血液が行き渡らなくなるとのこと。すると、集中力や判断力が低下し、脳が本来の機能を発揮できない状態に……。その結果、「ミスをする→さらにストレスがたまる→もっと疲れる」という悪循環が起きかねないと、小林氏は述べています。
そこで毎晩行ないたいのが、自律神経を整えて “疲れの悪循環” を防ぐ習慣。具体的には、「6秒吐いて、3秒吸う」という深呼吸をたった1分行なうことを、小林氏はすすめています。横隔膜の動きが大きくなることで、副交感神経が優位となり、疲れが軽くなるのだそうですよ。
ちなみに、理学療法士の佐野裕子氏は、息を充分に吐ける方法として、以下の手順で行なう「口すぼめ呼吸」を提案しています。
- 口をすぼめて、息を細く長く吐く
- 息を吐ききったら、鼻から息を吸う
佐野氏によれば、無理に腹式呼吸をしようとしたり、口をすぼめる際に頬や首に力を入れたりしないのがポイントだそう。体に力が入ると交感神経が優位になってしまうためです。
夜、寝る前にゆっくりと呼吸をして、脳の疲れをリセットする習慣をつけましょう。
【3】精神的な疲れを5分で解消「3行日記」
「先輩がミスを押しつけてきたせいで自分の仕事が増えてモヤモヤ」「取引先との商談がうまくいかなくてイライラ」など、仕事による精神的な疲れを感じている人はきっと多いはず。
前出の小林氏は、イライラやモヤモヤといった負の感情は、交感神経を優位にさせてしまうと言います。交感神経の働きが強くなって自律神経のバランスが崩れると、疲れがたまる……というのは、前述したとおり。つまり、疲れをためないようにするには、負の感情を上手に手放して、自律神経を乱さないことが大切なのです。
負の感情を整理する方法として、小林氏は夜に「3行日記」を書く習慣をすすめています。次の3点について、1行ずつ書くというものです。所要時間は5分もあれば充分。
- 今日、一番嫌だったこと
例)急に仕事を振られて、残業しなければならなかった - 今日、一番嬉しかったこと
例)同僚が仕事を手伝ってくれた - 明日の目標
例)効率的にすばやく仕事を片づけて定時退社する
小林氏いわく、一番嫌だったことを最初に書くのは、自分のストレスの原因を知るため。何にストレスを感じているかを書き出すことが、ストレス発散につながると言います。
次に一番嬉しかったことを書いて、気持ちの切り替えを。さらに、翌日の目標まで書けば、その日あった嫌なことにとらわれず前向きに一日を終えられるのだそうです。
たったこれだけの内容であれば、忙しい日でも手軽に書けそうですね。仕事で心がすり減る、嫌なことをグルグルと反すうして眠れないという人は、試してみてはいかがでしょうか。
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今回ご紹介した疲労回復法は、どれもたった5分以内で簡単にできます。疲れをリセットして明日も頑張れるよう、一日の終わりに少しだけ時間をつくって実践してみてくださいね。
(参考)
大正製薬商品情報サイト|筋疲労は乳酸が原因?正しく知っておきたい乳酸と疲労の関係性
e-ヘルスネット|乳酸
NIKKEI STYLE|「疲れたら休養」はNG 軽い運動で血行促進
FYTTE|疲れたときこそアクティブに! 運動後の疲労回復を早める裏ワザまとめ
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【ライタープロフィール】
藤真 唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいてわかりやすく伝えることを得意とする。